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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-107 死んだ社畜は兄を止める


「さて、どういうことか説明してもらおうか?」


 シリウスがディフさんに詰め寄る。

 この数年でよりきれいになったその見た目でにらみつけられると、かなりの威圧感を感じる。

 【氷の女王様】と言ったところだろうか?

 まあ、実際は男なのだが……

 そんなシリウスの言葉にディフさんが口を開く。


「お前さんに必要だと思ったから、作ったまでだ」

「僕に必要? 後衛の僕に鎧なんて必要ないと思うけど……」


 ディフさんの言葉にシリウスが反論する。

 シリウスは今まで後衛としてしか戦っていない。

 アリス・ティリス・リュコの三人が前衛で戦うのをシリウスとレヴィアが後衛として支えるのが大まかな役割分担だった。

 そのため、鎧のような防具は必要なかったのだが……


「それは考え方が偏りすぎているのう」

「なに?」


 ディフさんの言葉に俺は思わず驚きの声を漏らす。

 なんせ、俺ですら思いつかないことをディフさんが指摘してきたからだ。

 一体、彼はどんなことを思いついているのだろうか?


「お前さんは【氷属性】の魔法を使うだろう?」

「ええ、そうですよ。それがどうしたんですか?」

「だったら、なおさら戦いの場において動き回るべきだろう」

「どういうことですか?」


 ディフさんの言葉にシリウスが聞き返す。

 俺も彼の発言の意図が分からず、話に耳を傾ける。

 そんな俺たちの様子にディフさんはにやりと笑みを浮かべる。

 そして、レヴィアの方を指さす。


「そちらの嬢ちゃんは【土属性】の魔法を使うようだな。その場合は動き回る必要はない。その場から魔法を使うべきだろう」

「どうして?」

「【土属性】──つまり、土は大地としてつながっておる。だから、そのつながりから簡単に魔力を伝わらせることができる」

「……」


 ディフさんの説明にシリウスが考え込む。

 彼の言っていることの意味を理解しようとしているのだろう。


「逆に【氷属性】──その大元は水だ。水と言うのは流れるものであり、土のように大地として常にその場にあるものではない」

「……だから、動き回る必要がある、と?」

「そういうことだ」


 シリウスの言葉にディフさんがうなずく。

 ようやく、彼の意図を理解することができた。

 今までシリウスとレヴィアは後衛として同じような動きをしてきた。

 しかし、魔法の属性の特徴が違うのであれば、違う戦い方をするべきだったのだ。

 それをディフさんは指摘してくれたのだろう。


「だが、すでに前衛が三人もいる状況で、僕みたいなあまり運動も得意でない人間が混ざるのは難しいと……」

「誰が前衛で戦え、と?」

「え?」


 ディフさんの言葉にシリウスが驚きの声を漏らす。

 まさか反論されると思っていなかったのだろう。

 驚くシリウスをよそにディフさんはさらに説明を続ける。


「お前さんは前衛が動き回って近接戦闘を行うもののように思っているかもしれないが、必ずしもそれが正解とは限らん」

「……どういうことですか?」

「お前さんは前衛で動き回りながら戦況を見定め、的確に戦う者のサポートを行えるようになればいいんだ」

「……」

「後衛では見抜けなかった部分を見つけることができる可能性もあるしの」

「……なるほど。理解できました」


 ディフさんの説明にシリウスは納得できたようだ。

 自分の今までの戦い方が間違っていたとは思っていないだろうが、新たな戦い方を身に着けることができると感じたのだろう。

 これも一つの成長というわけだ。

 これから新たな戦場に行くときに、この成長は嬉しいかもしれない。

 だが、ここで疑問点が一つ。


「じゃあ、なんでこんな装備にしたんですか? 兄さんが前衛で動き回ることが必要なのは理解しましたが……」


 俺はディフさんに質問する。

 シリウスが前衛で動き回るために鎧が必須になることは理解できた。

 後衛にはあまり必要ないが、前衛には鎧の種類の違いはあれどほぼ必ずと言っていいほど必要になってくるだろう。

 しかし、どうしてこの形なんだろうか?


「もちろん、似合うと思ったからだ」

「え?」


 ディフさんから返ってきた言葉に俺は思わず呆けた声を出してしまう。

 予想外の答えが返ってきたのだから、それも当然だろう。

 この男は今、何と言った?


「この嬢ちゃんにはごてごてした重い防具など似合わん。軽やかに戦場を駆け巡る美しき乙女のような装備が似合うと思ったんだ」

「えっと……」


 俺はどう反応すればいいのかわからなかった。

 いや、言わんとしていることは理解できる。

 たしかに俺も同じことを思っているのは事実だ。

 だが、シリウスが兄だと理解している以上、それを実現するのは難しいと思っていた。

 それでもディフさんはそれを実行していた。

 シリウスがいかに女性にみられることを嫌がっているのかを理解していないがために……


「確かに似合っているわね」

「そうだな。少なくともアタシたちじゃ、あんなものを着こなせないな」

「……恥ずかしいですしね」


 女性陣がおのおのの感想を漏らす。

 女性陣からここまで言われるのだから、いかにシリウスに似合うのか理解できるだろう。

 レヴィアについては、その扇情的なデザインが恥ずかしいと感じているようだが……

 そして、そんなことを言われたシリウスはと言うと……


「言い残すことは、それだけ?」

「ひいっ!?」


 ディフさんののど元に再び氷の刃を突き付けていた。

 しかも、先ほどよりも近くに──ディフさんの肉を少し斬り、軽く血を流させていた。

 流石にこれはやばい。


「兄さん、落ち着いて。流石にそれはやばい」

「グレイン、離して。こいつを殺せない」

「いや、殺したら駄目なんだって」


 とんでもない行動をしようとしたシリウスを羽交い絞めにして止める。

 まさかここまで暴走するとは……

 今後はあまりそういう方面でいじらない方がいいのかもしれない。

 そう考えた俺だった。

 しかし、いい匂いがするな、おい。






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


シリウスの防具は製作者のご厚意(戦闘方面、趣味)が理由でした。

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