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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話3-39 氷の微笑が鬼神に変わったとき 39


「それは仕方のない事でした。ギガンテスが街に向かっていることはわかっていましたから、早急に街の人たちを逃がさないといけませんでした。その結果、混雑が起きてしまい、クリスちゃんが巻き込まれるような結果になったわけですよ」


 伯爵の指摘に対し、夫人は的確に集めた情報を告げた。

 彼女の言う通り、クリシアがギガンテスに殺されそうになったのは不幸としか言いようがなかった。

 他の冒険者たちがギガンテスによる被害を減らすために行動し、結果としてその状況になってしまったわけだ。

 誰が悪いわけでもない。

 しいて言えば、運が悪かったのだろう。

 まあ、アレンに助けられたのであれば、そう悪くはなかったのかもしれないが……


「そんな風に片づけていいのか?」

「そうとしか言いようがありませんよ。それにクリスちゃんが生きているのですから、それでいいじゃないですか」

「……むぅ」

「いい加減しないと、クリスちゃんからも嫌われますよ?」

「っ!?」


 いつまでもアレンを批判する材料を集めようとする伯爵に夫人が通告する。

 たしかに今の彼の行動は、クリシアの好きな人を侮辱する行為でしかないからだ。

 このままでは嫌われても仕方がない。

 現にクリシアからの視線は徐々に冷たい物になっているのだから……

 それに気がついた伯爵はクリシアに泣きついた。


「クリスよ、嫌わないでくれ。お前に嫌われれば、私は生きていけない」


 普段のお堅い雰囲気を脱ぎ捨て、クリシアに縋りつく伯爵。

 そこにはかつて戦争で功績を残し、【英雄】と呼ばれた男とは思えない姿があった。

 まあ、家族愛が強いという噂はあったので、それには合致しているのかもしれないが……

 しかし、伯爵のファンから見れば、あまりみたい光景ではないだろう。

 ファンがいるのかはこの場にいる誰も知らないが……いや、夫人なら知っているだろうか?

 まあ、その情報を今知る必要はないので、誰も口にしないが……


「お父様……私はお父様のこと、嫌いになんてなりません」

「クリス……」


 縋りつく伯爵の肩に手を置き、クリシアが告げる。

 その言葉に伯爵が嬉しそうな表情を浮かべる。

 しかし、その表情は次の瞬間に崩れることになった。


「嫌いになりませんので、私の嫁入りを認めてくれますよね?」

「えっ!?」


 クリシアの言葉に伯爵は茫然とした表情を浮かべる。

 まさか、この状況でそんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。

 アレンとエリザベスも、クリシアの言葉に微妙な表情を浮かべる。

 嫁入りを認めさせるには、確かに悪くない状況かもしれない。

 だが、(伯爵にとっての)タイミングは最悪に近かった。

 これは認めざるを得ない……伯爵にとって、もっともかわいそうな状況となってしまったわけだ。

 今回の一件で敵側ではあるが、そのあまりにもかわいそうな状況にアレンもエリザベスも同情してしまうわけだ。

 しかも、クリシアの口撃はこれで終わらなかった。


「認めてくれなければ、姉様たちにも今回の報告をしますよ?」

「なっ!?」


 クリシアの言葉にさらに驚く伯爵。

 クリシアの言う「姉様」とは、彼女の実の姉たちで他家へと嫁いでいる。

 伯爵にとっても娘に当たり、家族愛の強い彼にとって愛情を向ける相手でもある。

 それは彼にとってはとんでもない切り札になっていた。

 なぜなら……


「そんなことをすれば、嫌われてしまうじゃないか。うちにも寄り付かなくなるっ!」

「そうですね」

「そんなことになれば、孫たちにも会えないじゃないか……生まれたばかりのはずだから、可愛いはずなのに……」


 あまりの絶望的な状況を思い浮かべ、伯爵の顔がさらに暗くなる。

 娘に会えなくなるだけでなく、かわいい孫たちにも会えなくなってしまう。

 それは彼にとって、どれだけ絶望的な事だろうか……

 アレンはそんな伯爵の姿を見て、「クリスを怒らせないようにしよう」とこっそり決意していた。

 彼女を怒らせれば、彼にとって絶望的な罰を与えてくるに違いない。

 すでに精神的に尻に敷かれているアレンだった。


「どうします? 早く認めてくれないと、姉様たちに伝えますよ?」

「わ、わかった……だから、それだけはやめてくれ」


 とうとう伯爵が折れた。

 耐えきれないと思ったのだろう、その目端には涙が浮かんでいた。

 どれだけ悲しいと思ったのだろうか?

 彼のことをあまり知らないアレンとエリザベスの印象がどんどん変わっていった。

 初めは硬派でかっこいい感じだったのに、今ではただの家族大好きなおじさんにしか見えない。

 親しみは湧くが、かっこいいとは思えなかった。

 批判することではないが……


「では、宣言してくれませんか? アレン様と私、リズの重婚を認める、と」

「う……」

「早くしてくれないかしら?」

「わ、わかった。カルヴァドス男爵とクリス、エリザベスさんの結婚を認めよう。これでいいか?」

「はい、いいです」


 バランタイン伯爵の宣言に満足そうな表情を浮かべるクリス。

 ここまでやるのか、貴族の女は……と恐れ戦くアレン。

 ここまで怖い女性の一面を始めて見せられたのだ。

 少し女性に対して恐怖心を抱いてしまっていた。

 だが、もうすでに逃げられない。

 バランタイン伯爵がすでに宣言をした(させられた?)のだから、それをアレンが拒否することはできなくなっていた。

 そんなことをすれば、アレンの品格が疑われることになってしまうわけだ。


「うぅ……」

「アレン様、リズ。これで一緒に生活が送れるわね」

「あ、ああ……」

「そうね……」


 悲しむ伯爵とは裏腹に満面の笑みを浮かべるクリスにアレンとエリザベスは引きつった笑みをうかべることしかできなかった。

 こうして、アレン達は重婚することになり、カルヴァドス男爵家はバランタイン伯爵家の庇護下に入ることになった。







ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


書いているうちにいつの間にかこれほど長くなってしまいました。

本来はもっと短い予定でしたが、考えていたいろんな情報をいれていくと、いつの間にかこんなに長くなりました。

書いていて、かなり楽しかったですし……

次からは短い閑話をいくつか作った後、第八章になります。

第八章は二年後……グレインたちは学院の五年生となります。

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