7-1 死んだ社畜は冒険者ギルドに行く
※こちらのミスで本文がプロローグと同じ物になっていました。
すみません。
「おお、ここが冒険者ギルドか……」
俺は目の前にある大きな建物を見て、思わず口に出してしまった。
王都がいくら多くの建物があると言えども、ここまでの建物はそうないからだ。
生徒数及び教員数の合計が1000人を超えている王立学院でもここまでの大きさではない。
おそらく、それ以上の冒険者が登録されているのだろう。
まあ、王立学院は10代前半の学生だけで構成されているのに対し、冒険者は引退するまでいつまでもやることが出来るから数が多くなるのも仕方のないことかもしれない。
さて、どうして俺がこんなところに来ているのかというと、今日は冒険者として登録しに来ているのだ。
王立学院に入学してから二年が経ち、俺は10歳になった。
冒険者として登録することが出来るのは10歳になってからなので、ようやく登録が可能になったのだ。
まあ、それ以前に学長の授業で冒険者のようなことをやってはいたが、それはあくまで学長の手柄となっている。
報酬の一部はしっかりと頂いてはいたけど……
「ようやくグレインと冒険できるのね」
「ああ、楽しみだ」
アリスとティリスが笑顔でそんなことを言ってきた。
彼女たちにとって戦いとは楽しみ、冒険者として魔物たちと戦うことを期待していた。
彼女たちも冒険者登録を今日行う。
彼女たちは12歳ではあるのだが、俺と冒険したいという希望から今日まで登録を延期していたのだ。
10歳になってから必ず登録しないといけないわけではないので、別に構わないのだが、意外と新人冒険者としては珍しい行動だったりする。
やはり子供というのは冒険者に憧れる者が多く、10歳になった時点で登録するものが多いのだ。
「でも、大丈夫かな? 新人冒険者って、先輩冒険者に絡まれたりするんでしょ?」
「それなら大丈夫じゃないかな? 僕たちだってこの二年でかなり強くなったし、こっちにはグレインもいるんだよ?」
レヴィアとシリウスがそんな会話をしていた。
レヴィアの言っていることは学院で広まっている噂の一つである。
たしかにありそうな話ではあるが、実際にそんなことは起こっていないだろうと俺は踏んでいる。
新人をいびるような先輩は大概性格が悪い──そんな人間が連携などが大事になってくる冒険者として活動するなど難しいはずだ。
少なくとも、そんな奴と行動するのは俺だっていやだ。
というわけで、冒険者という業界はそういう奴が淘汰されていると考えているわけだ。
まあ、そいつ自身に才能があれば残る可能性もあるだろうから、一番淘汰されているのは才能のない奴ではあろうが……
「あの……」
「ん? どうしたの、リュコ?」
俺たちがそんな会話をしていると、申し訳なさそうにリュコが話しかけてくる。
そんな彼女の服装はなぜかメイド服である。
なぜそんな格好なのかというと、俺に仕えているメイドの証として普段からメイド服を着用しているそうなのだ。
これもプロ意識というものなのだろうか?
その辺は俺にはよくわからないが、リュコがそれでいいのだったら問題はない。
だが、そんな彼女がなぜか恐縮しているのだ。
「私はメイドですよ? それなのに、どうして冒険者の登録を?」
「それはもちろん、リュコにとって必要なことだからさ」
「私にとって、ですか?」
俺の言葉にリュコは首を傾げる。
どうして必要になるかわからないからだろう。
そんな彼女に俺は説明する。
「ああ。リュコは俺たちが学院を卒業したら、一緒にカルヴァドス男爵領に戻るだろう」
「はい、そうですね」
「そして、カルヴァドス男爵領には王都では考えられないような強い魔物や魔獣がうじゃうじゃといる」
「その通りです」
「つまり、リュコには冒険者として実力をつけ、そんな魔物や魔獣たちを倒せるようになって欲しいわけだ」
「ええっ!?」
俺の説明にリュコが驚く。
まあ、そんなことを言われても驚くわな。
彼女の気持ちもわからないではないが、俺はさらに説明を続ける。
「ちなみにうちの使用人たちはほぼ全員が元冒険者らしい」
「そうなんですか?」
「ああ。父さんが貴族になったときに仲の良かった冒険者がこぞって使用人としてついていったらしいんだ。だから、父さんほどではないにしろ、みんなかなりの実力者らしいぞ」
「それじゃ、サーラさんも?」
俺の説明にリュコの頭の中に一人の先輩メイドが思い浮かべられる。
おっとりとした優しいお姉さん然とした女性で、冒険者という職業からかなり遠い位置にいると思われる。
メイドとしての技能はかなり高いのだが、時折何もないところで転んだりするほどのドジだったりする。
ちなみにそんな彼女はシリウスとアリスの専属メイドなのだが、二人に勉学や戦闘技術以外の様々なことを学んでほしいというアレンの意向からサーラが王都に着いてくることはなかった。
ちなみにどうしてリュコがついてきたのかというと、彼女はメイドとしてはまだ一人前ではないので俺たちが勉強している間もメイドとしての技能を磨くために来ているのだ。
「そうみたいだな。なんでもかつてはすごい魔法使いだったらしいぞ?」
「そうなんですか? なんか信じられないんですけど……」
「俺が見た限りだと、屋敷の中ではエリザベス母さんの次に魔力があるはずだ。少なくとも、クリス母さんは超えているはずだ」
「ええっ!?」
俺の言葉にリュコがものすごく驚いている。
シリウスたちもなぜか驚いていた。
まあ、サーラがそこまですごい魔法使いだとは思ってもいないのは仕方のないことかもしれない。
といっても、その三人の魔力の差はそこまで大きいものではない。
クリスが一番魔力が少ないとは言っても、一番多いエリザベスとの差なんて俺の体感で精々5%ほどなのだ。
あのレベルだと誤差程度の差でしかない。
「まあ、そんなわけだからリュコにも冒険者として実力をつけてもらいたいわけだ。サーラがしているのなら、リュコもしないわけにはいかないよな?」
「……そうですね。わかりました」
俺の説明に納得したのか、リュコは真剣な表情で頷く。
どうやら説明には成功したようだ。
といっても、そこまで難しいミッションだったわけではない。
冒険者という職業は常に死が付きまとう職業であるので、意外と嫌悪感を持っている人間も多い。
王立学院でも冒険者として活動しているのはおそらく半分にも満たないだろう。
貴族が多く在籍している学院では、冒険者という乱暴な職業に就かせたくないと思う親も多くいるのだ。
そんな死が付きまとう冒険者に対してリュコが恐怖を抱いているのなら説得は難しかっただろうが、あいにくとリュコは小さいころから俺という異常な存在を見続けている。
そのため、戦闘に対してのハードルはかなり低く、冒険者に付きまとう死の恐怖もそこまで大きくないようだ。
「じゃあ、行くとするか」
「「「「「おう」」」」」
俺の言葉に全員が返事した。
そして、俺たちは新たな未来へと続く扉を勢いよくくぐった。
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