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統也は浜崎達と共に裏口から隊舎に突入。早速、死者達の出迎えだ。
「ガァアァアァアァ!!」
「アァアァアァアァ!!」
仲間達とこんな形で再会を果たさなければならない事に、浜崎と吉沢は忍苦を隠せない。
フラフラ……ヨロヨロ……と2足歩行はたどたどしくも、死者となった者達は、生きた獲物を見つけるなり無心に手を伸ばす。
浜崎が発砲すると同時、統也と吉沢は二手に分かれる。
浜崎が2人の間に立って援護している間に、統也は田島を見つけなくてはならない。
(緒方サンは田島を医務室の隣の部屋に移動させたと言っていた!
それなら、この備品庫だろう!)
備品庫のドアは開け放たれた儘だ。
統也は全力疾走で滑り込み、ライフルを構える。
「田島!!」
フロントサイトを室内の中央に合わせれば、その的の中心には男の背が見える。
統也は息を飲み、銃口を下げる。
「緒方、サン……」
広く大きな背中に蟹股足。何処か愛嬌のある その体格を見間違う事は無い。
緒方はのっそり……と振り返る。
(そっか……)
「緒方サン、逃げ切れなかったんですね……
アナタの事だから、要領よく隠れられたんじゃないかって、期待してたのに……」
緒方の腹は素手で穿られた穴が開き、臓器がだらしなく垂れ下がっている。
全身血まみれだ。生存者を食い散らかした残飯が、口の端に付いている。
そんな姿でノソノソと統也に歩み寄る。
「ごめん、緒方サン……俺、また間に合わなかった……
でも、酷いじゃないですか……田島を殺しに来る何て……食べる何て……
俺の……友達を!!」
銃口を上げ、緒方の額を撃ち抜く。
ズダダダダン!!
緒方の頭は銃弾に吹っ飛び、仰向けになってグシャリと倒れる。
「田島!!」
統也はストレッチャーに駆け寄り、横たわる田島の肩を掴む。
「田島っ?」
点滴も心電図も取り払われてはいるが、僅かに浅く、呼吸が繰り返されている。
(生きてる!!)
「良か、った……間に合った……田島……バカヤロ、心配させやがってっ、」
膝をつき、安堵に涙が溢れ出す。
だが、感動の再会を果すにはまだ早い。統也は鼻を啜り、立ち上がる。
「田島、ここで待ってろ。全部片付けたら、もう1度迎えに来るから」
統也は備品庫を出るとドアを閉め、応戦中の浜崎に合流する。
「田島君は!?」
「無事です!」
「良し! 吉沢も車庫の鍵を手に入れた! これより生存者確認を行う! 食堂へ向かうぞ!」
「はい!」
隊舎内に響き渡る無数の銃声。
これだけの騒ぎを起こせば、屋内に隠れている生存者も気づくだろう。
食堂の扉は開け放たれた儘、中には破壊されたバリケードが横倒しになっている。
襲い来る死者達は、ここで餌食となった避難者だ。
見知った顔がボロ切れの様な体で飽く事無く襲いかかる。
(皆……皆、ごめん!!)
3人はトリガーを引き続ける。
死者の頭を撃ち抜くのは簡単な事だが、1発を弾き出す指先が重くて堪らない。
「水原君、後ろ!!」
「!!」
背後に迫る死者の追撃。
統也は銃身を握り、振り向き様に死者の頭部を殴りつける。
ガツン!!
「ハァハァハァハァッ……」
(母サン……)
『彼等はまだ死んでいないわ』
(分かってる……全部、分かってる……)
ギリギリと奥歯を噛み締め、再びトリガーを引く。
「全部 解かって殺ってるんだよ、俺は!!」
(罪は、重なるばかりだ。
でも、殺らなきゃ殺られる。殺られたら大事な人達を守れない。
でも、殺したくない。誰も、誰も、誰も。でも、守れなくなるくらいなら……)
「殺す!!」
室内に立ち込める硝煙。飛び散る薬莢。そんな感覚には既に慣れ親しんだ。
右も左も、上も下も分からない。
ただ、腹を空かせてやって来る死者達を体が勝手に撃ち負かす。
(守る為なら、発狂者にだって俺はなる!!)
暫く後に、銃声は静まる。
躯に還った遺体を数えれば、ここに残った人数が きっちり揃う。
誰一人、逃げられなかった現実を突きつけられる。
竜巻が過ぎ去った後の様な無残さに、3人の虚脱感は言い知れない。




