7-152 死んだ社畜はドラゴンと話す 1
「えっと……」
いきなりの出来事に俺たちはどう答えていいのかわからず、口ごもってしまう。
なんだ、この状況は?
どうして、いきなりドラゴンから質問をされることになるんだ?
しかも、さっきまで戦っていた相手に……
そんな俺たちの様子にしびれを切らしたのか、ドラゴンが再び問いかけてくる。
「聞かれたことには答えいっ! お主らは何者じゃ?」
ちょっと怒っているようだった。
どうしてだ?
いや、先ほどまで戦っていたのなら、仕方のない事かもしれない。
だが、それにしては質問がおかしくはないか?
ずっと戦ってきたのであれば、俺たちのことを多少なりとも把握していると思うが……
しかし、これ以上怒らせるのは得策ではない。
とりあえず、自己紹介をしておこう。
「えっと、俺はグレイン=カルヴァドスと申します。冒険者です」
「ほう、冒険者か? して、その冒険者がどうしてこんなところに?」
「え?」
「む?」
予想外の質問が飛んできた俺は思わず呆けた声を出してしまう。
そんな俺の反応にドラゴンの方も訝しげな声を出す。
そんなドラゴンに俺は説明する。
「えっと……ダンジョンを攻略するのが冒険者の務めなんですが……」
「ダンジョンじゃと? ここがどうしてダンジョンに……」
俺の説明を聞いたドラゴンが文句を言いながら周囲を見渡す。
じっくりと……まるで初めて見るような場所を調べるように……
「どこじゃ、ここっ!?」
「「「「「ええっ!?」」」」」
ドラゴンの突然の叫びに俺たちは驚愕の声を出してしまう。
それはそうだろう。
ダンジョンマスターというのは、いわゆるダンジョンの主である。
つまり、ダンジョンは自分の家のようなもので、それが初見であることなどあるはずがないのだ。
それなのに、目の前のドラゴンは初めて見るような反応をした。
驚いて当然だろう。
「えっと、ダンジョンマスターなんですよね?」
俺は思わず質問する。
先ほどから、会話がおかしい気がする。
そのため、最低限情報のすり合わせをしておかないといけないと感じたのだ。
俺のそんな質問にドラゴンは「何を分かり切った」といった声音で答える。
「なぜ儂がダンジョンマスターなんだと思ったんじゃ」
「は?」
「儂はドラゴンじゃぞ? ダンジョンマスターなんぞ、そんなものになるつもりはないぞ」
「ええっ!?」
ダンジョンマスターと思っていた相手がダンジョンマスターではなかったようだ。
いや、おかしくない?
俺たちはここがダンジョンマスターの部屋だと思って、入ってきたんだぞ?
明らかにダンジョンの中でも異質の扉だったので、ダンジョンマスターの部屋だと思うのが当然だろう。
しかも、中にいたのはドラゴンだ。
ダンジョンマスターとしてはかなり珍しい部類に入るだろうが、ダンジョンを支配するという点でこれほど適任はいないだろう。
強いという意味で……
しかし、本人(本ドラゴン?)は否定している。
この食い違いはなんだ?
「このダンジョンは土属性なんですよ? しかも、ダンジョンマスターの部屋にいたうえに、貴方はドラゴン……ダンジョンマスターだと思うのが当然でしょう?」
「……そうなのか? 儂にとって、すべて初めての情報なんじゃが……」
「え? どうしてですか?」
説明を聞いたドラゴンの反応がおかしく、俺は思わず問いかけてしまった。
明らかにダンジョンマスターの反応ではない。
いや、普通のダンジョンマスターの反応を知らないけど……
そもそもダンジョンマスターとこのように意思疎通を普通はできる者なのだろうか?
新人であること関係なく、これはかなりレアな経験ではないだろうか?
そんなことを考えていると、ドラゴンがとんでもない事実を告げてきた。
「だって、儂は先ほどまで寝ていたからな」
「「「「「ええーっ!?」」」」」
衝撃の事実にその場にいた全員が再び驚きの声を上げた。
こんな事実を告げられれば、驚くのも仕方がない事だろう。
つまり、なんだ?
俺たちは先ほどまで寝ていた相手と戦っていたのか?
だが、それならおかしい事がさらに出てくる。
「いや、普通に戦っていましたよね? 普通に俺たちに攻撃をしてきましたよね?」
「寝相じゃろ? 儂が普通に動いても、お主らにとっては脅威じゃろうしな」
「……」
ドラゴンの言葉に俺は言葉を失う。
たしかに普通に動かれるだけでも、俺たちは真剣に対処しないといけないからだ。
だが、それ以外にも疑問点がある。
「じゃあ、どうして俺たちの攻撃が外皮の奥に当たった時、嫌がるような声を出したんですか?」
「嫌がる声、じゃと?」
「ええ。まるで苦し気な、嫌がっているような声を出していましたよ?」
「ふむ……」
俺の言葉にドラゴンが少し考えるような反応を示す。
そして数秒後、再び口を開く。
「お主等、寝ているときに顔へ水をかけられたらどう感じる?」
「え? それは嫌だと思いますが……」
「それじゃよ」
「ええっ!? そんなことですか?」
「そんなことじゃと? お主等はそれをされたことがないからわからないかもしれないが、儂は実際にそんなことをされた側じゃぞ? 文句を言う権利があるんじゃぞ?」
「……それはすみませんでした」
ドラゴンの言い分の方が正しかったので、俺は思わず謝ってしまった。
先ほどまで死闘をしていたのに、まさか謝らされるとは思わなかった。
こんな経験、滅多にないだろう。
まあ、次に同じ経験をしたくはないけど……
と、ここで俺はエクレール先輩とリュコが他の人より申し訳なさそうにしているのに気が付いた。
一体どうしたのだろうかと思ったのだが、すぐに気が付いた。
「それと大丈夫ですか?」
「何がじゃ?」
「えっと、首のあたりに思いっきり攻撃をしたと思うんですが……貫通しているはずですよ?」
「む? たしかに、首のあたりに違和感があるな。とりあえず、確認でもするか?」
「へ? ええっ!?」
ドラゴンの言葉に俺は呆けた声を上げたが、すぐに驚きの声に変わった。
なぜなら、ドラゴンの体が一気に小さくなったからだ。
といっても、全体が小さくなったわけではない。
まるで服でも脱ぐかのように外皮の部分が剥がれ落ち、中から二回りぐらい小さなドラゴンが現れたからだ。
といっても、俺たちに比べれば、格段にでかいのだが……
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