武器
どうにか城を誰にも知られずに抜け出した私。でも、正直これからどうしようかーーという所だった。見つからないようにと夜に出掛けたが、キチンと下調べをしておくのを忘れた。
まぁ日本でもほぼ無計画で進めて成功してたから良いけど、異世界ではそうはいかないと思うしなぁ...。
「う〜ん...一応お金あるけど、武器がなぁ...」
私は、腰に携えられた剣を見た。一応これは魔剣だが、自分の魔力と実力にあっていない事が分かる。折角王子から貰った国宝だが、力に合わないようじゃ使い物にならない。
とりあえず、強化してもらおう。
「あの、この近くに武器屋さんってないですか?」
私は、粘土作りの家の前で果物を売っている元気そうなおばさんに聞いた。
「ん? 嬢ちゃんは武器が欲しいのかい? それなら、うちの鍛冶屋に寄って来な。息子は良い剣を作るし、元々あるやつだって数十倍強くしてくれるんだよ?」
「そうなんですか? 是非、お会いしたいです」
「そうかそうか。じゃあ来な」
生徒会長が警戒心まるでゼロじゃねぇかとか言わないでください。とりあえず私は、今晩中にこの国からおさらばしたい。明日になればきっと、私を探すための追ってがやってくる。だから極力早くしたいんだ。
まぁ、私は剣なしでも一応魔法で戦えるけど、やっぱ剣の方が戦いやすいというか...うん。ファンタジーだよね中二病感満載だよね。
おばさんは、粘土の家のドアを開けると、手招きをした。私はそれに従って家の中に入って行く。正直、そこは家とは言えなかった。
台がたくさん置いてあって、それ以外には何もなく、日用品などは何処にも見当たらない。
「えっと...御宅ですか?」
「え? これがあたしの家だって? こんなぼろっちぃのに住むわけないだろう? 此処は”裏”鍛冶屋さ。知る人ぞ知る最高の店!」
「おぉ...」
「おい、サット出て来な。この嬢ちゃんは悪い奴じゃねぇと思うから」
お、おばさん? 口調が崩れてますが...。
「私の事はサリーと呼びな。あと、おばさんじゃねぇぞ? これでもピッチピチの43歳だぞ?」
いやおばさんですよそれ。
「嬢ちゃんの名前は?」
「えっと...り、リンカです」
「ふ〜ん、リンカか。良い名前だな」
とりあえず、追ってが来た時の為に偽名で自己紹介をした。私が曖昧な笑みを浮かべていると、一つの台の下から目付きの悪い男がヌッと出て来た。
「何だよサリー姉さん。俺昼寝してたんだけど?」
「あぁリンカ、こいつがあたしの愚子のサットさ」
「息子じゃねぇわ弟だわ。ったく...リンカっつたか? 俺はサットだ」
「リンカです...」
私は、サットとサリーを見比べた。姉弟にしか見えない。どういう経緯でこの方を産んだのですか貴女は...。
「えっとな、実はこの子、あたしの義理の子でな」
「そこまで話す必要性ゼロ以下だろ!」
「うん、まぁ気にしないでくれ」
「気にするわボケ!」
この壮絶なツッコミが私的には好きだった。まぁそれはさておきだ。私は青白く光剣を取り出し、台に乗せた。
「これを強化してもらえませんか? 無限の魔力に耐えられるぐらいに」
「こ、これって...国宝級宝刀の『青白剣』じゃねぇか!」
「『青白剣』?」
「あぁそうだよ! 一体何処でそれを手に入れた?!」
「貰いました。王子に。というか、客の事情に首突っ込まないでください! さっさと強化してください!」
「うぐ...」
サットは、少しダメージを受けたようだ。剣を持つと、ブツブツ悪態を付きながら強化をし始めた。剣は力強く光ったり光が消えたり煙が出たりしていた。
「何でぇ...俺は入手方法を聞きたかっただけなのに...何で怒られなきゃなんないんだよぉ...」
「...」
な、何かごめんなさい...。
「大丈夫さ。あたしの息子はこう見えても精神的には図太いからな。リンカみたいな可愛い嬢ちゃんに...あ、これ無理だわ。うちの息子可愛い子からの怒鳴りが一番ダメージ大きいんだったわ」
「...」
「ま、今日はサービスしてあげても良いかなぁ? ね、サット」
「あ?」
さ、サット? 目の下にクマが出来てますよ? 大丈夫かなぁ?
「心配すんな。これはな、サットのユニークスキル『武器強化・作成』って奴の所為なんだ」
「え、でも『武器強化・作成』は普通のスキルですよ?」
「あ、間違えた。『武器強化・作成 新』な? これは代償があってな。もの凄く強く出来たりするんだけど、使うと目の下にクマが出来たり欠伸が出たりと寝不足状態になるんだ。まぁ、ユニークスキルは大体何かしらの『代償』があるそうだから仕方無いけどな」
だが、私がユニークスキル「魔法作成」を使った時は、なんの変化もなかった。もしかしたら、私の周りに居る人が影響を受けたのかもしれない。まぁ良いか。それは後々考えるとして。
「...出来た。というか、何でリンカは無限の魔力に耐えられるようにしたいわけ?」
サットは不満そうに私を見る。正直、答える義務はゼロ以下だけど教えてやろう。私はサットの耳元に口を近づけた。
「まぁ、私が魔力無限だからでもあるかな?」
「え...」
「内緒ね?」
とりあえず、強化代1万イェンを払った私は、剣をまじまじと見つめた。
「えっと...何処が変わったんですか?」
「ん? まぁそれは実践で試すと良いよ。正直、あたしの息子の力はどうも信用ならんからな〜」
「そうなんですか?」
「おうよ。『ユニークスキル』なんて、他に持ってる人居ないからな〜」
「へ、へぇ〜そうなんですか〜!」
我ながら態とらし過ぎる態度だったが、サリーは優しく微笑んでくれた。
「なぁリンカ、これからどうするんだ?」
「あ、私は...今日中にはこの国を出なくてはならなくて...」
「何でだ?」
「そ、それは...えっと...」
「ちなみにあてはあるのか? この国を出てからの」
「えっと...ないです」
そういえば、その辺りはよく考えていなかった。気のむくままに今まで生活していたので、碌に計画など立てない人です私は。
まぁ、お金あるし冒険者にでもなれば良いから特に考えてはなかった。
あ、ちなみに、この世界には「冒険者ギルド」「魔術師ギルド」の2つがある。説明はあんまりいらないよね。とりあえず、登録して依頼受けてお金を稼げば良いだけの話。
「じゃあ丁度良いじゃん姉ちゃん」
「おうよ息子よ」
「な、何がですか?」
「実はな、私達、もうこの国から出て旅しようと思ってたんだ」
通りで荷物が少ないわけだ。
「さっきまで家の前にあった果物は、特別サービスって奴。好きなだけ持ってって良いんだ。結構売れ残っちゃったからね〜。もう賞味期限ギリギリさ」
「はぁ...」
皆さん! 駄目ですよあの果物貰っちゃ!! 常温状態で賞味期限ギリギリって危ない。どうしてそんなもの売ってるんですかサリーさん...。
「ちなみに、どうして旅に?」
「元々さ、あたし達は旅に出てみたかったんだ。裏武器屋やってたのも、こまめに果物売ってたのもその資金稼ぎの為。冒険者としても勿論稼いでた。今ようやく貯まったのさ」
「旅に目的は...」
「ないな。あ、そういえばリンカは移動手段とかあるのか?」
「ないです」
私のユニークスキル「魔法作成」は、まだ紹介さえはしていないが、とても強力なものだ。勿論「転移魔法」も自分特有のものを作ったが、一度行った所にしか行けないという欠点があった。
「それなら、あたし等の馬車に乗って行くか?」
「え、良いんですか?!」
「あたぼうよ。ちゃんと乗せてってやるからな!」




