11⭐︎箱推しアイドルの出演番組は、出来る限りリアタイで鑑賞します。
「みなさんこんばんは!ハーモニースタンド、今夜も一時間生放送でお送りします。最初のゲストは、今年十周年を迎え、全国ツアーを控えているボーイズグループ、Tears of Stardustです!どうぞ!!」
司会者から声高々に紹介され、照明が暗転。曲のイントロが流れると黄色い歓声が湧き上がるが、スポットライトが一人を照らすと、静寂に。歌い出しは彗人。次のスポットライトは光里。その次は煌、最後は流星。一人ずつスポットライトに照らされて、それぞれのソロを歌い上げると、曲調と照明がガラリと変わり、アップテンポのダンスナンバーに。最新曲を歌い上げた四人に、最後は拍手と歓声の嵐。今回出ている音楽番組は、何十年も続いている長寿番組。次の準備をしている間、出番を待っているか終わっているアーティスト達が、順番に司会者とのトークを繰り広げる。
「流星!!お前ミスりまくりやないかっ!」
「えー、うまく誤魔化せたと思ったんだけどなぁ。今回のダンスむずいんだよーぅ。」
セット裏に下がってすぐ、流星のミスを叱る煌。
「確かに、今回のダンスはなかなか…おじさんついていくのに精一杯。」
「え、光里さんその風貌でおじさんってワード…似合わなすぎて面白い。」
水を飲みながら息を整える光里の後ろで、笑いのツボに入る彗人。
ヘアセットとメイクを直してもらい、スタッフに案内されて表舞台へ。
「Tears of Stardustのみなさん、お疲れ様でした!オープニングアクト、素晴らしかったです!」
「どーもー。」
「今回の新曲は、作詞作曲振付全て、メンバーのみなさんでプロデュースされたとか。」
「そうです。作詞は、僕と流星が。流星は、主にラップ部分ですが。」
「作曲は俺です。振り付けはもちろん…」
「俺だ!!」
「リーダー前のめりすぎ。」
曲への思いを語ったり、視聴者からの質問に答えたりしていると、次の出演者の準備が完了→パフォーマンス→再びトーク、という流れを繰り返していく。自分の出番が終わっても、番組の最後までひな壇に座って、今旬の歌手やグループ、バンドのパフォーマンスを見ることができるので、ハーモニースタンドに呼ばれて断るアーティストなどいない。他のアーティストと交流が出来るのもいい。一石三鳥以上の価値がある。
生放送が終わり、楽屋に戻る途中、ハーモニースタンドの司会者、牧菜々子アナウンサーが四人を呼び止めた。
「番組内では触れなかったのですが…伊月さん、これどうぞ!!」
なかなかに豪勢な花束を差し出される。"happy wedding ハーモニースタンドスタッフ一同"というメッセージカード付き。
「ご結婚、おめでとうございます!」
「ありがとうございます。」
彗人の王子スマイルが輝くと、辺りは神々しさで浄化されているように見える。
「あれ?いっくんもう籍入れたんだっけ?」
「うん、パーティーの次の日の夜。言ってなかったか?」
「聞いてないよーっ!」
「いや言ってたよ、流星がちゃんと聞いてなかったんでしょ。」
「新曲のダンス練習で必死だったもんなぁ?」
四人のやり取りを目の前で見ながら、菜々子は心の中で『ごちそうさまです!』とよだれを垂らしていた。ハーモニースタンドの司会者に抜擢されてから三年、様々なアーティストと出会い、眼福だし音楽に対する知識は増えるし…なんていいこと尽くし!!
「またの出演をお待ちしていますね。」
「ぜひ!」
今夜もいいお酒が飲めるぜ、と、心の中のよだれを拭う菜々子であった。
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さて、こちらは奏と柚月。穂坂家のテレビ前にて、推しグッズ両手にハーモニースタンドを見ていた二人。
「柚月。」
「かなちゃん。」
「新曲、やばかったね。」
「うん。やばすぎたね。」
「最初一人ひとりのソロから始まって、ゆっくりバラードかと思わせといて、バチバチのダンスナンバー……え、死!!!!」
「伊月くん今日も神々しかった……!ねぇかなちゃん!!あれあたしの旦那!!主人!!」
「「やばばばばばばば!!!!」」
ハモりバグ星人、二名。そんなわけわからん星人達を横目に、イケメンオネェは調理中。最近、穂坂家にて、T//Sが出演する音楽番組視聴会が開催されている。参加者は、箱推しガール&伊月推し(てゆーか嫁)ガールの二名。調理係一名。
「歌い出しの伊月くんやばくない!?歌声に透明感ありすぎじゃない!?」
「とぅるとぅるの透明感!!その後の光里さんの艶っぽい声も良すぎる!!」
「てか、煌くんって筋トレ脳筋かと思うのに歌上手いって反則だよね!?」
「んでもってりゅーちゃんの顔面綺麗すぎた…歌もしかり…。」
「「かーらーのダンスーーー!!」」
饒舌早口ハモりバグ星人、爆誕。このわちゃわちゃをスルー出来る亜弥は、何気にすごいのかもしれない。淡々と料理を運び、自分は缶ビールをあける。
「二人とも、ほんっとーに好きね、T//S。」
「「好きぃっ!!」」
「さっきからハモりすぎ。」
「柚月ってば、ほんとにすごい人と結婚しちゃったね。」
「えへ。」
ドヤ顔で左手を掲げる柚月。薬指には、結婚指輪がキラリ。
「宍戸柚月でございます。」
「おぉー。」
「意外とシンプルな指輪にしたのね。」
「伊月くんが、指輪したままアイドルしたいって言うから、できるだけシンプルなのにしたんだぁ。」
「へー。」
「かなちゃんの指輪は、ダイヤ散りばめられてるよね。」
「あ、そーそー。」
そう言いながら、奏は服の首元からチェーンを引っ張り出した。職場が指輪NGの奏は、指輪をつけたり外したりするのは面倒なので、普段はネックレスのようにしているのだ。
「家にいる時はつけて欲しいんだけど。」
「ちょ、亜弥、近い。」
「ねー、あたしもいるんだからそーゆーのは後にしてちょーだい!!」
なんやかんや、三人でこうやって騒げる時間は、それぞれにとって必要な時間なのである。
酔いも回って、柚月はソファに陣取って寝てしまい、その横で奏もうつらうつらとしていた。亜弥は、手際よくテーブルの上を片付け、柚月に毛布をかけた後、奏を揺り起こす。
「奏、ちゃんとベッド行かないと。」
「んむ?んー。」
目が開いてない状態の奏は、亜弥の方に両腕を伸ばす。やれやれ、と思いつつ、亜弥の顔は嬉しさでニヤける。亜弥は軽々と奏を抱き上げ、二人は寝室に消えていった。
数秒後、柚月はそーっと目を開けた。
(はぁ。なんだか伊月くんに会いたくなっちゃったなぁ。)
かなちゃんちに泊まる、とは伝えてあったが、忙しい中でも時間が取れるのなら、少しでも会いたいと思うことが増えた。籍は入れたものの、まだ同居はしておらず、引っ越しの準備を少しずつ進めたり、自分の仕事の引き継ぎをしたりしている。
なんとなく、iPhoneを見てみると、ちょうど伊月からのメッセージ通知が。
"今少し時間が取れそうなんだけど、もう寝てるかな?"
以心伝心したことに、心臓が飛び跳ねるくらい嬉しくて、即レスで"まだ起きてたよ"と送ると、電話がかかってきた。慌てて通話をキャンセルし、手早く帰る支度をすると、外に出て施錠、鍵はポストへ。そして電話をかける(この一連の流れは一分以内に行われました)。
「もしもし?」
「ごめん、タイミング悪かったか?」
「急に切ってごめんね、寝た二人を起こしたくなくて。」
「そっか。…今日、泊まってくるって言ってたもんな。」
「うん。でもね、その…会いたくなっちゃって。」
「え?」
「今から行ってもいい?」
「いいけど…迎えに行こうか?」
「ううん、タクシー呼ぶ。」
「わかった。気をつけて。」
電話が終わってすぐに、タクシーアプリでタクシーを配車。夜の空を見上げて、恋って、愛って、すごいなぁ、と、感動を覚える柚月であった。




