閑話7-4 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話
そこからのクロネの行動は早かった。
無かったと思っていたものがあったので、早く確認したかったのだろう。
シルフィアから箱を奪い取る。
「ありがとっ!」
「クロネお嬢様っ!? 何を……」
「ああ、気にしないで。グレインお兄様からの贈り物だから、気になっているの」
「ああ、グレイン様からの贈り物ですか……なら、仕方がないですね」
状況が分からずに慌てるシルフィアに私は状況を簡潔に伝える。
それでシルフィアは理解してくれた。
私たちの専属メイドをやっている以上、最低限必要な知識であるため、当たり前のことではあるのだが……
「ハクア様も一緒に確認しなくていいんですか?」
「なにが?」
シルフィアがクロネの方を示しながら、そんなことを言ってくる。
私は思わず聞き返してしまう。
一体、何を言っているのだろうか?
「おそらくグレイン様はお二人に贈り物をしているのですよね? でしたら、あの中身はお二人のものだと思いますが……」
「ああ、そういうこと。別にそんなことは気にしていないわ」
「せっかく一緒に送られているのだから、一緒に見ればいいと思いますが……」
「あのクロネの様子を見て、そんなこと言える?」
「……言えませんね」
私の言葉にシルフィアが納得する。
二人の目線の先には楽しそうに箱を開けるクロネの姿があった。
その姿はとても可愛らしかった。
グレインのことが好きだからこそ、こういう贈り物を本当に楽しみにしているのだ。
「まあ、一緒に見なくても問題はないんだけどね?」
「というと?」
私の言葉にシルフィアが聞き返す。
どうやらこれはわからないようだ。
まあ、すぐにわかることになるだろうが……
「うわあああああっ!」
私たちがそんな会話をしていると、クロネが感嘆したような声を漏らす。
貴族令嬢としてははしたないのかもしれないが、それだけグレインお兄様からの贈り物が素晴らしいものだったということだろう。
そして、すぐに私もその中身を知ることになるだろう。
「みて、ハクア」
「なにかしら?」
ほら、話しかけてきた。
クロネはグレインお兄様至上主義ではあるが、その次点で私のことを大事に思ってくれている。
だからこそ、こういういときには即座に話しかけてきてくれるのだ。
そんな彼女の手には二つのネックレスのようなものがあった。
その先には宝石のような物が付いているのだが……
「ん?」
私はその宝石を見て、首を傾げた。
まだまだ子供の私には宝石の種類などわかるはずがない。
だが、それでもルビーやサファイア、ダイヤモンドなどの有名どころは見たことがある。
お母様たちが持っているのだ。
もちろん、お母様たちは宝石に散財するような人間ではない。
男爵家としてはかなり裕福なのに、質素倹約をしようとしているぐらいだ。
しかし、流石に貴族の夫人が宝石の一つも持っていないというのはおかしいのと、かなり稼いでいるということで、ミュール商会から購入したのだ。
だが、私の知っている宝石とは全く違っていた。
私の知らない宝石と言われればそれまでなのだが、ただそういうわけではない気がする。
銀色に光る宝石にはどこか引き込まれるような感じがあり……
「これ、お兄様が倒した魔物の魔石を使ったネックレスだって」
「ああ、なるほど……」
クロネの説明に私は状況を理解した。
この宝石は本物ではなく、魔物の中にある魔石だったということか……
しかし、決して価値的に劣るわけではない。
むしろ、魔物から手に入れる必要のある魔石の方が採取難易度が高いという意味では価値が高いのかもしれない。
「えっと……【アブソルシルバーイーター】の魔石……なんだろ、その魔物?」
クロネが箱の中にあったのだろう紙を確認する。
そこにはこの魔石のことについて書かれてあるのだろう。
しかし、【アブソルシルバーイーター】か……おそらく、グレインお兄様の手紙の中に書かれていた【シルバーイーター】の魔物の上位種なのだろう。
グレインお兄様はそれを倒したことを書かれていないが、そうだと読み取ることができる。
流石はグレインお兄様である。
「どんな効果があるの?」
私はクロネに質問をする。
グレインお兄様がただのネックレスを送るはずがない。
何らかの意図があって、このネックレスを送ってきたのだ。
そして、その意味はこの魔石にあるはずである。
つまり、魔石の効果ということだ。
「えっと……【魔力吸収効果】?」
「【魔力吸収効果】?」
予想外の言葉に私は思わず呆けた声を出してしまった。
一体、どういう意図で送ってきたのだろう、グレインお兄様?
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