正直、なんの未練もなくイチャイチャっぷりを見せつけてくる片想いの相手ってどう思いますか?
閲覧ありがとうございます。
「……詩杏、お願いがあるの」
各々で作ってきたお弁当を食べていた、お昼時のことだった。
私の恋人、桃井麻世乃がそう切り出した。
「何? 私、麻世乃のためならなんだってするよ」
「…………別れて欲しいの。わたしと」
「……え?」
……いや、確かになんでもするとは言ったよ?
でもそれは、恋人としてって意味で、決してそういう方向で言ったわけじゃ。
「……な、なんで?」
「……気持ち……悪くて。…………これからは……さ、友達ってことで」
「いやいやいや意味分かんな……」
◆
一時間ごねたけど、駄目だった。
最愛の人にフラれて二ヶ月が経った、ある日のこと。私は、女子トイレの隅で一人の同級生に詰め寄っていた。名前は知ってる。隣のクラスの鬼原悠実だ。女で一人称が「僕」だから、一度声を聞けば友人でなくとも印象に残る。……まあ、あんまり性別で一人称を決めつけるのってよくないとは思うけど。
「……あんた、麻世乃の何なの?」
「……運命の相手。そういえば、分かるかな?」
「なぁぁぁぁっ!?」
ありえない。まさかそんな。
いや二ヶ月だよ!? 女ってそんなに割り切るの早かったっけ!? 私も同じ女なのに未だにフラれたの引きずってるんだけど!?
「……泣いていたから、慰めてあげたんだ。儚くて、そして艶やかなその姿に、僕は確信したよ。ああ、僕はこの人と結ばれるんだって、ピンと来たんだ」
「麻世乃、そんなにコロッと……」
「相当傷ついていたみたいだよ? なにせ恋人になるほど信頼していた君に裏切られたんだから」
「私は裏切ってなんかいない! この愛は、本物だし!」
「……本当に心当たりが無いのかい?」
「うっ……」
「見られてしまったんだよね。……麻世乃さんの水筒に唾を入れていたのを」
「あ、あれはっ! 麻世乃にっ! 私を感じて欲しくてっ!」
「彼女はそういうの、受け付けないみたいだけど?」
「そ、それは……」
「君は自分勝手で自己満足な愛を注ぎ、彼女を泣かせた。それは揺るぎようのない、事実だ。……安心してよ。僕が、麻世乃さんを幸せにする。必ず」
「そんなの、私は絶対に認めな……!」
「……なに、やってるの。二人とも」
「麻世乃……」
「麻世乃さん……。……あーいや、君の『元』彼女に伝えていたんだよ。君にふさわしいのは僕だって」
あからさまに「元」って……。そんな強調しなくても……。
「そうだったんだ……。嬉しい。ありがとう、悠実」
あっ……。
そんな簡単に、乗り換えられるの……?
元カノの前で、そんな堂々と……今カノの腕に抱きつけるの……?
「うっそー……」




