EP 3
魔将機・襲撃!
――平和な午後のオフィス街に、ドスの利いた電子音が響き渡った。
「ワレ、場所代はきっちり払ってもらうでぇ……ギギッ!」
新宿の歌舞伎町。突如として出現した異空間の門から、三体の魔将機が姿を現した。
だが、その姿はこれまでのバケモノとは明らかに異なっていた。
全身が黒光りするタングステン合金の「スーツ」のような装甲に包まれ、頭部にはサングラスを模した赤いセンサー。右腕には巨大なドス型の高周波ブレード、左腕にはサブマシンガンのようなガトリング砲を備えている。
通称、『極道機・若頭級』。
デュアダロスの邪気に当てられ、任侠の魂を埋め込まれた新型の魔将機たちだ。
「おい、人間ども。ワシらの『親分』がお冠なんじゃ。とりあえず、この街の酒とツマミを全部差し出さんかい!」
『……玲王。あれ、完全にデュアダロス様の手下だぞ! 喋り方までうつってやがる!』
俺の脳内で、ガオンが怯えたような声を上げた。
「あぁ、解析するまでもないな。マナの波形が完全に『広島弁』でデコードされてる」
俺はオフィスの自席で、ノートPCを叩きながら溜め息をついた。
周囲の社員たちが悲鳴を上げて避難する中、俺のスマホが激しく振動する。発信者は――若林幸隆。
『百夜くん、ニュースは見たかね? 歌舞伎町がえらいことになっとる。私の知り合いの焼肉屋がピンチなんだ』
「幹事長、話が早いですね。……『特急迎撃権』、使わせてもらいますよ」
『許可は出しておいた。地下駐車場に「私の趣味」を置いてある。好きに使いなさい』
電話が切れると同時に、俺はリュックを掴んで走り出した。
***
地下駐車場。
そこには、一台の漆黒の大型バイクが鎮座していた。カワサキ・Z1。若林が趣味でレストアし、さらに俺がAI制御とマナ・スラスターを極秘に組み込んだカスタムマシンだ。
「……行くぞ、ガオン」
俺がバイクに跨り、セルを回す。
ドォォォォォンッ!!
腹に響くような力強い排気音。
『よっしゃあ! 玲王、飛ばせ! 奴らにスジの通し方を教えてやる!』
俺はアクセルを全開にした。
街中の信号機をAIで一斉に「青」に書き換え、法廷速度を無視した『国家公認』の爆走を開始する。
新宿までの渋滞は、若林が裏で手配した公安の車両が瞬時に道を切り開いていく。
「ターゲット確認。歌舞伎町交差点――デバッグ開始だ!」
俺は走行中のバイクから跳躍した。
空中でノートPCをスワイプし、四神たちの実体化プロトコルを起動する。
『システム・フル稼働! 聖獣展開!』
バサァッ!と舞い降りた朱雀の背中に飛び乗り、俺は眼下の極道機たちを見下ろした。
すでに白虎と青龍が着地し、歌舞伎町のど真ん中で睨み合いを始めている。
「……あ、あの人たちの部下だ。どうしよう、アタシ、怒られるの怖いんだけど……!」
白虎が耳をヘニャリと下げて震えている。
「落ち着け。あいつらはただのプログラムの塊だ。……お前たちの『親分』への恐怖心、俺が最適化して『闘争心』に上書きしてやる」
俺は空中でタイピングを開始した。
四神たちのマナ回路に、俺の冷徹なAI演算を直結させる。
「白虎、青龍、玄武! 手加減なしで行くぞ。……あいつらを倒さないと、俺の今日のディナーの予約がキャンセルになっちまうんだ!」
『『『了解!!』』』
恐怖を食い破るように、四神たちが咆哮を上げる。
ネオン煌めく歌舞伎町を舞台に、インテリヤクザ邪神の尖兵と、甘党エンジニア率いる聖獣たちの、仁義なき戦いの火蓋が切って落とされた。




