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~第八章~

「ノンマルタス一族の髪は青みがかった銀髪。碧い髪は王家の血を引く証だ。そしてノンマルタスの血はノンマルタス同士でないと継がれない。混血だったカイやセレスが碧い髪なのは奇跡に近い確立なんだ。事実、カイからセレスまでノンマルタスの血を発現させた者は一人もいない。潜在的に持っていた者の存在を否定することは出来ないが……」

「…………」


呆然としている私に


「信じられないって顔だな」

「いや、君の話を疑ってる訳じゃなくて。その何と言うか、君やセレスは本当に海でも生きていけるのか?」

「ああ。尤も、セレスのノンマルタスの血は目覚めてないけどな。ノンマルタスの血はカイのように死の危機に直面するか、ある一定の訓練を受けなければ目覚めない」

「それじゃあ、君は?」

「俺が水の中で呼吸出来る事を証明すれば、信じるか?」

「えっ? いや、それじゃあ~ノンマルタスが並外れた身体能力を持ってるって言うんなら、これで手合わせ願おうか」


 私は剣には自信があった。

 私の父オルソセラス候はハウライト一の剣士で、私の剣は父の直伝だった。

 剣の腕前だけは、三人の兄たちにも引けは取らなかった。


 セレスとも何度か手合わせをした事がある。

 優しげな面立ちに似合わず、流石一族を荷う族長だけあって剣の腕も確かだったが、シェルのそれは遥かに一線を画していた。



    挿絵(By みてみん)



 勝負は一瞬だった──


 私は何が起こったのかすら理解出来ず、気がつけば喉元に剣を突きつけられていた。


「……これで分かったろう? 動体視力も反射神経も根本的に違う。陸の人間はノンマルタスには絶対に勝てない!」


 私はその時初めて、かつてのアクアオーラの人々がノンマルタスに“脅威”しか感じなかったというシェルの言葉が理解出来た気がした。

 もし最初にシェルと敵として出会ったなら、私はシェルに“恐怖”しか感じなかっただろう。


 ──人は己以上の力を持つ者の存在を認めない!──


 だが、アクアオーラの人々にとってカイが特別だったように、私もまたシェルに恐怖とは明らかに違う感情を抱いていた。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「血が出てる。……大丈夫か?」


 私は腕に擦り傷を負っていた。


「あ、ああ。かすり傷だ」


 シェルは自分の上着の袖口を裂いて私の腕に巻いてくれた。


 へえ~優しいところもあるんだな……と感激しながら嬉しそうに見ていると、シェルは「何だよ!」という顔をしていたが「そう言えば、セレスも同じところに傷があるな」とポツリと言った。


「崖の上に咲いてる花を採ろうとして崖から滑り落ちた時に出来た傷だ」

「へえ~」


 私は照れ隠しにシェルが話題を変えようとしているんだと思った。

 それにしても……


 何でもよく知ってるなあ~。

 まあ、俺の事も最初から知ってたみたいだしなあ~。


 シェルの情報網に感心しながら、私はその時ふと自分の使命を思い出した。

 海に流されたシェルがノンマルタスに助けられ、ノンマルタスに育てられた事は分かった。

 私の最大の目的はシェルがこの島に帰って来た真意を聞き出す事。


 私は意を決してシェルに


「それで、君がこの島に帰って来た目的は何なんだ? 何を見極めて(・・・・)、何を決断する(・・・・)のか、それが知りたいんだが……」


 その途端、シェルの態度が硬くなった。


「そんな事、あんたには関係ないだろう!?」

「た、確かに俺は部外者だが……。君が、君を捨てた一族を憎んでる気持ちも分かる! 分かるが、セレスには関係ない事だろう? セレスは唯一の肉親である君といがみ合いたくはないんだ。君さえセレスと……」


 私は完全にセレス擁護の立場に立っていた。

 それは二人が和解してくれれば一番いいと思ってのことだったが……


「利いた風な口をきくな! あんたに俺の何が分かる!! 帰れ! もう二度と来るなっ!!」


 完全な拒絶だった。


 物語の中でオニキスとシェルが剣で戦ったので、それに因んでちょこっと裏話を。

 オニキスはイラストを見て頂けたら分かると思いますが右利きです。

 でもシェルは左利きなんですよね。ちなみにセレスは右利きです。

 双子の兄弟で利き腕が違う設定にしたのは、実はカイが両利きだからなんですね。

 カイはどちらかと言えば右利きだったんですが左腕も使えたので、ノンマルタスとの戦いで右腕が不自由になった後は左腕の戦士として戦ってました。

 勿論右腕と同じように戦う為にかなり訓練したんですけどね。

 関係ないですけど、うちの子供たちも長男が右利きで次男は左利きです。


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