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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話3-33 氷の微笑が鬼神に変わったとき 33


「【氷結礫(アイシクルグラヴェル)】」


 バランタイン伯爵がアレンに向かって右手を向けた。

 そこから数十もの氷の礫が生み出され、一斉にアレンに向かって襲い掛かってきた。


「おらあっ」

(ブウウウウンッ)

(カカカカカカカカカッ)


 アレンは大剣を振り下ろし、風圧で氷の礫をすべて吹き飛ばした。

 しかし──


「ちっ……いねえな」


 アレンが再び視線を向けると、先ほどまでいたバランタイン伯爵の姿が消えていた。

 先ほどの氷の礫にアレンが意識を向けている間にその場から動いたわけだ。


(スッ)

「そこだっ」


 左後ろから音が聞こえ、アレンは大剣を振り上げる。


(ギイイイインッ)


 二人の剣がぶつかり、甲高い音が鳴り響いた。


「【氷結礫】」

「ぐっ!?」


 剣同士がぶつかった後、バランタイン伯爵は自身の動きの流れにのってアレンの頭を超えるように動いた。

 そして、アレンの真上に到達したときに、再び氷の礫を放ってきた。

 アレンはそれを左腕で防いだが、ノーダメージではなかった。

 いくら鍛えられ上げた肉体とはいえ、高速で放たれた氷の礫なら突き刺さってしまう。

 貫通することはなかったが……


「おらあっ!」

(ブウンッ)

「はははっ、当たらんよ」


 即座に反撃をしたが、すでにバランタイン伯爵はアレンから離れていた。

 振るった大剣が空を切った。

 右手だけでも恐ろしいほど早く大剣を振ることができるので、それが当たれば一撃でバランタイン伯爵を倒すことは可能であろう。

 しかし、如何せん相手の機動力が異常なので、その当てることが叶わない。

 バランタイン伯爵が自身の有利な戦況に持ち込んだので、それは仕方がない。

 別にそのことを批判するほど、アレンは落ちぶれてはいなかった。

 先頭において、自分が有利なように立ちまわるのが定石だからである。

 アレンだって、普段はそのように……立ち回っていなかった。

 よくよく考えれば、基本的には真っ向から相手をねじ伏せていた。

 どれほど力が強くとも、どれほど硬くとも、どれほど速く動けども、どれだけ遠距離から攻撃できても──すべての戦いで力業で乗り越えてきた。

 もちろん、脳筋思考でそんなことになっているわけではない。

 アレンは戦闘において理論的に考えるのではなく、直感で動いていることが多い。

 その戦況でどのように動けば最善かを直感で選択し、戦っているわけだ。

 それが結果として、真っ向から叩き潰すことにつながっているわけだ。

 断じて、アレンが脳筋だからではない。

 頭はよろしくないが……


「ほらほらっ」

「ぐっ!?」


 バランタイン伯爵が次々に攻撃を繰り出してくる。

 死角から襲い掛かってくると思いきや、次は別の方向から魔法を放ってくる。

 上から振り下ろしてきたと思いきや、そのまま下へと潜り込んで斬り上げてくる。

 その戦い方はまさに変幻自在──生半可な実力の者では対処することすら許されずにやられてしまうだろう。

 もちろん、アレンはその生半可な実力の者ではない。

 この世界の人間の中でも、トップクラスの実力者であるのだ。

 ただただやられているわけではない。


「ふんっ」

(ガキィッ)

「む?」


 アレンはいきなり地面に大剣を突き立てた。

 氷に覆われた地面は硬くなっていたが、アレンの力に耐えきれるわけがなく貫かれていた。

 そんなアレンの行動にバランタイン伯爵は怪訝そうな表情を浮かべる。

 そんなバランタイン伯爵に向かって、アレンはとんでもない行動をとった。


「うがああああああっ!」

(ブウウウウウウウウウンッ)

「っ!?」


 氷に突き立てた大剣に力を加え、氷の塊を引きずり出した。

 そして、それを思いっきりバランタイン伯爵に向かって放り投げてきた。

 今までの戦いの中でこんなことをしてきた者はいなかったので、バランタイン伯爵は素直に驚いた。

 だが、それでも対処できないわけではない。


(スッ)

「甘いな」


 氷の上を自由に動くことのできるバランタイン伯爵にとって、この程度の攻撃なら回避することは造作がない。

 むしろ、このような氷の塊を投げたことによりアレンがバランスを崩したことがバランタイン伯爵にとっての好機となっていた。

 だから、そのまま反撃しようとしたのだが……


「かかったな」

「っ!?」


 バランスを崩したと思っていたアレンからそんな声が聞こえてきた。

 だが、勢いよく向かっていたせいで、時すでに遅しだった。


「おらああああっ」

(ガキイイイイイイイイイイイインッ)

「ぐっ!?」


 今までにないほど力の入った大剣がバランタイン伯爵に襲い掛かった。

 どうにか氷の剣を間に入れて直撃は防いだが、その衝撃で思いっきり吹き飛ばされてしまった。

 しかも、直撃を受けた氷の剣は衝撃によりぼろぼろに壊れてしまった。

 バランタイン伯爵の魔力があればいくらでも再生できるとはいえ、一撃でここまでぼろぼろにされたのは初めてだった。







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