ヤンデレは好きなのだけど
「...リン、城に行ったら、すぐに式を上げよう。あぁ...その前に母上と父上に挨拶してーー」
「何勝手に言ってんの。わ、私は...結婚と...か...は...しない、から!」
「えー...なーんーでーだーよ!っと」
アーレイは、もうXがいないのを良い事に、私を地面に押し倒して来た。だが、忘れないでほしい。結界から出られなくなった方々がいる事を...
『早く此処から出せー』
『そうだそうだー』
『あらまぁ...ボウヤ、中々強引じゃないの』
『兄上! 頑張れ!』
『良いですねー純愛ですねー。でも、何でしょうかこの込み上げる熱いものは...』
あっちサイドは、わーわー喚いていた。だが、それはあおりにしかならなかった。
「リ〜ン? どうしてよそ見してるの? 俺だけを見てよ」
「え...」
「俺以外を見るのなら...目ぇ潰すよ? 俺以外を見るのなら、そんな目はいらないよね?」
「ヒッ...」
私は基本的に、ヤンデレは好きです。でもね、現実にはいなくて良いんだよ。怖いからね。しかも、私は重い愛の言葉とかヤンデレの言葉とか、読んだり聞いたりすると、腹痛がする体質だから。
ちなみに作者もそうらしい。
もしかすると、前世でヤンデレとかにお腹刺されて死んだのかな...。
「あ、アーレイ...? ちょっと上から退こうかね。うん、あの方々が出たがっておりますからね」
「い・や・だ! 何で退かなきゃならないんだ。俺はお前を永遠に組み伏せて泣かしたい」
「うん怖いね。...あ、そうだ。ちょっと聞きたい事あるんだけど良い?」
「え...まぁリンの頼みなら良いけどさ」
アーレイは私を本能の赴くままに愛でたいらしく、ムスッと不機嫌そうな顔で私の上に覆い被さった。
「この体勢でなら良い」
「...はいはい。分かりましたよーだ。それでね、さっきさ、アーレイどうやって私に抱きついたの?」
「え?」
「いや...アーレイね、結界を周りに張られてたの。もの凄く厄介なやつ。それを、どうやって退けたのかなーと」
「...俺の周り、結界なんてなかったぞ?」
「へ?」
「「...」」
うん、まぁ良いや。深くはツッコまないよ。
でもアーレイ。コッソリ人の胸に顔を埋めてるとか、変態のする事だからね。
「アーレイ〜」
「何? もう一度キスしてほしいのか?」
「いや、違う。好い加減退いてください。じゃないと...嫌いになっちゃうかも」
「...それは、止めろ」
「なら退け。好い加減邪魔だ」
無理矢理アーレイを退かせた私は、結界を解除してため息をついた。さっきのは、シッカリを皆さんの脳裏に刻み込まれている。しばらく嬲られそうだ。
アーレイは機嫌が悪そうに私の頬を触っていた。
「おい...なぁ...」
「痛いよアーレイ」
「...(ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに)」
私は何処の弄られキャラだ...兎も角、まずはこの空と森。
一体何の魔法を使ったかは分からないけど...まぁ一先ず解除法を探すしかないな。
「ねぇアーレイ、あれ...何でああなったと思う?」
「え...”あれ”って、空とか森の事か? あれは、多分『精術』だな。知ってるか? 闇の精霊が使う魔法だと思うんだけど...」
「『精術』か...そんなのあるんだね」
悲しい事に、私のこの世界の知識は限られてます。アーレイさん教えてください。
「精霊の種類は分かるよな?」
「うん、火、水、雷、風、雪、光、闇でしょ?」
「そうだ。それで、精霊の種類は七つあるから、あいつらの使う魔法は『精霊の七魔法』と呼ばれている。
森にうようよしている毒みたいなのは、闇の精霊の『毒』っていう魔法だな。空も多分、そんな感じだと思う」
「へー...アーレイって物知りだね!」
「っ...ま、まぁ、王子だからな。隣の大陸の事くらいは、把握してる」
「凄い! もっと教えてね!」
「あぁ...」
**
結局、「精術」は精霊しか解けないという事が分かった。残念ながら、私に精術は使えないし他の人達も純人間か純獣人の方々ばかりだから、「精術」は使えない。
此処は一先ず、[放置]という結論が出た。
「これで良いの...?」
「仕方無いだろ。俺等にはどうしようもないんだからな」
「うぅ...」
しょうがないな...。
とりあえず私は黙り込み、しばらく周りの景色を見ていた。
遺跡探索は終わりとし、既に私達は獣王城を目指している状態だった。遺跡へ行った時とは雰囲気は全く違い、何だか薄暗い、どんよりとしたお化け屋敷のようだった。
紫色の毒が木から大量に垂れ下がり、不気味な音が響いていた。
私は怖くてつい、アーレイの腕にしがみついていた。
「リン、もうちょっと...もうちょっと...腕、キツくしても良いぞ? 良いからな?」
「あ...うん」
「良いからな?!(もう少しで当たる! もう少しで!)」
「...」
心の声が...丸聞こえだ。この変態め。
森の中は、本当に怖い。お化けとか出ないと分かっていても、やっぱり怖い。しばらくみんな、アリスを先頭に無言で歩いていた。すると、突然辺りが真っ暗になった。
「キャアァァ!」
あまりの事に驚き、叫んでアーレイに抱きついてしまった。すると、彼は優しく言った。
「リン、大丈夫だ。俺がいるから...(よし! 当たってる! 凄く当たってる!!)」
「うぅ...」
「アリス、明かりをつけてくれ」
「えぇ...『鬼火』」
アリスが唱えると、辺り一帯は鬼火に照らされた。途端にみんなの顔が恐ろしく見える。
私は息を飲んで、アーレイにさらにしがみついた。すると、マギは楽しそうに言う。
「わー、兄上よかったですね〜」
「あぁ、そうだな...って、な、何言ってんだよ!」
「リン...大丈夫? 震えてるみたいだけど...」
ナルが優しく問いかける。ガディとアテルは、周りを警戒しながら見ている。Xが来ないか、心配してる...のかな?
正直! 私は怖いものが大嫌いなんだよ! あ、コラそこのチートのクセにwwwって言ってる奴、表出やがれ。
「だ、だだだだ...だ、いじょ...うぶ」
「いや、見るからに大丈夫じゃないから。アーレイ王子、ちゃんと見ていてくださいね」
「分かっている。お前なんかに言われなくても...」
アーレイは私の頭を撫でながら不機嫌そうに言う。すると、アリスは訝し気な目でアーレイを見ながらつぶやく。
「ボウヤ...五歳下の少女に、完全に欲情しちゃってるわね...愛欲も、ほどほどにね?」
「っ...はぁ。お前に言われたくはないな」




