【おまけ】~もう一つの十三章~
これは、「ノンマルタス伝説」~第十三章~のボツになったエピソードです。
この十三章が本編で唯一、セレスとシェルが会話する話なんですが……。
セレスたちを逃がして(神殿に行かせて)、自分はクンツァイトの足止めに向かおうとしたシェルを、セレスが引き留めようとしますが、それをオニキスが止めてしまうので、その後の会話が途切れちゃったんですよね。
本来なら、こんな会話をしてた筈なんですが、今回はオニキスに「セレスを止めないでね」とお願いしながら書きました。
「シェル、待ってっ!」
セレスは走り去ろうとするシェルに追い縋って、彼の手首を掴んだ。
「一つだけ、聞いてもいいですか?」
「時間がない! 後にし……」
セレスの手を振り解きながら、そう言おうとしたシェルの言葉を遮るように「手間は取らせません!」セレスは強い口調でそう言った。
普段の穏やかな彼とは打って変った鬼気迫る面持ちに、シェルは一瞬! 言葉を失った。
「あの時――クンツァイトの屋敷からの帰り道、落石事故に遭った父を。カルセドニーを助けてくれたのは君ですか?」
「……っ!!」
予期せぬセレスの問いにシェルは戸惑いを隠せない。
「答えて下さい! 君なんですよね!?」
「そんな事を、今更聞いてどうする?」
シェルは感情を押し殺そうと努めたが、想定外の事態に己の動揺を隠しきる事が出来なかった。
(仮面が、被れない!?)
そんなシェルの想いを知ってか知らずか、セレスは
「大切な事なんです。花を! 母の好きだった花を摘んでくれたのも君ですよね?」
「…………」
「君はずっとぼくを、ぼくたちを見守っていてくれた。……そうですよね!?」
矢継ぎ早にシェルに疑問を投げかけた。
それは、彼がずっと心の奥底に封じ込めていた想い。
「……だったとしたら、どうなんだ?」
シェルは辛うじて、そう言葉を紡ぎ出した。
(それで俺の罪が軽減される訳じゃない。俺の使命は、どちらに転んでもお前たちを苦しめる事にしかならない。俺の存在が許される訳じゃないんだ!)
「ぼくは、君に謝りたくて。そうじゃないと思いながら、君を疑う気持ちを拭い去る事が出来なかった。君を信じたいと思えば思うほど、そうじゃなかった時の事を考えると、ぼくは……。自分が傷つくのが怖くてっ! 君に恨まれてるって思いたくなくて!!」
(何を言ってるんだ、ぼくは? 時間がないのに! 今はこんなとりとめのない話をしている場合じゃないのに! 一つだけって約束した筈なのに! でも止められない! やっと、君と話せた。このまま君と別れたくない。離れたら、もう二度と会えなくなる気がして、怖いんだ!!)
上手く言葉には出来なくても、セレスの想いは充分すぎるほどシェルに伝わっていた。
けれど……
「謝る必要なんかない。俺はお前を恨んだ事なんて一度もない。寧ろ、恨まれるべきは俺の方なんだ」
「えっ!?」
「時間がない! もう、俺は行く!」
そう言いながらシェルはセレスの身体をオニキスの方に思いっきり突き飛ばした。
そして、そのまま海に向かって走り出す。
「シェルっ!!」
セレスの呼び止める声に、シェルはその場で立ち止ったが
「そしたら、何もかも話すから。……だから、神殿で待っていてくれ!」
そう言い残すとそのまま走り去った。彼はもう、振り向かなかった。
「シェル……」
呆然と立ち尽くすセレスに
「セレス! ここはシェルの言う通りにした方がいい。あいつなら大丈夫だ。シェルは強い。俺たちが居た方が却って足手まといになる」
(足手まとい? ぼくたちが居ない方が、シェルは思う存分戦える? ぼくは、君の力にはなれないの、か!?)
セレスは何も出来ない悔しさに、思わず拳を握りしめた。
「…………分かりました。シェルの言うように“森”に行きましょう!」
(シェル、約束だよ。……待っているから! 必ず帰って来て下さい、ぼくの処へ。ぼくは君に……)
「ノンマルタス伝説」本編、無事に完結致しました。
ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
感謝でございます。
次回からは読者様のご要望で、作者自身が二次創作した「Labrys」を連載させて頂こうと思っています。
この作品には一部R18が含まれますので「ムーンライトノベルズ」での連載となります。
18歳未満の読者様に読んで頂けないのは本当に残念ですが、「ムーンライトノベルズ」に足をお運び頂けましたら幸いでございます。(*^-^*)




