ロマンティック
「そう言えば...アーレイは?」
しばらく二人共、黙って月夜を眺めていたが、私が口を開いた。
「ボウヤは...私に部屋を追い出されてふて腐れながら散歩でもしてるわよ...無限廊下で」
「アレってやっぱり無限ループみたいな?」
「えぇ。リンはかなり走ったようだけど、カミーユの部屋は、実は近くにあったりするのよ」
遠くにあるように思えても、実は近くにあった。ってよくあるよね。
あの無限ループ、何の意味があるって言うんだ...。
「アレは、自分の目的地が有れば見つける事が出来るわ。でも、目的地がなかったら、ただ其の場所を走り続けるだけの話。面白いでしょ?」
「そう...ですね」
面白いの?
でも、中々興味深い魔法だね。もしくは『獣術』カモしれないけど。
途端に、部屋のドアが勢い良く開き、満面の笑みを浮かべたアーレイが飛び込んで来た。
「アーレイ...!」
「リンーー!! あぁ、元気そうだな。良かった。本当に良かった...」
アーレイは、抱きつくかしないかで、自分と戦っているようだった。理性に逆らって勝手に動こうとする体を押さえつけ、歯を食いしばる。
「ボウヤ...もうリンは大丈夫よ。抱きついても全然構わ...フ、相変わらずね」
アリスが良い終わらないうちに、アーレイは私を強く抱きしめた。覚悟はしていたが、ちょっと吃驚だな。
「リン〜〜、俺すっごい心配したんだぞ?」
「ハイ、すみません」
「アリスにこの部屋来るなって言われたしさ...リンは急に倒れるしさ...震えるしさ...」
「ごめんなさい。色々、思い出しちゃって...」
「まぁ良い。リンにまたこうやって抱きつく事が出来たんだ...」
彼は優しい笑みを浮かべると、私の頭を撫でた。アリスはニヤニヤしている。
「アリス、部屋出ろ」
「まぁ...大胆ね。じゃあリン。楽しんで」
「え、楽しんでって...ちょーー待って!」
アリスはアーレイの言葉を聞き入れ、部屋を出て行った。私はアーレイに掴まれているため、彼女を止める事が出来なかった。
私はため息をつきアーレイを見た。「計画通り...!!」というゲス顔をしている。
「大丈夫だリン。この優男で紳士なアーレイ様は、優しく扱ってやれるから」
「変態紳士の間違いでは?」
「違う。俺は優しくてアブノーマルな紳士だから」
「いや認めてるじゃん」
私は、アーレイとこの美しい月夜を眺めていたい。静寂の闇の中、大好きな人と肩を合わせて眠りに落ちたい。
私でも、そういう乙女チックな夢は見るんです。だって女の子なんだもん。
「わ、私は! アーレイと一緒にお月様を見たいだけだから...」
「お月様...? あぁ、良いぞ。じゃあ『月魔花』でも持って来るかな...」
「『月魔花』?」
全くもって聞いた事のない花だ。獣大陸のモノなのかな?
「あぁ、獣大陸ではな、満月の夜に大好きな人に『月魔花』をあげると、永久に幸せになれるという迷信があるんだ。ただ、『月魔花』はかなり珍しいからな。俺はまだ一度も見た事がない」
「ロマンチックだね〜」
「そうだな。出来れば、お前に何かあげたいモノだけど...生憎持ち合せてないな」
「別に良いよ。私はアーレイと一緒にいられるだけで満足だから」
「...」
アーレイは突然黙ると、何か柔らかいモノで私の口を塞いだ。健全なる13歳にこんな事をするのは、正直犯罪じゃないかな。
まぁ...良いけど。
チュッと音を立てて、アーレイは唇を離した。
「世界中の非リア充が、皆同時に爆ぜろと言った...」
「非リア充て何だ? 爆ぜろ?」
「コッチの話だよ。ったく、私の世界でやったら捕まるぞ青年よ」
「そんなに厳しいのか?」
「厳しいと言うか...男女差別が激しいのかな。男の人が迷子の女の子を保護したりなんてしたら捕まるし、道を聞いただけでも通報されたり? 男には世知辛い世の中だね」
「酷いな...」
ホント、可笑しいのはちょっと所じゃないよね。
アーレイが私の世界に行ったら...って考えてみるけど、何もしないでも、狼の耳とシッポがある時点で捕まるなコレ。
「アーレイ、テラスの床座ろ?」
「え、良いけど...」
私に言われるがままに、私とアーレイは月がよく見えるテラスの床に座った。よし、私のロマンティックを想像を現実にしてやるぜ。
私はアーレイの横に座ると、彼の腕を両手で掴んだ。そして肩に頭をコトンと乗せる。
「り、リン...?」
「良い? コレで...この状態で居させて...」
かなり前に、妄想家の知り合いが言っていたんだ。
「月夜の下で、彼の腕を両手で優しく掴んで肩に頭を乗っけてやれば、相手は絶対にドキュンといっちゃうんだ! もう虜なんだ! くわああぁ、あたしもそんな体験してみたいぜ〜!」
って。
何かちょっと危ない人だったよ。
「リン...良いぞ。お前はホントに可愛いな」
「アーレイ...月が綺麗ですね」
「お、告白か? そうだな。月が綺麗だ。リンも綺麗だ」
「ありがとうアーレイ。フフ...」
何時の間にか私達は、寝入ってしまっていた。
リア充達め、見せつけるな〜!!




