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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第十話

 軍人たちの銃撃を背に、俺たちは走り出す。速度重視でジダオに騎乗した状態でだ。


 ジダオは身体強化も相まって以前よりもさらに加速していた。軍人の弾丸を追い越し、風どころか雷のごとく走り出す。

 バッタの大群との距離は瞬く間に縮まり、刹那のうちにそこまでたどり着いた。


 俺が奴らを蹴散らすべく爆炎を放ったとき、何かが俺たちの横を通り過ぎる。ジダオほどの速度ではないが、弾丸のような速度で飛来したそれは軍人の乗っているトラックにぶち当たった。


 すさまじい轟音を立ててトラックに激突したそれは、強力な装甲をへこませる。


「まずい! 飛行種だ! 変異種は人型だけじゃなかった! ジダオ、トラックに戻れ! 飛行種は一体じゃないはずだ!」


 くそ、楽観視していないつもりだったが、敵の情報を落としていた。


 だがどういうことだ? あの飛行種、明らかに軍人から聞いた話と違う。飛行種は、農家の人が通常種と間違えて捕獲する程度の奴だったはずだ。


 通常種よりも多少体力が多くて動きが速くて群れを率いるすべを持っている程度じゃなかったのか。

 あれじゃあ軍人が危険だ。このまま攻撃され続ければ、装甲を破られかねない。


 ジダオは一瞬でトラックまで引き返し、初撃を放った飛行種を食い殺す。だがその間にさらに五体の飛行種がトラックに突撃した。一点に集中された突撃はすぐにでも装甲を破壊するだろう。


 軍人もさすがに訓練されている。最初の突撃の時点で強化ガラスの窓を閉じ切り、防御態勢をとっている。あれが車内に入れば軍人は壊滅させられるだろう。


「今すぐ車内の暖房をつけろ! 気温操作で奴らの運動能力を低下させる! トラックを動かすな、こっちの動きが乱れる」


 ジダオが軍人に指示を出している。あっちは任せても大丈夫そうだが、こっちが厳しくなったな。まあ、人のまねごとしてる害虫ごときに後れを取るつもりはないが。


 軍人からの支援射撃なし、ジダオの索敵能力とバックアップなしか。


 俺はバッタの大群に向けてさらに爆炎を放つ。エネルギーを圧縮せずに大火力を出し、かつ力は俺とつながったままだ。爆炎の効果範囲を広げ、さらに出力を増加させる。


 バッタの大群と戦うときの基本戦術。範囲大火力で全体の数を激減させる。視界を確保し、あとから煩わしくまとわりつかれるのを防いだ。


「出てこい人型! てめえらをぶち殺してさっさと蝗害を終わらせる! 蝗魔王とかいうカスもついでに連れてこい!」


「これはこれは、ガラの悪い人だ。その程度の力で調子に乗り、あまつさえ蝗魔王様にまでケンカを売るとは。愚物極まりない」


 俺の声に反応して出てきたの、は以前に遭遇した人型種よりもはるかに人間に近い者だった。


 四本の腕はバッタのように細い物ではなく、人間のような力強さを見せている。当然足も太く、脚力もとてつもない物だろう。人間の格闘を扱うのに適した体の構造だ。


 肉体も群生層のバッタのようにスカスカではなく、内部に筋肉の塊を詰めているのがよくわかる。


 そして何より、頭部が全く違っていた。人間に限りなく近い。相手が余裕を持っているのが表情を見てわかるほどに人間に近い。これは、知能は前回の人型の比ではないだろう。言葉もはっきりしている。


「ハッ! 害虫が難しい言葉使ってんじゃねえよ! お前一匹でいいのか!? あと二匹いるんだろ! 俺は三匹同時でも構いはしねえぜ!」


「あなたの力は我々にとって脅威ですからね、そこは素直に、お言葉に甘えさせてもらいますよ」


 奴の後ろからもう二体、同一の姿をした人型種が現れた。


 あんなこと言ったが、正直この戦いどうなるかはわからない。こいつらは明らかに前回の奴とは格が違う。というか、あいつが格下過ぎたんだ。

 ただ、どうやらあいつら相手にも俺の爆炎や爆発は通用すると考えてよさそうだ。


「先制攻撃はいただくぜ! 火炎岩石砲、連弾!」


 岩石砲に炎を纏わせさらに高速回転させる。以前に想定していた、小さい体積に大量のエネルギーを詰め込んで大出力を出す。


 俺が立てた仮説の一つに、強力な熱を纏わせた弾丸は通常よりも簡単に奴らの身体強化を貫けるのでは、というものがある。


 ちなみに技名を叫んだのは、ジダオとの連携のためにそういうことをしようと決めたのだ。技のタイミングと何を使うのかをすべて把握しきれば、連携のやりやすさは格段に上がる。


 奴らは俺の火炎岩石砲をすべて躱した。体を器用に縦に横にと動かして、俺が弾を撃つ場所を誘導してくる。


 一匹を狙えばどちらかが割込み、二匹同時にやろうと撃ち込めばいつの間にか後方の奴がいなくなっており、前方の一匹は傾いた弾を簡単に躱す。


 ふむ、ジダオの言った通り距離をとってはくれないようだな。ジダオから話を聞いて発射レートを向上させたつもりなんだが、やはり前回の奴とは格が違う。上手いこと連携して距離を詰めてきた。


 もっと発射レートを上げないとな。最低でもサブマシンガンくらいの発射レートが必要だ。


 俺に接近してきた三匹は速攻で近接戦闘を仕掛けてくきた。やはり三匹の連携はうまく、最低でも二匹が重なり合って姿を隠してくる。


 個々の格闘術もかなりの腕だ。人間より二本も腕が多いこともあって、奴らの攻撃は手数が多すぎる。数的有利も相まって、姿勢を崩すような大ぶりの攻撃もお構いなしに叩き込んできた。


 しかしこいつら、俺の背後に回り込もうとはしてこないな。人間の死角は背後と頭上の二か所。数的有利が取れているなら、死角を突いた方が遥かに有利のはずだ。


 背後に回ってくれたら、背筋を用いた必殺の蹴りが出せるのになぁ。


 人間は前面よりも背面の方が筋肉量が4倍も多い。軍の人が教えてくれた。格闘術の中には、背面で相手を攻撃することを前提にしたものがあるらしい。


 俺にそれを習得する時間はなかったが、理論は教わった。人型の利点を最大まで引き出すために、体術センスを与えられている俺には、それだけで十分だった。

 それなのに、こいつらは俺の思うようには動いてくれない。


「キハハ! 大口たたいてた割には防戦一方じゃないですか! さっきまでの威勢は何処に行ったんですか!?」


「うっせぇ! てめえらだって攻めきれてねえだろぉが!」


 とはいっても、どうやって攻めに転じる? 対人戦は向こうのほうが格上だ。

 今は奴らの連撃を防ぎきれているが、正直ジダオの方を確認する余裕もない。

 一旦仕切りなおすか。


「爆炎!」


 流石の奴らもこれには退くしかない。致命打にはなりえないが、これを食らい続ければ奴らも無傷では済まない。距離をとってくれるは………。


 は!? こいつら無理やり突っ切ってきやがった!


 今まで重なり合うように攻撃してきた奴らは、三匹での一斉攻撃に出てきた。

 上中下段。正中線のすべてを的確に突いてくる。さらに脛や肩口などの急所も狙ってきた。


「クッ! 鎧!」


 予想外の攻撃にとっさに鎧を生成する。だがこれが良い方向に転んだ。頭部まで覆う全身鎧は奴らの連携攻撃をすべて防ぐ。


 急所を狙った腕のすべてが、俺の鎧に防がれ止まっている。奴らはこの戦いで初めて驚愕の表情を見せた。


 大きな隙を見せた奴らの腕を、俺は瞬時に拘束する。奴らは俺を確実に殺すために三匹同時に攻撃してきた。それはつまり、今まで煩わしく重なり合っていた三匹を同時に攻撃することができるということだ。

 

「死ねぃ! 害虫ども! 炎獄拳!」


 貫通力を重視した拳術。身体能力を最大限強化し全身を使って拳を放つ。拘束されている三匹は大きく体を反らして避けようとするが、その程度の動きで避けられるほど俺の拳は甘くない。


 炎を纏った拳は、たやすく奴らの外骨格を破壊し頭部を貫く。俺の仮説は当たっていたようだ。ただ俺の力が通用すればいいという楽観視だったが。


 楽観視は当たっていれば良い方向に転ぶが、外れていれば災厄の事態を呼び込んでしまうと、今回のことで気づいた。


 即座に三匹ともぶち殺してジダオの方を確認する。あいつらは無事だろうか。


「おーい、ジダオ! こっちは片付いたぞ! そっちはどう、だ……?」


 なん、だ、あれ……? トラックが大量のバッタに取りつかれている。ジダオはどこに?


「オイオイ、力もまともに使えねえ若造が今回の化生サマか? にしても、んな雑魚に負けたのかあいつら。はぁ、上手く作ったつもりだったが失敗だったか。ま、素の力とセンスだけであいつらを倒しちまった奴なら、少しは楽しめるか。掛かって来いよ化生サマ? お前がやらなきゃ人類は終わりだぜ?」


 クソ長い話をしてケンカを売ってきたそいつは、王者の風格をまき散らしこちらを威圧していた。


「もう大将様のお出ましか。さっさとてめえを片付けて殲滅を開始する」

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