生徒会長なんだけど
「よし、行くか」
私は用意されたカバンに必要な荷物を詰め込んだ。ちなみに、このカバンの中には「永久拡大魔法」を投与したからどんなものでも入れる事が出来る。
私達2−1の生徒達が勇者として、クラスみんなで召喚されてから一ヶ月。
ちなみに、私達を召喚した人達によると、この世界の名前は『サイトリール』というらしい。勿論、剣と魔法のファンタジーの世界。そして、私達を召喚した国は「ラリィ国」というらしい。
月日や時間は地球と一緒だった。
当たり前の事だけど、勇者としては戦う術を持たなくてはならないので、訓練も行われた。
私は指導をしてくださる騎士団の方々からこれは千年に一度の才能かもしれんと褒められていたが、正直体力はあまりないのでキツイ。
騎士団の魔法を使う人達は、私の使う魔法に歓喜していた。こんな魔法見た事ないーーと。しかも、碌に教えても居ないのに魔法の基本から上級までをほぼ習得した私は、「天才」と呼ばれた。
「やっぱり会長だね。日本でも異世界でも成績優秀なのか...」
「くっ、これは勝てると思っていたのに!」
「おい、そんな事言ったら王子にしばかれるぞ」
王子ーーというのは、「ラリィ国」第一王子のシューベルト・サタル・ラリィ様だ。彼はことごとく私につきまとって来る過保護な人だ。
「お前は...魔王退治になんて行くべきじゃない。女が戦場に出るなんて...絶対に許されない! そうだ...」
とか仰る。それなら他の女子生徒はどうなんですかと言いたくなりますよ王子。そういえば騎士団の人達が、
「リンは良い奴だ」
「そうだな。性格も容姿も最高レベルだな」
「頭も良いぞ? うちの国の大図書館の本を全て記憶した」
「すげぇな...」
「なぁ、俺リンって子見た事ないんだけど、どんな人?」
「えっとな...黒髪黒目の純異世界人で、容姿は...神に最上の愛情を注がれて作られたとしか言いようがないな」
「そういえばこの間、王子が言い寄っているのを見かけたぜ?」
「嘘だろ? 俺のリンちゃんがぁ...」
「おめぇのじゃねぇだろ」
とか話していたらしい。まぁ知らんけど。
でも、王子に言い寄られていたのは事実だった。
「俺は...今まで人には興味がなかった。だが、お前に会って変わった。リン、俺と結婚しろ」
「...は?」
うん、月の光に照らされるイケメンが恐かったから、気絶させて逃げた。
そして今日。私は旅に出ようと思う。今宵、この三日月の日に。
「手紙は...一応残したね」
私は、自分の部屋(私だけ何故か一人部屋)のツクエの上に、手紙を置いた。旅立ちは勿論一人だ。理由は三つほどある。
一つは、私は戦いたくなかったからだ。二つは、学級委員徳永くんならみんなをまとめてくれると信じているからだ。そして最後は...
「私がチート過ぎるって事は、内緒にしとかないといけないしね」
私のステータスは、
『種族』人間(+神のハーフ)
『年齢』13
『称号』チート過ぎる奴、魔王
『魔力』無制限
『属性』全属性
『スキル』魅了、洗脳、歌魔法、魔力解放、予知能力ーーー
『ユニークスキル』魔法作成
となっていたワケであるが...「スキル」は多すぎて最後まで表示されないし、まず称号に「魔王」がある。何故かは全くもって不明だ。
この事がバレないようにする為にも、私は旅に出る。
とりあえず、私の一人旅の目的は、魔王に会う事だ。学級委員だからと情報を多く与えられ、ましてやファンタジー好きの私は、生徒達より遥かにこの世界の事に詳しかった。
まず、「サイトリール」は四つの大陸に分けられる。『人大陸』『精大陸』『獣大陸』『魔大陸』だ。
「人大陸」は、説明するまでもなく人間の住む大陸。「精大陸」は精霊や妖精などの霊的なものが住む大陸。この大陸には人間は立ち入る事は出来ない。「獣大陸」は獣人も住む大陸。あのケモミミもふもふ天国の場所だ。「魔大陸」は魔族ーーそして魔王が住む大陸。
私が目指すのは「魔大陸」。そして、戦争をしているのは「人大陸」と「魔大陸」のもの達だ。他の大陸のもの達は、巻き込まれまいと身を引いている。
「サイトリール」は四つの大陸で成り立っている。そして、それぞれの大陸の行き来には船が行かなければならない。勿論「人大陸」から「魔大陸」に船は出ていない。
今「人大陸」が行ける大陸は、「獣大陸」のみだ。「精大陸」には「獣大陸」からしか船は出されていない。そして、「魔大陸」には「精大陸」経由でしか行けない状態になっている。つまり、私は全大陸を回る必要があるという事だ。
普通に船借りて、そのまま直行すれば良いじゃんと言うそこの君。一応私は学級委員だからそんな密入国みたいな事はしません。キチンと行きます。それに、他の大陸にも回ってみたかったから良い機会ね。
ただ、人間は戦争を避けるために大陸の行き来が禁じられてる。他の大陸に入れるかは分からないけど、もし無理だったら仕方無い。最終手段を使うから。
「さぁ、行こう」
とりあえず、一人の人間としての一線は越えずに異世界での旅を楽しむ事にする。