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序章 烏の頭の白くなるまで
太陽が西から昇り、月が東へと沈む。
雨が海から天に降り、川が山へと遡る。
時が未来から逆流し、歴史の秩序が崩れ去る。
およそこの世であり得ないこと——これを巷で〈烏の頭の白くなるまで〉というらしい。
ならば視野を自分に置き換えれば——親父やお袋や爺っちゃんが生き返ること、僕の足が元通りに治ること、夢や希望が僕の人生に溢れ返ること——こんなところか。
何とも自虐的な書き出しではあるが、それ程までに僕は失意の淵にいた。
〈あの時〉が来るまでは……
運命というものが紡ぎ出した最悪の人生を、僕はこれまでずっと生きてきた。
そしてこれからも生きていく。
そんな絶望的ともいえる現実の元に、突如として現れたオアシス——それは、力にねじ伏せられ、翻弄された時代でもあった。
でもその中で、かけがえのない友と、笑い、泣き、怒り、支え合い、懸命に生き抜いた〈あの時〉は、夢とか希望とかそんな曖昧なものではなく、色褪せることのない永遠の〈真実〉だったのだ。
そうに違いない。
いや、そうであるべきだ。
だから僕はここに書き記す。
これこそが僕らの存在の、唯一の証なのだから。
時空を司る〈何らか〉が、烏の頭を白くするところから、この物語は始まる。




