7-74 死んだ社畜は防具を注文する 3
「さて、じゃあ次は魔法使い組だが……」
ディフさんがシリウスとレヴィアに視線を向ける。
だが、言葉を途中で区切る。
「……一体、どういう防具を作ればいいんだ?」
「どういうことですか?」
ディフさんの言葉に俺は思わず聞き返してしまう。
それはそうだろう。
まさか本職からそんな言葉を聞くとは思わなかったのだから……
「いや、後衛の防具なんて、今までほとんど作ったことがないんだよ」
「そうなんですか?」
「元々、防具が必要なのは敵からの攻撃に常にさらされる前衛がほとんどだ。後衛の人間が敵の攻撃にさらされることなんて、あまりないんだよ」
「ああ、たしかにそうですね」
ディフさんの言うことに俺は納得する。
基本的に敵からの攻撃を受けるのは前衛であり、後衛が攻撃を受けているという状況はもうすでに戦況がかなり傾いてしまっているのだ。
そんな状況になってしまえば、後衛は自分の命のために逃げ出すべきなのだ。
「まあ、ローブとかなら作ったことはあるが……」
「あ、それでいいですよ」
「私もです」
「ん? いいのか?」
シリウスとレヴィアがあっさりと肯定したので、ディフさんが少し驚く。
そんなディフさんに二人はあっさりと答える。
「たしかに僕たちに普通の防具を渡されても困りますしね」
「下手したら動けなくなりますからね。私たちは基本的に魔法しか使いませんから、筋力は一般人よりしたかもしれませんしね」
「まあ、たしかにそうだな。しかし……」
「どうしたんですか?」
悩むディフさん。
俺は思わず質問してしまう。
ディフさんは真剣な表情で口を開く。
「いや……こんな可愛らしい少女たちにローブなんて不格好なものを着させて良いものだろうか?」
「……それは全魔法使いを否定していますよ? 基本的に魔法を使う人はローブを装備しているんですから」
「まあ、そうなんだが……俺の美的感覚が彼女たちにそんな服を着せるのはどうかと言っているんだ」
「まあ、わからないでもないですが……」
なんて面倒なことを考えるんだろうか。
たしかに言っていることはわかるが、防具にそのようなことを考える必要はあまりないと思う。
一番大事なのは防具としての性能なんだから……
「むしろ不格好の方が良いのか?」
「どういうことですか?」
「いや、彼女たちは可愛らしいから、男どもから話しかけられることが多いだろう。それを少しでも減らすためにローブでその美しさを隠せば……」
「いや、そこまで考えなくてもいいんじゃないですか?」
なんでこの人はそんなことを考えているのだろうか?
そこはもう防具屋の領分ではないだろう。
いや、客の見た目云々も領分なのだろうか?
その辺はプロではないので、わからない。
「まあ、ローブしか作れないだろうから、仕方ないか」
「そうですね」
結局はローブしか作れないのだから、それ以外に選択肢はない。
これは俺たちがどうこうできるようなものではない。
最初から決まっていたわけだ。
「さて、値段についてだが……そうだな。相場だと、一つ金貨100枚は下らないだろうな」
「まあ、そうでしょうね」
ディフさんの言葉に納得する。
このレベルの素材から作られる防具など、金貨100枚でも安いぐらいじゃないだろうか。
「といっても、素材は持ってきてくれたから、俺の手間賃だけでいいから一つ金貨50枚でいいか」
「いいんですか? もう少し高くても払えますけど?」
一つ金貨100枚でも十分に払えるぐらいには俺は稼いでいる。
だからこそ、そんな安くしても大丈夫なのかと思ったのだが……
「今後もお前さんらとの付き合いはあるだろうから、これぐらい安くしても大丈夫さ。これでもそこそこの儲けは出るからな」
「それなら、俺が言うことはありませんね」
儲けが出ると言われれば、こちらが文句を言うのは筋違いだ。
むしろ、安く防具を手に入れることが出来るので、喜ぶべきだろう。
「とりあえず、完成は一ヶ月後だな」
「そんなにかかるもんなんですか?」
「ああ、そうだな。普通の防具なら一つ3,4日でできるだろうが、このレベルの素材は防具にするのにも時間がかかる。一つ1週間ぐらいかかるだろう」
「それは大変ですね。すみません」
「いいってことよ。こっちとしても、こんな素材を扱わせてもらうんだから、感謝したいぐらいだ」
「それはよかった。では、よろしくお願いします」
「おう」
こうして俺たちは初めての防具の注文は終わった。
さて、一ヶ月後にどんな防具ができるのだろうか。
かなり楽しみである。
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