正直、愛故に元恋人にドン引きされる女の子ってどう思いますか?
……なにさ。
堪えてるよ。
堪えないわけないじゃん。
ずーっと好きだったし、今だって好き。そして、これから先も。自信を持って言える。私は、麻世乃のことが大好きだって。
幼稚園の頃から、一緒だった。
小学生の時も、中学生の時も。クラスこそ何度か違うことはあったけど、それでも放課後は二人で遊んでた。
お互いがお互いを必要としていた。
そのうち二人とも思春期に突入して、意識し始めて、そして付き合った。
幸せだった。
……ううん。「だった」なんて……過去のことになんてさせない。
「……麻世乃!? …………もしもし麻世乃、どうしたの!?」
『……今、家にいる?』
「いるいる! ……ねぇ、二人でもう一度、話し合わない?」
『……ごめん。そっちに置きっぱなしだった着替えとか、取りに行きたいだけだから』
「え……?」
◆
「ね、ねぇやめてよ。それ全部持って行っちゃったら、ほんとに……ほんとに私達、終わりになっちゃうからさぁ……」
「……終わりになんて、ならないよ」
「麻世乃……!」
「だってわたし達、ただの友達に戻るだけだから」
「あっ…………」
違う、違う。
私が聞きたいのは、そんな言葉じゃない。
「……彼女の寛容さには驚かされるね」
「……鬼原!」
私は、普段なら到底ありえない速度で彼女を壁に押し付けていた。
「あんたが……あんたがそそのかしたの!?」
「誤解だよ。僕は彼女に頼まれたんだ。ただの付き添いさ。フラれた腹いせに、君に『変なこと』をされないようについてきてほしいってね」
「そ、そんな……」
……腹いせ。
もはや麻世乃の中で、私の信用は底辺に落ちてしまった。私は、私はただ好きなのに。好きなだけなのに……。
「……詩杏。ここに置いていってたわたしの歯ブラシは?」
「えっ……」
「捨てたの?」
「いや、捨てちゃいないけど……あっ! ま、待って麻世乃っ!」
彼女が駆け込んだ先。洗面所の棚を漁る彼女。
「あ、いや、その、それは……」
私のアメニティグッズの中に紛れていたそれを手に取った彼女に、私はどう言い訳しようか必死に思考を巡らせた。
「……最低」
「あっ………………」
終わった。終わっちゃった。
ピンク……もといマゼンタカラーのそれをゴミ箱に捨てて去っていく彼女を、私は追うことができなかった。
「うっ…………うううううぅ…………」
止められないし、止まらない。
溢れるばかりで。
「好きな人に不快な思いをさせるなんて……本当に、君って最低だね」
「……うるさい」
「君の行動を擁護することはできない。それだけのことをしていたのだから。……でも、君がよければ……」
この悲しみを、絶望を、断ち切ってくれるもの。
「うぁぁぁぁぁぁ、鬼原ぁぁぁ……っ」
とにかく、私は何かにすがりたかった。




