7-131 死んだ社畜はダンジョンマスターの部屋前に来る
ダンジョンマスターを討伐すると全員で決めた後、俺たちはとある場所にやってきた。
そこは……
「でかい……扉?」
俺は目の前の光景に思わずそんなことを呟いた。
そうとしか表現できないからだ。
目の前にあるのは両開きと思われる扉だったからだ。
素材は石だろうか……だが、普通の石に比べてかなり頑丈そうに感じる。
全力の俺が攻撃してもヒビをいれることができるかすら怪しい気がする。
こんなことを俺が思うのは珍しい気がする。
でも、それほどまでに異様な雰囲気を感じるのだ。
高さも5m近くあり、それも異様さを増しているように感じる。
「そうか……君たちはダンジョンマスターの部屋を見るのは初めてだったな」
そんな俺たちの反応を見て、ウォーさんが話しかけてくる。
なんでそんなことを言うのだろうか?
そんなことを思いながら視線を向けると、さらにウォーさんは説明する。
「ダンジョンマスターの部屋は扉の構造は違えど、どこもこんな雰囲気の扉があるんだ。初めて見た奴はみんなそんな反応をするんだよ」
「なるほど」
「そして、この扉はダンジョンマスターに挑戦する人間の実力を測るための関門でもあるんだ」
「え?」
ウォーさんの言葉に俺は驚く。
いきなり突き付けられた事実なのだから、驚くのも当然だろう。
だが、そんな俺たちの様子を気にすることなく、ウォーさんは扉を指さして話を続ける。
「この扉の前に立って、何か気になることはないか?」
「気になること、って……」
ウォーさんの言葉に俺は再び視線を向ける。
何の事だろう、と思いながら扉を見ていた。
そして、気が付いた。
「これって、もしかして……」
「ああ、気が付いたようだな。なら、この先のダンジョンマスターと戦う資格があるわけだ」
視線を向けると、ウォーさんが笑顔で答える。
どうやら俺の感じたものは正解のようだ。
他のメンバーも俺と同じものを感じたようで、ウォーさんに視線を向けていた。
そんな俺たちにウォーさんは真実を続ける。
「この扉から感じる異様さの一部はダンジョンマスターの威圧感もある。それを感じ取ることができるのが、ダンジョンマスターと戦うための最低条件だ」
「やっぱりそうだったんですね」
「実力のない冒険者は異様さのすべてを扉のものだと勘違いするんだ。そんな奴がダンジョンマスターに勝てるわけだがないだろう」
「……そうですね」
「といっても、その程度の実力の冒険者なら、ここまでたどり着くどころかダンジョンに入ることすら許可されることはないだろうがな」
「……」
ウォーさんの言葉にどう反応すればいいのかわからず、思わず黙り込んでしまう。
たしかに彼の言う通りではあるが、それは何も知らない新人が賛同していいものかどうかわからなかったからだ。
まあ、否定はしていないので、賛同ととられる可能性はあるが……
「とりあえず、この場にいる全員がダンジョンマスターと戦う資格があるわけだが……」
「どうしたんですか?」
ウォーさんが不意に言葉を止める。
一体、どうしたんだろうか?
聞き返すと、ウォーさんが少し不安げに話を続ける。
「いや……扉の向こうからでもこれほどの威圧感を与えるダンジョンマスターとなると、おそらくかなり強いと思われる」
「そうなんですか?」
「ああ。おそらくAランク並のダンジョンマスターだろうな」
「Aランクっ!?」
ウォーさんの言葉に俺は驚く。
それはそうだろう。
ダンジョンマスターは本来ダンジョンのランクの2つ上が相場なのだ。
このダンジョンは新しくできたため、Dランクとされていた。
つまり、ダンジョンマスターはBランクだと思われていたのだ。
しかし、実際に感じたのはAランク並の威圧感なわけで、予想以上に難易度の高い討伐になるわけだ。
「ここで戻るのも一つの手なのだが……」
ウォーさんがそんな提案をしてくる。
彼自身もこのレベルの難易度とは思わなかったのだろう。
彼の気持ちも理解できる。
だが、このまま帰るわけにもいかない。
「いったん戻ったとしても、あまり意味はないと思いますよ。今、集まっている冒険者たちの中にこのダンジョンマスターと戦える冒険者はそこまでいるように思えませんでしたし……」
「そうなんだよな」
俺の言葉にウォーさんも頷く。
彼も現在ダンジョンの外に集まっている冒険者たちのことを確認したからこそ、賛同してくれたのだろう。
集まっている冒険者はおそらくほとんどがCランク、Dランクの冒険者だと思われる。
Dランクのダンジョンだからこそ、それも仕方がない。
もちろんBランク以上の冒険者もいないわけではないが……
「一度帰ってしまえば、おそらく全員で来ることになるでしょうね」
「ああ、そうだな」
「そのせいで時間がかかるでしょうね」
「その可能性が高いな」
俺の言葉にウォーさんが頷く。
俺の言いたいことが理解しているのだろう。
「再びスタンピードが起こる可能性が高まりますね」
「流石にそれは面倒だな。ダンジョン内ならグレイン君の魔法でどうにかできると思うが……」
「ダンジョンの外になると難しいでしょうね。あれは狭い室内だからこそできる芸当ですし……」
俺たちはカロンさんたちに会う前のことを思い出していた。
そこそこの広さの空間に敷き詰められたあまたの魔物たち。
大量発生のために集められた魔物たちなのだろう。
そこそこの広さだからこそ、俺の魔法で一気に倒すことができた。
だが、流石にダンジョンの外になると魔物たちは広範囲に移動することを考慮し、かなりの魔力を消耗することになる。
それは面倒である。
「なら、このままいくしかないか」
「ええ、そうですね」
ウォーさんの言葉に俺は頷く。
元々、俺たちに選択肢はなかったわけだ。
俺たちが決めたことではあるが……
そんな話をしながら、俺たちはダンジョンマスターの部屋への扉に手をかけた。
((ギイイィッ))
扉は見た目のわりにあまり力を入れずに押すことができた。
そのギャップがさらに俺の心配を掻き立てた。
あたかも自信があるので、扉が開かれることなど関係ないとばかりの軽さに……
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