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テスト結果と教室で

 ……初めてだ。

 俺は、教室の自分の席で配布された紙を見つめていた。

 そこに書かれているのは、、各教科のテストの点数と順位、その順位にもクラス順位と学年順位、その両方が載っている。

 クラス順位はなんと三位。そして学年順位は三十四位だった。ちなみに一年生のクラスはHクラスまであるため、妥当なところだ。

 何はともあれ、俺にとってはとんでもない好成績だと言っても過言ではない。

 一学期の中間では、クラス順位が十七位、学年順位の方では百十二位だった。そこから考えれば、信じられないくらいの伸びだ。

 一番点数が高かったのは得意分野である現代文で九十三点。逆に低かったのはコミュニケーション英語で五十二点。

 コミュニケーション英語の点数は低かったとはいえ、平均点を上回っているため全然悪くない。

 それに数学で初めて七十点を超えることが出来たのは、素直に嬉しかった。

 ここまで伸びたのは、間違いなく花宮のおかげだ。

 放課後の勉強会がなければ、ここまで伸びることはなかっただろう。

 明日は金曜日。

 お礼の意味を込めて、明日の料理は一層豪華なものにしよう。

 そのためにも、あとで何が食べたいか聞いてみるか。




 昼休み。

 廊下に貼り出されているテスト結果の紙には各クラスの上位五名の名前と、学年上位五十名の名前が掲載されている。

 今までであれば、絶対に縁のなかった場所だ。

 しかし、今回はその両方に俺の名前が載っている。

 少しだけ恥ずかしくもあるが、それ以上に胸の奥がじんわりと熱くなる。


「ねえねえ! 幸村くんだよねっ?」


 自分の席に戻ったところで、突然声をかけられた。

 顔を上げると、机に両手指をかけて、下からひょこっと覗き込んでくる上目遣いの女子の姿。

 目が合う。

 普段、女子どころか男子からもあまり話しかけられない俺にとって、この距離感は不意打ちすぎた。

 声にこそ出なかったが、内心めちゃくちゃ驚いた。


「ええと……岸田、さん? どうかしました?」


 岸田夕月。

 花宮の友達の一人だ。

 詳しく話したことはほとんどないが、俺の中では大人しく、ゆるふわな子という印象だった。

 それほどまでに接点のない相手だが、俺にいったい何の用なのだろうか。


「わぁ! わたしのこと知ってるんだ!」


 ……知ってるも何も、同じクラスだし。

 というか、なんで俺なんかに?

 興味津々というか、目がやけに輝いているというか。

 で、何の用なんだろう。

 彼女が話し出すのを待つ――が、なかなか口を開かない。

 ……気まずい。

 この微妙すぎる空気、どうすればいいんだ。


「幸村くん、頭いいんだね!」


 唐突にそれだけ言うと、岸田はくるりと踵を返し、そのまま教室を出ていった。

 ……なんだったんだ? 文字通り嵐のようなやつだった。


「夕月がごめんね」


 今度は背後から、別の声。

 振り返ると、そこにいたのは志崎紗奈(しざきさな)だった。

 岸田と同じく、花宮の友達の一人だ。

 申し訳なさそうに苦笑しながら、誰も座っていない俺の前の席に腰を下ろす。

 足を組む仕草が妙に様になっている。

 薄地の黒いタイツで覆われた細くて長い脚が、そのまま絵になるみたいだった。

 花宮たちからはお姉さんのように慕われているが、こうして近くで見ると、それも納得できる。

 控え目なピアス。指先には、薄いベージュのネイル。

 派手さはないものの、それがかえって色っぽい。

 志崎も、花宮と同じく目を引くタイプの美人だ。

 それは俺が思うまでもなく、時折チラチラと感じる周囲の視線が証明している。

 けれど本人は、それを気にしている様子もなく。内心の見えない柔らかく薄い笑みを浮かべている。

 さっきの岸田が犬っぽいとするなら、志崎は狼、だろうか。

 狼は仲間意識が強く、仲間を大切にするらしい……し、あと、ウルフヘアだし。

 志崎は、俺の瞳を覗き込み、何かを見定めるようにスッと目を細める。

 そんなふうに見られる覚えはないはずなのに、妙に落ち着かない。

 居心地の悪さに耐えきれず、思わず視線を逸らしてしまう。


「そ、そういえば……テスト、二位おめでとうございます」


 気まずさを誤魔化すように、なんとか言葉を絞り出す。


「わあ、ありがとう。……でも今回も、シノに負けちゃったなあ」


 志崎は大げさに肩をすくめてみせる。

 俺にしてみれば十分すごい。


「そうそう。幸村くんも三位だったよね? おめでとう」

「あ、ありがとうございます」


 花宮はもちろんだが、志崎も間違いなく優等生だ。

 それは、こうして結果を見れば一目で分かる。

 花宮に教えてもらって、なんとか食らいついた俺とはやっぱり違う。


「はい、これ。あげる」


 そう言って差し出されたのは、白くて細い棒。

 反射的に受け取ってから気づく。

 それは、棒付きの飴だった。

 包装の紫色からして、たぶんグレープ味。

 ……なんで、俺に?


「それ、おめでとうの分。……あ、シノにもちゃんとお礼言ってあげてね」

「はぁ……え? え……?」


 志崎は俺にだけひっそりと聞こえる声でそう呟く。

 意味を理解する前に、篠崎はすっと足を下ろして立ち上がる。

 そのまま何事もなかったかのように、自分の席へ戻っていった。

 ちょうどそのタイミングで、五限の古文の教師が教室に入ってきたため、その言葉の意味を考える暇すらなかった。

花宮さんと篠崎さんのあだ名と苗字が似通ってることを後々気付いてしまって横転

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