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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-38 死んだ社畜はクエストを確認する


「さて、話はそれぐらいにして、今回のクエストの話をしようか」


 俺たちの話が一段落すると、ガルドさんがそう告げてきた。

 そして、俺に一枚の紙を渡してきた。

 そこには……


「【メタルイーター】?」

「ああ、そうだ」


 紙に書かれてある気になる言葉を口にすると、ガルドさんが頷いた。

 おそらく、こいつが今回のターゲットということだろう。

 しかし、初めて聞く名前だな。

 少なくとも、図鑑では見たことがない。

 シリウスたちも同様で首を傾げていた。

 なので、俺はガルドさんに質問する。


「このメタルイーターとやらはどんな魔物ですか? 初めて聞く名前なんですが……」

「まあ、珍しい魔物だから、それも仕方のないことかもしれないな。簡単に言うと、鉱山に住む魔物だ」

「鉱山?」


 ガルドさんの説明に俺は驚く。

 珍しいところにいる魔物だな、と思ったからだ。

 紙を見てみると、たしかにクエストの場所がロックック銀山となっている。


「この魔物は本来そこまで危険度の高い魔物ではない。主食は鉱山にある鉱物でそこまで食べる量も多くない」

「そうなんですか? でも、鉱物を食べるということは、その分の資源が減ることになると思いますが……」

「だが、この魔物のある特性が重宝されているんだ」

「特性?」


 ガルドさんの言葉に俺は聞き返す。

 一体、どんな特性があるのだろうか?

 疑問に思う俺にガルドさんが話を続ける。


「このメタルイーターは体内で鉱物の純度を上げるみたいなんだ」

「ほう、それはすごいですね」


 純粋に凄いと思った。

 生物というのは環境に適応するために進化するのだが、まさか体内で金属の純度を上げることが出来る生物がいるとは思わなかった。


「メタルイーターは体内で鉱物の純度を上げ、それを排泄する。すると、人間は純度の高い金属を手に入れることができるわけだ」

「なるほど……排泄物という点に引っかかる部分はありますが、純度の高い金属を手に入れるのなら気にするようなことではありませんね。精錬のいらない金属が手に入るかもしれないですし……」

「そういうことだ。メタルイーターが排泄した金属は意外と市場価値も高くて、同じ量、同じ純度の金属よりも高値だったりすることもある」

「体内で何か付加価値でもつけているんですかね?」

「理屈はわからないが、そうみたいだ。メタルイーターの体内を通った金属は総じて魔力の流れがいいんだ」

「なるほど」


 たしかにそれだと値段は上がるだろうな。

 武器に魔力を流す戦い方はあるのだが、あれは意外と難しい。

 魔力耐性のない武器の場合は、流した魔力に耐えきれずにすぐに壊れてしまう。

 魔力の流路はあるものの、その通り道に過剰な魔力を流してしまっても、同様の現象が起こってしまう。

 つまり、武器に魔力を流すにしても、かなりの調整が必要になってくる。

 そんな中で、魔力の流れがいい金属が現れるとしたら、この戦いをする人にとっては喉から手が出るほど欲しい武器となってくるのだ。

 それは市場価値も上がるだろう。

 しかし、ここで疑問点が……


「いいことづくめの魔物のようですが、なんでクエストが?」

「異常発生だろうな」

「異常発生?」


 ガルドさんの言葉に再び俺は紙に目を落とす。

 すると、たしかに【メタルイーターが異常発生したため討伐してほしい】と書かれていた。

 さて、どれほど異常発生したのだろうか?


「メタルイーターは本来はそこまで繁殖力の高い魔物ではない。せいぜい一つの鉱山に10体いるかいないかだろう。だからこそ、鉱山で働く者にとっては、そこまで気になることではなかった」

「たしかにそこまでいないですね」

「数が少ない時は一部の鉱石しか食べないわけだから、それ以外の部分から採掘すればよかったんだ。だが、異常発生すると……」

「人間が採掘できる場所が減る、ということですね」


 ようやく事情は分かった。

 しかし、個々でさらなる疑問が……


「ですが、メタルイーターは金属の純度を上げるんでしょう? 鉱山で働く人の仕事がなくなってしまう可能性もわかりますが、メタルイーターが増えることで収入が増える可能性があると思いますが?」

「まあ、そう簡単な話ではないようだ。メタルイーターはたしかに金属の純度を上げることはできるようだが、食べたものがすべて排泄されるわけではないようだ」

「……体内に吸収する、ということですか?」

「ああ、そうみたいだ。メタルイーターは食べた金属で自身の皮膚を覆い、ある程度成長したものだとかなりの防御力を誇っているのさ」

「……なるほど。それは強そうな魔物ですね」


 ガルドさんの説明に俺は状況をさらに理解した。

 これはかなり不味い状況なのだろう。


「メタルイーターは本来Dランク程度の魔物だ。性格は温厚なようで、滅多に人を襲うこともないから、鉱山で共生することもできていたわけだ。しかし、異常発生した場合は話が変わる」

「数が増えたことで、凶暴性が現れた、と?」

「まあ、そういうことだ。さらには自身の強さに気付いたのか、人間たちも襲うようになるようだ。そのせいで現在、鉱山は立ち入り禁止になっているようだ。そのせいで仕事ができないと困っている人もいるわけだ」

「そうなるでしょうね」


 鉱山で魔物が暴れれば、そうなるのは必然だ。

 これはすぐにでも対処しないといけない案件だろう。

 しかし、どうしてこんな案件が未だに残っているんだ?

 どれだけ仕事をしていなかったんだろうか、あの馬鹿たちは……


「ちなみに異常発生したメタルイーターは一気にBランクまで危険度が跳ね上がる。というわけで君たちに依頼したいわけだが、受けてくれるかい?」

「俺たちに拒否権があるとでも?」

「いや、拒否権ぐらいはあるだろう? クエストを受けるか受けないかは君たちに判断は委ねられているんだから」

「それぐらいはわかっていますよ。ですが、現状でこのギルドでこの依頼を受けることのできる冒険者は俺たちしかいないでしょ? だったら、俺たちが拒否できるはずないじゃないですか。まあ、拒否するつもりはないですけど……」

「いや、君たちが拒否しても問題はないさ」

「そうなんですか?」


 ガルドさんの言葉に驚いた。

 なんせ、俺たち以外に依頼を受けることが出来ないということは、このクエストはほったらかしになるということだ。

 つまり、この鉱山は大変なことになるわけで……


「そのときは俺が直々に行くだけだからな。良いストレス発散になるわけだ」

「ああ、そういうことか」


 ガルドさんの言いたいことはわかった。

 そういえば、彼も元冒険者だったな。

 そう考えると、俺たち以外にもクエストをこなすことのできる冒険者がいるのか。

 納得する俺にガルドさんの後ろにいたウィズさんが話に入ってきた。


「というわけで、この馬鹿が仕事を放棄する理由を与えないようにこのクエストを受けてくださいますか?」

「わかりましたよ」


 ウィズさんの言葉に俺はあっさり答えた。

 別にその理由がなくても、俺はこの依頼を受けるつもりだった。

 そんな俺の答えにガルドさんは若干肩を落としていた。

 おそらく、本気で行くつもりだったようだ。

 もっと自分の立場を考えようよ。






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