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9 ヒロイン ケイティ


あたしはヒロインことケイティ。

あたしは、今、食堂にいるの。エレオノーラ様と隣国からの留学生カインとその他攻略対象者とその婚約者達と一緒にお昼ご飯を食べている。かなりの大所帯だ。

こんな風にみんなとお昼ご飯を食べるなんて、最初の頃は

想像もつかなかった。


あたしは最初、警戒した。攻略対象者とは一切関わりたくなかったのに、彼ら令息達が何かとお節介を焼いてくるのよ。これは、あたしがヒロインだから?ヒロインは攻略対象者に好感を持たれやすいのかも。なんて考えていたけど、ただの勘違い。ヘンリー王子からのお世話役の指名だから、はりきっていただけらしい。うぬぼれすぎて恥ずかし~い。

それに彼らにはもう、仲のいい婚約者もいるんだって。

でも、良かった。これって攻略対象者のルートはないってことよね。

エレオノーラ様の事も最初は警戒していたわ。

ゲームの悪役令嬢なら、平民の癖に生意気よ、とか言って苛めてくるかもって。でも、全然そんなことなくて優しかった。だから、貴族の事はエレオノーラ様に頼んで教えてもらったわ。まるで、前世で、仲が良かった、家庭教師のお姉さんみたいに貴族の事や勉強もわかりやすく教えてくれた。


一番の地雷のヘンリー王子はというと、エレオノーラ様ではなく、マーガレット様という令嬢と婚約していたから、これにはびっくりしたわ。

それってかなり、ゲームから遠ざかってない?

その婚約者、マーガレットは鮮やかな赤毛の見た目に拘わらず、性格も穏やかで、癒し系で普通かな。


……と、思っていたら、とんでもない!

彼女はいつもとんでもない発言をしてくれる。


次の日の席替えしたあたしの席に始まり、ダンスのペア、その他諸々……。


「ヘンリー様、ケイティ様の世話をしてあげて」


いらないです!


全力で断るあたし。

マーガレット様って転生者?

の割には、ずれているのだけど。


いつもヘンリー王子が場を収めてくれるけど、これはかなり、マーガレット様にとって危ない状況だ。

ヘンリー王子はマーガレット様を溺愛しているようなの。

それが既に、ヘンリー王子にはヤンデレの片鱗が見え隠れするの。


最近では、マーガレット様は無駄とわかったのか、あたしに絡んで来なくなった。その代わりに、ヘンリー王子から逃げ回るようになったの。

いつも、マーガレットはどこだ。マーガレットを知らないかと、探している。そんなにマーガレットをそばに置きたいなら、首に縄でも付けて置いといたらいいのにと思う。まあ、ヤンデレ王子なら本当にそうしそうで怖いけど。

でも、ヘンリー王子がヤンデレになるのは、マーガレット様、あなたの言動にも原因があるのよ。





そんなある日のお昼休み。その、食堂の大テーブルに、いつもはヘンリー王子と個室で食べているマーガレット様が一人で来て、


「わたくしもご一緒していいかしら、あら、ケイティ様、貴方もグラタンなのね?わたくしもそうなの。美味しいものね」


と、言ってきた。


「え、あの、マーガレット様、お昼はいつもヘンリー王太子殿下とご一緒されてますよね」


エレオノーラ様が驚いてマーガレット様に尋ねる。


「こんな大テーブルで男の方もいらっしゃるのに、殿下がお許しになりましたの?」


「え?ええと、わたくしがどこで誰とお昼を過ごすなんて、わたくしの勝手ですわ。ヘンリー様の許可なんて要りません」


マーガレット様が強気に答えていたが、


「誰が許可が要らないと言ったんだ?」


「ひっ!」


いつの間にかヘンリー王子が後ろに来ていて、マーガレット様の左肩に手を置いた。マーガレット様は獰猛な肉食獣にあった小動物の様にびくっとしている。


「マーガレット、急にいなくなったと思ったら、食堂にいたんだな。ほら、個室に行くぞ」


マーガレット様は今日もヘンリー王子から逃げまわっているようだ。ヘンリー王子はそんな彼女の腕を掴み、容赦なく連れ出そうとしている。引かれる腕を離そうと、身体ごと後ろに斜めに傾けながら、彼女は言った。


「この大テーブルで皆と一緒にお昼を過ごしたいわ。ヘンリー様、ケイティ様の隣が空いていますわ。そこにお座りなったら?わたくしは久しぶりにコゼット様達とお喋りしをながら、過ごしますわ」


と、例の如くあたしとヘンリー王子を一緒にさせたがる。

やめて!またもやヘンリー王子の背後から黒いオーラが漏れだしているわ。


「私の婚約者は君だろう?君が私のそばにいなくてどうする?」


と、不機嫌に言い、あのそのとか言っているマーガレット様を問答無用で連れ去っていく。


「あー。マーガレット様、グラタンを忘れているわ」


エレオノーラ様がグラタンを持ち、個室に向かう。

とても嫌そうだ。

ヘンリー王子はとても機嫌が悪かった。そんな所に行くのは気が進まないのはわかるわ。

しばらくして帰ってきたエレオノーラ様に話しかける。


「今日もマーガレット様、王太子殿下に捕まってしまいましたね」


「本当にね。逃げても捕まるのに、時々こうして、逃げてこられるのよね」


それにしても、やっぱりマーガレット様はゲームの事を知っているの?でも、前世からの転生者にしては腑に落ちないわ。そうやって離れようととするから、ヘンリー王子がヤンデレになっていってしまうことを知らないみたいだ。


そんなことを考えていて、食事もせずにぼーっとしていると、声をかけられた。


「何を考えているの?食事が進んでないようだけど?君の大好物のグラタンが冷めちゃうよ」


カインの声に我に帰る。


「え?あ、そうね、早く食べなくちゃ。次の授業の事でエレオノーラ様に質問したいことがあるのよ」


他の人達はもう食べ終わる頃だ。慌ててグラタンを食べる。


「熱っ!まだ熱かった!お水、お水!」


「ほら、そんなに慌てて食べるから。はい、お水」


「ありがとう」


あたしはカインから水の入ったコップをもらいごくごくと飲んだ。


あれ?これ、カインのコップ?良かったのかな。ま、いいか。間接キスなんてそんな衛生面の事はこの世界では考えない。


「大丈夫?ケイティは慌てんぼうだから。でも、見ていて楽しいよ」


「慌てんぼうって、そんな子供みたいなこと、言わないでよ。これでもまだ落ち着いたとエレオノーラ様からは言われてるんだから」


「エレオノーラ、ケイティを甘やかしたら駄目だって」


カインはあたしとエレオノーラ様だけ、名前で呼んでいる。だから私も呼び捨てだ。


「まあ、ケイティ。ゆっくり食べなさい。グラタンは逃げないのだから。お行儀よくね」


エレオノーラ様はマナーを知らないあたしに、いつも優しく教えてくれる。


「もう、二人とも、子供扱いして」


2人は笑っている。カインの笑顔が眩しくて目がやられちゃう。カインは栗色の髪で、目の色はブランデーみたいで綺麗だ。光の加減で金色の差し込みがはいる事があり、それが神秘的な感じがして、見ていると、

いつも、うん?という感じで、笑って目を細める。

あわわ、何このイケメン様、最高!……じゃなく、自分がイケメンってこと、わかってやっているな。


カインとは入学式の日に会ったけど、


『やあ、初めまして……俺はカイン。ケイティと呼んでもいい?俺の事もカインと呼び捨てにしてくれ。


なんて気さくに話しかけて来た。留学生ということは、やっぱり貴族だろうけど、彼は何だか親しみ易さを感じるわ。それに留学生のカインなんて、ゲームのキャラにもいなかったし、安心して話すことができた。


そのカインはよく隣国の話をしてくれる。エレオノーラ様と一緒に勉強も教えてくれる。カインとの話は楽しく、いつまでも話をしていたい。

ダンスの練習の時も、あたしのまどろっこしいステップに根気よく丁寧に付き合ってくれた。

逞しい身体であたしを優しく支えて、あの琥珀色の目であたしを優しく見守ってくれた。

やっぱり金色の差し込みがまばゆいわ。繋いだ手がなんだか恥ずかしい。

エレオノーラ様はここの交換留学制度で隣国に留学を希望しているらしく、上手く行けば、二年後にカインと一緒に隣国へ行く予定だ。

留学なんて、パン屋の娘のあたしには夢のまた夢の話ね。

カインにはエレオノーラ様の様な方が似合う。

彼女は本当に綺麗で優秀で、みんなの羨望の的になっている令嬢なの。ゲームの悪役令嬢とは違っているわ。ゲームでは断罪で国外追放になったエレオノーラは、わずかな援助しか許されず、貧しく、みすぼらしくなってしまったとあったけど、この世界の彼女ならきっと、隣国に行っても幸せになるかもね。



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