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クリスマスとその予定

『ねえねえねえ! クリスマス暇!?』


 季節は十二月。

 期末テストも、僅かに順位は落としてしまったものの、おかげさまで好順位をキープしたまま無事に終わった。

 あとは終業式までの二週間をのんびり過ごせば、冬休みだ。

 そんなことを考えていた矢先、唐突に飛び込んできた花宮からの通知。

 クリスマス。……クリスマス。

 特に思い出はない。というか、そもそも俺にとっては無縁のイベントだ。

 どこかのカップルが、どこかで盛り上がってる日。

 俺にとってはそれ以上でも、それ以下でもない。

 それが今年に限っては、違うかもしれない。

 高校一年、十五歳。

 人生で初めて、イベントらしいクリスマスが訪れようとしている――

 ……いや、待て。

 ただの早とちりの可能性だってある。

 相手はあの花宮詩乃だ。学校のヒロインだぞ?

 何となく聞いただけかもしれないし、深い意味なんてないのかもしれない。

 彼女には多くの友達がいるし、それ以上に好意を寄せる人も多いだろう。

 独りの俺をあざ笑うなんてことはしないと思うが、言っても友達の一人である相手にわざわざ声を掛ける理由は何だろうか。

 というか花宮にだって彼氏や好きな相手くらいいてもおかしくないだろうに、全くもってそんな話は聞かないな。


『私! 暇、なんだよね!!』


 既読をつけた瞬間、間髪入れずに二通目。

 ……どう考えても、そういうことだろ。

 一瞬、脳裏をよぎった花宮なら他にも誘える相手はいくらでもいるだろうという考えは砕け散った。

 もしいれば俺を誘うわけがない。

 しかし彼氏がいないにせよ、仲の良い女子の友達同士でパーティーでもすればいいだろうに。

 けれど、それは自分でクリぼっちを確定させにいくようなものだと気づいて、慌てて打ち消した。

 そもそも今年は、イブが終業式。

 つまりクリスマス当日は完全な冬休みなため、朝から自由に動くことができるだろう。

 一度、スマホのカレンダーを確認するためにアプリを閉じる。

 ……特に予定は入っていないはずだが――


「あ……」


 誰もいないリビングで、間の抜けた声がこぼれた。

 ――入ってる。

 しかも、クリスマス当日ど真ん中。

 以前、ArataとYuuと行こうと話していたイベント。

 運よく三人とも、同じ日・同じ時間で当選していたやつだ。

 俺も含めて三人ともクリスマスとは縁がないという前提で決めた日程だったのだが。

 当選発表が期末テスト期間と重なっていたせいで、完全に頭から抜け落ちていた。


『スミマセン。予定、あります』


 相変わらず既読は爆速で驚く。しかしながら、一向に返信の気配はない。

 風呂から上がって、髪を乾かしているタイミングでようやく通知が届いた。

 表示されたのは、あの虚無顔のクマのスタンプ。

 いつになく項垂れているせいで、妙に圧がある。


『私、クリぼっち確定……』


 スタンプの直後のその一文は、やたらと悲壮感が強い。

 ……なんか、悪いことした気分になるな。

 もちろん、予定がある以上断るのは当然なのだが、罪悪感が生まれる。

 それにそうか。

 今年のクリスマスは金曜日。

 だから俺に通知を寄越したのか。

 ……イベントの予約は13時からで、その後何かするにせよ18時を回ることはないだろう。


『18時以降になりますが、それでも大丈夫ですか?』


 少し間を置いて。


『うん! ありがとう!』


 そして、続けて送られてきたのは――満面の笑みの、虚無顔クマ。

 口元はにっと笑っているのに、目がまったく笑っていないせいで、さっきより余計に怖い。


『クリぼっち、回避』


 ……いや、それは言わなくていいだろ。

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