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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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117/140

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 統也は目を細める。



「松尾将補がいない」



 【例外】である松尾の姿を、未だ確認していない。

この騒ぎでも出て来ないとなると、既にこの場を離れたのか、雖も、断定するには性急だ。

【例外】である以上、知能の程を軽視する事は出来ない。

吉沢はゴクリと喉を鳴らすと、上に続く階段を見やる。


「屋上ともに、2階・3階の確認が手つかずです」

「ああ。だが、残弾も僅かだ。万一に備え、武器庫で装備を整えよう」


 松尾の存在が、今後どれ程の脅威になるか知れない以上、見逃しておく事は出来ない。

速足で武器庫へ向かえば、ドアは開放された儘だ。

室内の雑然とした様子に待機していた隊員達の慌てた様子が想像できる。


「俺が部屋の外を警戒している。装填は2人に任せたぞ」


 浜崎の指示通り、統也と吉沢は手早く銃弾を漁る。

弾帯を肩にかけ、箱に詰まった弾と弾倉をポケットに捻じ込み、吉沢は統也にハンドガンを差し出す。


「アサルトライフル一丁じゃ不安でしょう? このハンドガンは9発撃てるわ。

フルオートだから引き金を引いている間は弾が出続ける。上手く使って。

それから、サブマシンガン。使い方は、説明しなくても分かりそうね?」

「はい、多分」


 映画に出て来るアクショクンヒーローさながらの装備。

ここまで揃えると結構な重量だ。


「浜崎サンも、マシンガンを………」


 吉沢は浜崎を振り返ると同時、息を飲む。

そして、吉沢の顔が見る間に青くなるから、統也は慌てて踵を返す。



 ――ゴキ……

 ――ドサ……



 浜崎の体はズルズル……と壁を滑り、床に伏せる。



「浜、崎、サン……?」



 浜崎の代わりに立っているのは、大男。吉沢の声が震える。



「松尾、将補……」


「ガァアァアァアァアァアァ……」



 【例外】の登場だ。

2人が身構える間も無く松尾は室内に侵入し、大きな手を振り上げる。


(早い!!)



 ガシャン!!



「ッッ!!」


 2人は背を屈め、寸での所で松尾の平手打ちを回避。

松尾の手は棚に命中。銃器の類はヘシ曲がり、室内に激しく飛び散る。


「吉沢サン! 一旦引きましょう!」

「了解!! ロビーまで一気に走るわよ!!」


 小狭い武器庫で銃器を使っては、流れ弾で仲間を傷つけかねない。

まるで空気中を泳ぐ様に両手を振り回す松尾の追撃を、2人は床を転がってかわす。

武器庫を飛び出す先に倒れる浜崎の瞼は ピクリピクリと細かく動いている。

上半身と下半身が奇妙な角度に曲がっているが、息はある。

統也は武器庫のドアを体当たりで閉ざすと、開かないように背中で押さえる。


「吉沢サン! 今の内に浜崎サンを!!」

「解かった!」


 吉沢が抱え起こそうとすると、浜崎は僅かに首を横に振る。


「だ、駄目、だ……よ、し、ざわ……水原君と、逃げ……ろ……」

「そんな事できません! 浜崎サン、確りしてください!」

「吉沢サン、早く!! ドアが破られる!!」

「私が背負いますからっ、」

「……頼む、吉、沢……」

「し、然し……」


 ドアに向かって松尾がタックルを繰り返している。

何れは統也ごと吹き飛ばす勢いだ。



「早く、行け……吉、沢……お前が、守る、ん、だ……」


「!!」



 浜崎の虫の息に吉沢は立ち上がり、統也の腕を取る。


「水原君っ、行くわよ!!」

「なっ、」

「来なさい!!」


 吉沢は強引に統也の腕を引き、駆け出す。


「浜崎サ……浜崎サン!!」


 ロビーへ一直線。

走る1歩に合わせ、浜崎の姿が小さくなっていく。



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