7-83 死んだ社畜は指摘する
「ほう、お前は英雄の息子と言うわけか?」
「だったら、俺たちに仕えるにふさわしいな。よし、その栄誉を授けてやろう」
俺のことを知った二人の王子たちはいきなりそんなことを言ってきた。
英雄の息子と言うネームバリューが欲しいのだろうか、わかりやすい奴らである。
まあ、ネームバリューと言う意味ではかなりのものだからな。
しかし、少しはその欲望を隠そうとはするべきだろう。
ニヤニヤと隠しきれていない欲望が顔に現れているせいで、たとえ悪い奴じゃなくとも断りたくなるぐらいだ。
「断る」
「「なっ!?」」
まあ、断るわけだが……
俺があっさり断ったことに王子たちは驚く。
取り巻きたちも俺の言葉に驚いていた。
そして、野次馬たちも驚いていたのだが、一部には体を背けて口を抑えている者もいた。
おそらく、あんなに自信満々に言っていたのに、あっさりと断られた王子たちを笑っているのだろう。
それは仕方がない。
とりあえず、不敬罪にならないことを祈るばかりである。
「貴様、なぜ断る。断るなんて不敬だぞっ!」
「俺たちのような次期国王の傍に付き従えるのだぞ? これに勝る栄誉はないんだぞ?」
二人の王子が俺に対してそんなことを言ってくる。
しかし、二人の言い分は間違っている。
「命令で周囲に人を従えるなんざ、可哀想で仕方がないぞ?」
「む?」
「たしかにあんたらは王族だから貴族に対して断れない命令をすることができるだろう。だが、そんな命令で周囲に人を従えたとしても、信じられる仲間にはならないはずだ。せいぜい王族という権力に従っている取り巻きと言ったところか?」
「ぐっ」
俺の言葉に第二王子が口ごもる。
俺の言っていることは理解できたようだ。
まあ、理解したとしても改善できるとは思わないが……
「それに、次期国王に仕えることが最大の栄誉? そんなことあるわけがないだろ」
「なんだと?」
俺の言葉に第三王子が怒りの表情を浮かべる。
そんな怒る第三王子に俺ははっきりと告げてやる。
「次期国王に仕えることを栄誉と思っている奴はその権力にあやかりたい奴だけだ。俺からすれば、そんな金にもならん称号はいらん」
「ふん、貴様のような奴のことを守銭奴と言うんだろう?」
「守銭奴は金を使わずにため込む奴のことだな。俺は金を稼いで、大事な人たちと過ごすためだけに使うだけだ」
「そんなこと知るかっ!」
俺の言葉に第三王子が叫ぶ。
まあ、第三王子からすれば、そんなことは関係ないな。
これは言った俺が悪いだろう。
守銭奴ではないということを言いたかっただけだ。
「とりあえず、てめえに付き従うことなんざ、俺にとっては何の価値もないと言うことだ」
「うっ」
俺のまとめに第三王子も言葉を失う。
ここまで真正面から言われたことがないのだろう、王子たちはかなりたじろいでいた。
まあ、王族相手にここまではっきりと宣言する奴なんざいるとは思えないしな。
「あと、言わせてもらうと、あんたらが次期国王になることはありえないだろうな」
「なんだとっ!」
「俺たちは次期国王候補の第一位と第二位だぞっ!」
俺の言葉に二人が叫んでくる。
うるさいな……これだけ近いんだから、そんなに叫ばなくてもいいだろう。
顔をしかめながら、思わず耳を抑えてしまう。
ちょっと痛い。
アブソルシルバーイーターの雄叫びを近くで受けたときも、これほど痛みを感じたことはないぞ。
こいつら、声の大きさだけならアブソルシルバーイータークラスということか?
それなら、自信をもっていいかもしれない。
まあ、人間が生きていくうえで必要のない能力かもしれないが……
「あんたらは勘違いしているみたいだが、第一位はキース第一王子だろう? 一番、最初に生まれた王子なんだから」
「ふんっ、あんな妾腹が第一位なわけがないだろう。王位継承権があるかすら怪しいんじゃないのか?」
「そうだな。母親が平民だったか、そんな下賤な血が混じっている奴に王位継承権があるはずがないだろう」
俺の指摘に二人の王子が馬鹿にしたような笑みを浮かべながらそんなことを言う。
こいつらはキース王子のことが嫌いなんだろう。
俺からすれば、こいつらよりもキース王子の方がすべてにおいて勝っていると思うが……
いや、すべてというのは言い過ぎだろうか?
とりあえず、こいつらは母親の生家の位と傲慢さは勝っているようである。
あと、聞きたいことが……
「なあ、シャル王女様?」
「なんですか?」
「シャル王女様ってキース王子の実の妹だよな?」
「ええ、そうですね。キースお兄様と私は同じ母親です」
「そのお母さんって、平民だったの? たしか王宮の侍女って聞いていたんだけど、平民でなるのは難しくない?」
俺は純粋な疑問をシャル王女にする。
ありえない話ではないと思うが、簡単には信じられないのだ。
現にこの二人が言っていることだし……
そんな俺の質問にシャル王女は答えてくれる。
「私のお母様は元子爵家令嬢です。まあ、貴族の中では下位に位置するので、王族からすれば平民とさほど変わらないと思う者もいると思いますが……」
「元?」
「はい。母親の生家はもうないんです」
「どうして? 王族の子を身ごもったら、栄誉こそあれなくなるとは思わないんだが……」
「お母様のお父様──私の祖父に当たる方が亡くなり、次期当主になる方もいなかったそうです」
「なるほど……それで誰も継げなくなった子爵家は取り潰されたわけか?」
「はい、そういうことです。元子爵領は近くにあった評判のいい伯爵家に併合されたそうなので、領民たちは今も元気に過ごしているそうです。お爺様と交流もあったそうで、笑顔で受け入れてくれたそうです」
「なるほど、それはよかった」
とりあえず、元子爵領の人々はきちんと生活してできているようだな。
貴族の家が取り潰されることは関係のない話かもしれないが、意外と領民たちにも関係してくる話である。
もし、次に領地を運営する人物が屑だった場合、生活を苦しめられる可能性があるのだ。
逆に良い人物だったら、生活が楽になる可能性もあるが……
とりあえず……
「別に第一王子は平民の血が混ざっているわけじゃないみたいだな。だったら、下賤の身というのはおかしいな?」
「「ぐっ」」
俺の指摘に二人は言葉を詰まらせる。
言い返したいようだが、なにも思いつかないのだろう。
まあ、この程度の奴らに俺を言い負かせるほどの何かを思いつくことはできないだろうがな。
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キース王子とシャル王女の生まれる流れは下記のとおりです。
1母親が侍女として王宮で働く
2王様のお手付きに
3キース王子を身ごもる
4侍女を辞めて実家に
5実家でキース王子を出産
6子爵死去、母親は相続できないと感じて爵位返還をしようとする
7元侍女ということで再就職の話が上がるが、キース王子の存在が判明して側妃になる
8側妃として一番愛されるようになり、シャル王女を身ごもって出産
9正妃からの嫌がらせにより死亡
という感じです。
おかしい点があるかもしれませんが、気にしない方向でお願いします。




