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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話7-5 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話


「【魔力吸収効果】って、魔力を吸収するってことだよね?」

「ええ、そうだと思うわ」


 クロネの言葉に私は頷く。

 言葉通りの意味であれば、まさにその通りである。

 【魔力を吸収する効果】、それ以外に言いようがない。

 しかし、どうしてグレインお兄様がこれを送ってきたのかは理解できない。

 ただ綺麗だから、私たちに贈りたいとかそういうことではないと思う。


「私たちの魔力を吸収? そんなことをして、何に……」

「私たちの力がなくなるだけよね? そんなことをしても意味がない、どころか逆に悪い事になると思うんだけど……クロネ、一つ渡して」

「はい」


 ハクアからネックレスを一つ渡して貰う。

 それを私は光へ翳してみた。

 キラリと魔石が光るが、特に変化は感じない。

 綺麗ではあるが、ただそれだけのように感じる。


「何の変化もないわね。魔力が吸収されている印象もないし……」

「じゃあ、ただの飾りなのかな?」

「そうは思えないけど……」


 クロネの言葉に私は考え込む。

 やはりお兄様の意図が分からない。

 しかし、実際に効果が体感できないのであれば、クロネの言う通りただの飾りなのか……


「あの……」

「なに、シルフィア?」


 悩む私にシルフィアが声をかけてくる。

 一体、どうしたのだろうか?


「それはもしかすると、お嬢様たちの身を守るためのものではないかと思います」

「「私たちの身を守る?」」


 シルフィアの言葉に私たちは聞き返してしまった。

 言っている意味が分からなかった。

 お兄様からの贈り物の意図としては合っているのかもしれないが、このネックレスがそんな大層なものに思えないのだけど……

 訝しむ私たちにシルフィアがさらに説明をする。


「【魔力吸収効果】──おそらく、それがお嬢様たちを守る力だと思われます」

「そんな効果があるように見えないんだけど?」

「少し貸してください」


 シルフィアにネックレスを渡す。

 すると、彼女は左手でネックレスを掲げ、右手を宝石に向けた。

 そして……


「【ウィンドカッター】」

「「えっ!?」」


 シルフィアの突然の行動に私たちは驚きの声を漏らした。

 いきなりシルフィアは魔石に向かって魔法を放ったのだ。

 仕えるべき主の私物に向かって攻撃を加えた、これについては別に構わない。

 だが、あんな近い距離で魔法を放つなんて、命知らずにもほどがある。

 シルフィアが【風魔法】を得意としていることは知っているが、だからといって見ていてかなり危ない。

 だからこそ、驚いたのだが……


(シュウウウウウウッ)

「やはり……」

「「えっ!?」」


 目の前で起きた出来事に私とクロネはさらに驚愕の表情を浮かべることになった。

 なぜなら、シルフィアの放った【風魔法】は彼女の手も魔石も傷つけることなく、消えてしまったのだ。

 魔法が消える、そんな現象を二人は見たことがない。

 彼女たちの父親たちが魔法を無理矢理かき消すことができるとは聞いたことがあるが、それは彼らの攻撃が魔法を破壊し、魔力を霧散させているということは知っていた。

 目の前で起きた現象はそんな理由で消えたようには見えなかった。

 しかし、シルフィアは何かに気づいたようだ。


「これが【魔力吸収効果】です」

「「それが?」」


 シルフィアの言葉に私たちは反応した。

 さっきの魔法が消えたのが、【魔力吸収効果】なのか?


「私はこの魔石を破壊するつもりで魔法を放ちました。もちろん、自分の手すらも範囲に入れるように……」

「危ないじゃないっ! 自分の体は大事にしてよ」


 あっさりと言うシルフィアに私は怒鳴ってしまう。

 彼女は私たちのことになると、途端に自分の身を顧みなくなる。

 専属メイドとして、私たちの身の安全を考えてくれるのはありがたい。

 しかし、だからといってシルフィア自身の体を大事にしなくていい理由にはならないのだ。


「……すみません。ですが、あくまでもこれは必要なことで……」

「試すのならそんな必要はないでしょ? 魔石に向かって、弱い魔法を放てばいいんだから……」

「いえ、それでは意味がないかもしれません」

「どういうこと?」


 シルフィアの説明に私は聞き返す。

 彼女の言っている意味が分からなかったからである。


「こういう効果には時折、ある一定の量を超えないものには発動しない、ということがあります」

「どうして?」

「【魔力吸収効果】で説明すると、どんな弱い魔法でも溜まっていけば、かなり巨大な魔力になってしまいます。それが原因で魔石が壊れることになりかねません」

「……つまり、弱い魔法で容量をためすぎたせいで、実際に必要な時に使えなくなる、ってこと?」

「ええ、そういうことです。流石はハクアお嬢様です」


 私の答えにシルフィアが満足する。

 まるで優秀な娘を見る母親のようである。

 なんかむずがゆい。

 私がそんなことを思っていると、クロネが質問をする。


「でも、それって私たちの魔法も吸収してしまわない?」

「いい質問ですね、クロネお嬢様」

「えへへ」


 シルフィアはクロネも褒める。

 シルフィアは私たちの専属メイドであるため、両方をきちんと褒め、きちんと叱る。

 二人の間に差をつけてはいけないと思ってのことなのだろう。


「この魔石の特徴はおそらく【向かってきた害意のある魔力を吸収する】でしょう」

「えっと……つまり、私たちが魔法を使う分には魔力が吸収されないの?」

「ええ、そういうことでしょうね。回復魔法まで吸収してしまえば、二人の身を守ることはできませんから……」

「「なるほど」」


 シルフィアの説明に私たちは納得することができた。

 想像以上にすごいものをグレインお兄様は送ってきたようだ。






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