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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話4-4 とある夫人たちのお茶会


「最後にカレンの孫娘さんね。直接話したことはないけど、どういう娘さんなの?」


 今度はリナリアが聞く番だった。

 グレインの婚約者の中で唯一知らない娘だからである。

 だからこそ、カレンデュラに聞くことにしたわけだ。


「とても優秀な子ね。魔力もないし、運動も得意じゃないから、グレイン君たちについていくことはできないわ。でも、頭が良くて、口も回るから、文官として大成すると思うわ」

「へぇ……カレンがそこまで言うのなら、相当すごい子なのね?」

「身内贔屓を差し引いても、頭が良すぎるわ。天才って、ああいう子のことを言うのかしら?」

「うちのグレイン君と一緒ね」

「いや、それは違うと思うわ。せいぜいシリウス君?と同じぐらいじゃないかしら?」


 リナリアの評価にカレンデュラはあっさりと否定する。

 自分の孫娘であるイリアが天才であることは認めるが、流石に【化け物】と同じ評価ではないと思う。

 あくまで人間の範疇には収まっているはずだ。

 現にまだ他の人が教える余地が残っているのだから……


「あら、そうなの? まあ、それぐらいなら十分かしらね」

「何が十分なの?」

「もちろん、グレイン君と今後の生活を送っていけるかどうかよ。一般人程度なら、グレイン君と生活なんてできないでしょ?」

「……今までの話を聞く限り、否定はできないわね」


 リナリアの言葉に今度はカレンも納得する。

 たしかに一般人なら、グレインと一緒に生活をすることに耐えきれないだろう。

 天才はときに人から迫害される──過去に自分たちも似たような立場にあったからである。

 といっても、その異常性はグレインほどではなかったが……

 しかし、その異常性はイリアにも遺伝していた。


「その点では感謝するべきかもしれないわね。イリアも──あの娘も天才であるがゆえに、友達の一人もできなかったから……」

「ああ、昔のカレンみたいに?」

「うるさいわね。友達がいなかったのはリナリアも一緒じゃない」

「失礼ね。私には旦那様がいたから、問題はないの」

「……友達がいないことには変わりないと思うんだけど」


 リナリアの反論にツッコむカレンデュラ。

 だが、これ以上この議論を続けると自分も傷つけられてしまうので、ここで中断をする。


「イリアにはシャル王女しか友達がいなかったから、本当に良かったわ。シャル王女にも信頼できる友達ができたわけだし……」

「ああ、そういえば同級生だったわね。グレイン君たちも話をしていた気がするわ」

「シャル王女もある意味で普通ではないから、彼女に味方ができるのは良い事だわ」

「たしかにそうね……現状、彼女の味方はかなり少ないから……」


 二人はこの国の第二王女の話になり、一気に暗くなる。

 貴族の家でお家騒動が起こるのは、よく聞く話だ。

 それは王族でも同様ではあるが、その規模はさらに大きくなる。

 王族のお家騒動は貴族のもののようにその家だけでの話ではなく、派閥にまで話が広がってしまう。

 王子たちについては、そこまで問題はない。

 王子である以上、誰かしらが味方に付いてくれるからである。

 しかし、第二王女であるシャルロット王女になると話は違う。

 母親がいくら国王から最も寵愛を受けたとはいえ、身分の低い家の出身。

 側妃になることはできたが、結局は精神的に耐えきれずに亡くなってしまった。

 そのため、第二王女には後ろ盾がいない。

 彼女が女王となることはないと誰もが思っているから、味方になるメリットがないと考えているのだ。


「気にはかけているつもりなんだけど、表立っていろいろとできないのよ」

「正妃様に睨まれるから、仕方がないわね」


 カレンデュラの言葉にリナリアはそんなことを告げる。

 本来なら、国王の妃の中で一番上のはずの正妃様──しかし、実際に寵愛を受けたのは側妃であるシャルロット王女の母親。

 正妃様からすれば、苛立つことこの上ない話だろう。

 だからこそ、正妃様はシャルロット王女を冷遇していた。

 正妃様の怒りを買うのが怖くて、誰もシャルロット王女に手を差し伸べることができないのだ。

 そんなことをすれば、自身の家が危ないからである。

 手を差し伸べるのは、正妃様もそう簡単に攻撃できない公爵家の人間、歴史がある名家、権力闘争に興味のない家ぐらいである。

 例を挙げると、一つ目はキュラソー公爵家、二つ目はバランタイン伯爵家、三つ目がカルヴァドス男爵家である。

 ちなみに他に挙げるとすれば、バランタイン伯爵のライバルであるマスキュラ―伯爵家もあるわけだが、ライバル心のあるマスキュラ―伯爵家がバランタイン伯爵家と同じ派閥につくとは思えなかったりする。


「そう考えると、グレイン君が飛び級で一緒に入学してくれたのはありがたかったわ。イリアの婚約者になってくれたと同時にシャル王女に強力な味方が出来たんだから」

「そうね。その点では学長に感謝した方がいいのかもしれませんね。もしかすると、これを見越して学長はグレイン君を飛び級させたのかしら?」

「それはないんじゃないかしら? 何を考えているのかわからない、変人なんだし……」


 リナリアの言葉を否定するカレンデュラ。

 学長のしたことは素直に褒めるが、考えてやったとは到底思えない。

 なので、【変人】という評価がなくなることはなかった。


 こうして何の問題が来ることもなく和やかな雰囲気のまま、お茶会は進んでいった。

 話している内容は和やかとは程遠いが……







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