第三十四話 逆毛の霊獣団
デート・ガルディア。
昔、難攻不落の要塞だったここを改造し、人が住めるようにしたということを習った。
だから、デート。
そんなところに住んでいる私が、デートの名前を持つ者に守られるなんて。
神様の悪戯かもしれないな。
「ここが逆毛の霊獣団です。どうぞ、お入り下さい。」
そう言われた俺は、ふと上を見上げる。
いかにも老舗というような、木造の建物だ。しかし、大きな柱が計三階建ての建物を支えているようで、なかなかに威圧感があるギルドだ。ここでもビート系の魔法が使えないようで、窓から漏れ出る明かりは小さい。
「ヴィンデート、入るぞ。」
ハルセンジアさんが俺を呼んでいる。プォージートさんが扉を開けて待機しているのを見て、急いで逆毛の霊獣団本館に足を踏み入れた。
「アンネリアが帰ってきたぞ。」
「誰だ、あの二人組は。」
「他のギルド......。あの男性、イケメンです!」
「あの男の子は、なかなか可愛らしいですね。」
館内がざわりとし、こちらに注目が集まる。そんな俺達を庇うように位置取り、プォージートさんは声を響かせた。
「アンネリア、プォージート、帰還いたしました。この二人組ですが......。」
「ビート系が使えなくなったから、雇ったのか。」
「お察しの通りです、団長。」
そう答えたのは、藍色の髪をした筋肉質な中年男性だった。
彼がここの団長らしい。と、いうことは......。
「無事、帰還しました。お父さん。」
「ああ、アンネリア。お帰り。」
アンネリアの父親だ。彼はアンネリアの頭を笑顔でわしゃわしゃと撫でた後、こちらを向いてすっと表情を改める。
「うちのプォージートとアンネリアを護衛していただいた事、感謝します。私はデート・ガルディアの街、逆毛の霊獣団団長、ディンビエラと申します。貴方達は?」
「こちらはセントレイクの街のギルド、茨の城団のハルセンジアと、こちらヴィンデートと申します。」
「ハルセンジアと、ヴィンデートですね。今日はお疲れでしょう。......テレアッシェ、寮で二人分の部屋を用意しなさい。」
お互いの自己紹介を終え、ディンビエラは部屋を用意するよう指示する。
そしてぐるりと辺りを見渡し。
「今日は皆で食べよう、食事を用意しなさい。」
「「「はっ。」」」
ディンビエラの鶴の一声で、次々と机が用意され、その上に料理が乗っかり、一部の席にお酒とジョッキが音を立てて置かれる。人が入れ替わり立ち替わりで役割を分担しているところを見ると、かなり人数が多い事がわかった。
「アンネリアさん、ここのギルドには何人の人がいるのでしょうか。」
自分と同じく、出番がない事で暇しているアンネリアさんを見つけ、ふと気になった事を質問する。彼女は困ったように俺を見て、おどおどしながら答える。
「ええっと......私と団長含め、四十八人だった気がします。」
「多いですね、あとなんでおどおどしているのでしょうか?」
その質問にも困ったように目を伏せたが、こちらを見つめて。
「あの、敬語とか、さん付けとかはしなくていいです。慣れていないので。」
「そうですか......、いや、そうなんだ?」
「......ふふっ。」
最近はめっきり敬語ばかり使っていたので、語尾が上がってしまった。そんな俺を見て、アンネリアは耐え切れなかったようで、口を手で押さえて笑う。
「お二人さん、準備が出来たようだぞ。」
「今行きます。......行きましょうか、ヴィンデート。」
ギルドの一人が俺達を呼ぶ。アンネリアが水色の長髪を揺らしながら、手招きをして俺を呼んでいた。




