7-166 死んだ社畜は兄と言い争う
あれから少し内容を詰め、今日のところは対談は終了になった。
流石にそこまですぐに開始することは不可能なので、それは仕方がない事だろう。
次からはガルドさんとウィズさんがアストラ子爵をオロス老の部屋へと連れて行くことになる。
まあ、アストラ子爵の私兵では心もとないからな。
そこまでの危険が全くあるわけないが、オロス老を見てビビる可能性が高いからな。
「しかし、まさかグレイン君にあんな知り合いがいるとは思いませんでしたよ。もしかして、グレイン君が強いのって……」
ダンジョンを出てから、ウィズさんにそう話しかけられた」。
知り合いというと、シルトさんとリヒトのことだろうか?
俺が強い理由は幼いころからドラゴンと過ごしていたからと思ったのだろうか?
まあ、理由の一端ではあるかもしれないな。
そんなウィズさんにシリウスが答える。
「それでは僕たちも強くなっていますよ。あの二人と出会ったのはグレインと同時期なんですから……」
「そうなのですか?」
シリウスの言葉に少し驚くウィズさん。
シリウスの言う通りであれば、俺以外も強くなっているはずだからな。
「ええ、そうです。グレインが強いのは、グレインが異常だからです」
「その言い方、悪意ない?」
あまりのシリウスの言い分に俺は思わず会話に入ってしまった。
異常であることは認めているが、異常であることを悪いように言うのは看過できない。
そんな俺の言葉にシリウスが答える。
「別に悪いようには言っていないよ? でも、怒ってはいるかな?」
「なにが?」
シリウスが少し怒気を孕ませた口調でそんなことを言ってくる。
どうして彼は怒っているのだろうか?
俺は彼を怒らせることをしたつもりはないのだが……
しかし、近くで見ると、余計にシリウスが男だとは思えないな。
怒っている顔も絵になっており、同じ父親から生まれた異母兄弟とは思えない。
「僕は常々言っているよね? 領地を継ぐのはグレインが一番だって……」
ああ、そのことか……
おそらくアストラ子爵との会話のことを言っているのだろう。
俺がカルヴァドス男爵の次男と紹介し、シリウスのことを長男だと紹介した。
しかも、シリウスの方が継ぐ可能性が高いと示唆した気もする。
「普通に考えれば、継ぐのはシリウス兄さんだろ? 長男なんだから……」
「僕じゃ力不足だって、言ってるんだよ。いや、普通の人よりもうまく経営することはできるかもしれないけど、グレインには絶対に劣るんだから」
「そんなことはないだろ? 戦闘能力だけで言うなら俺の方が圧倒的かもしれないけど、領地経営にそんな力はほとんどいらない。いるのは、経営するための頭脳と決定力だけでしょ?」
シリウスの言葉に反論する。
シリウスが俺に劣等感を持っているのは理解できる。
といっても、ほぼ諦めているようだが……
だが、それを理由に後継者競争から脱落(逃走?)するのは許さない。
俺だって、領主なんて面倒な職業に就くつもりはないからだ。
「その頭脳だって、グレインに負けているじゃないか」
「そりゃ、俺は異常みたいだからな。でも、シリウス兄さんはその辺の領主なんかよりもよっぽど賢いだろ?」
「……それは否定しないけど」
「それに、あの父さんが領主としてやっていけているんだよ? だったら、十分にやっていけるでしょ?」
「……それ、父さんに怒られない?」
心配そうに、だが否定はしないシリウス。
俺たちは別に領主としてやっていけないと言っているわけではないのだ。
アレンと比べれば、よっぽどましに領地を経営できると自負している。
ただただ面倒なだけで……
「まあ、大丈夫でしょ。それより、兄さんにはまずやらないことがあるでしょ?」
「何を?」
「それはもちろん、将来の奥さん探しさ。領主がいつまでたっても独身じゃ、ダメでしょ?」
「お、奥さんっ!」
俺の言葉にシリウスが驚く。
だが、別におかしなことを言っているわけではない。
領主として、貴族として生きていくのであれば、跡継ぎの存在が必要となってくる。
そのため、その前段階の貴族の妻が必要になってくるわけだ。
しかし……
「見つかるかなぁ」
俺は思わずそんなことを呟いてしまう。
言ってみたものの、シリウスにそんな存在が見つかるのか確信を持てないのだ。
その理由が……
「なんでそんなことを言うの? 僕のことを綺麗だと言っているのはグレインだと思うけど……」
「いや、その綺麗なのが問題なんだよ」
「え?」
「女の子よりも奇麗なのが兄さんだよ? そんな美しさを競うことすら憚られる相手に嫁ごうとする女性なんていると思う?」
「……」
俺の指摘にシリウスが黙り込む。
言っている意味が理解できたのだろう。
シリウスがかっこよければ、問題はなかっただろう。
女性はいつの時代もかっこいい人間が好きなのだから。
しかし、シリウスのルックスを表現するなら、美しい。
かっこいいからはずれているし、女性も羨むほどの美しさ……ある意味では悪条件になってしまうわけだ。
見つけるのは苦労しそうだ。
「なら、諦めようかな」
「は?」
突然のシリウスの言葉に俺は思わず呆けた声を出してしまう。
どうして今までの会話でそんなことを言い出すのか。
「だって、僕の奥さんになってくれる人は見つからないかもしれないんでしょ? だったら、跡継ぎが生まれる可能性の高いグレインの方がリードしているじゃないか」
「うぐっ!?」
シリウスの指摘に俺は言葉を詰まらせる。
たしかに、シリウスの言う通りはある。
俺にはすでに婚約者がおり、関係も悪くはない。
いずれは男女の関係的な事をして、子供が生まれる可能性は高い。
つまり、跡継ぎが生まれるということだ。
まさかそこを突かれるとは……
「仕方がない。母さんたちにシリウス兄さんの婚約者を探してもらおう。そうすれば、みつかるはずだ」
「それは卑怯じゃない?」
俺の言葉を聞いたシリウスが文句を言ってくる。
だが、こっちとしても手段は選んでられないのだ。
シリウスに領主を押し付けるためなら、なんでもするつもりなのだ……犯罪行為以外は。
そんな風に俺たちが言い争っていると……
「ねぇ……」
「なんだ?」
「何かしら?」
アリスが口を開いた。
それにティリスとレヴィアが答える。
「私もカルヴァドス男爵家の子供よね?」
「ああ、そうだな」
「ええ、そうですね」
「それなのに、どうして次期領主の話に入れないのかしら?」
「「……」」
アリスの言葉に二人は黙り込んでしまった。
答えられないからだ。
理由を告げれば、アリスを傷つけてしまうことになりかねないから。
だが、伝えないことも不自然である。
さて、どうやり過ごすつもりなのだろうか……
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今回の件でのオロス老のメリットは安定した住居でしょうか?
元々、迷惑をかけたお詫び的なところもあり、そこまでメリットについては考えてませんでした。
ドラゴンという長寿の存在ですし、たかだか付与する程度はなんの問題もないですし…




