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ハズレ令嬢に転生したけど、悪役令嬢と親友になって活躍したら聖女に持ち上げられました  作者: アヤコさん
第3章 新たな聖女

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89 ローゼの思惑

 誤字報告くださった方ありがとうございました。

 赤い絨毯の左右には貴族たちが列をなし、レイラさんがその最前列に加わった。


 レオさんやミハイルさんがその絨毯の先に並んでいた。

 私やウィル君もその列に加わると、レオさんが笑顔で迎えてくれてホッとした。

 こういう時は、やっぱりレオさんが頼りになる。


「あのレオさん。陛下の前で片膝をついて胸に手を当てたりしなくていいんですか?」


 私は物語などでよく見た、王様への謁見シーンを思い出す。

 その声が陛下に聞こえてしまったようで⋯⋯。


「ハッハッ、そのような心配はしなくていい。我が師であるスレク卿のご息女であれば、余にとっても娘のようなものだ。余のわがままに付き合ってくれて、ありがたく思うぞ」


 その優しい声が私の緊張をほぐしてくれる。

『皇帝陛下』と意識し過ぎてるけど、レオさんのお父様なんだ。

 そう気持ちを落ち着けていると、レオさんが優しく気遣ってくれる。


「エストさん、いつも通りでいいんですよ。アカデミーで結果を出したのですから、父上にとっても誇らしいことなんです」

「えっとヒルダ、ううん、ブリュンヒルドさんの時もこんな感じだったんですか」

「ええ、あの時も立派なものでしたよ」


 陛下との距離がこんなに近くなったのも、今のガレント陛下、つまり彼のお父様の代かららしい。

 バルマード様と共に魔王軍に立ち向かった、そんな武勇伝もあるくらい民を愛する方だそうで、その左腕も子供を守るために失ったらしい。


 ⋯⋯私も小さい頃にバルマード様がいなかったら、今がないんだと思うと、とても人ごとには思えなかった。

 その話に親近感が湧いて、陛下のそんな過去が胸に響いた。


 そんな中、後ろの方がざわつき始めた。

 振り返るとその先に、白い礼服に身を包んだバルマード様がいた。

 しかもその隣には、白姫姿のローゼさんがいる。


 ラッパの音が鳴り響くと、「バルマード・マクスミルザー公爵閣下、ご到着!」と儀礼用の剣を掲げた騎士が、高らかに声を上げた。


 バルマード様が来てくれたのは何より心強いけど、ローゼさんはその格好で良かったの?

 バルマード様はすれ違い際に、「少し待たせてしまったね」と私に軽くウインクをして、陛下の横に並び立った。


 白姫の格好で「素敵な日になると良いですね」と囁いたローゼさんは、そのまま私の横に並んだ。


 バルマード様と陛下が顔を見合わせると、陛下は上機嫌に玉座から身を乗り出し、軽く目を細めた。


「よくぞ、かの白姫を連れてきてくれた! さすが我が親友(とも)バルマードだ」

「よほど彼女のことを気に入ったようですな。まあ、あのような激闘を見せ付けられては、共に剣を並べて戦った日々が、昨日のように思い出されてなりませんな」

「まさにその通り。大剣を振い戦場を駆け、共に腕を磨いたあの日々がよみがえるようで、とても爽快な気分にさせられた」

「それは何より。さあ、彼らを存分に讃えてはいかがです?」


 陛下とバルマード様は、まるで幼馴染のような親しさで、その様子に陛下のことをより身近に感じてしまう。

 だけど、そこに水をさすように皇妃のそばに立つ、金髪の貴族が白姫を指差して声を上げた。


「いくら特別扱いされようと、その深々と被ったフードは何事か! ここが陛下の御前であることをわきまえたらどうだ」

「落ち着け、ガルト公よ。余の客人に向かいそのように言うでない」


 ⋯⋯ああ、あの人がオーランドさんの頭痛の種なのね。

 確かにイケおじではあるけど、悪役が板についてる感じ。


「これは礼を欠いてしまったようですね、ガルト公爵閣下」


 フフッと唇の端を持ち上げて、白姫が壇上のガルト公爵に向き合う。


「フン、わかったようだな」

「後悔なさらないのでしたら、そういたしましょう」


 白姫の鋭い返しに、一瞬、ガルト公爵が怯む。

 彼女の言葉は陛下だけでなく、この場にいる全員の目を集めた。


 白姫が静かにフードを下ろすと、純白の髪がフワッと舞い、シャンデリアの煌めきをその繊維の一本一本に映した。

 その絶世の美貌に陛下は思わず立ち上がり、ガルト公爵は引きつった顔で青ざめる。

 バルマード様の反応は、やっぱりローゼさんだと知ってたみたい。


 貴族たちが「あの最強の白姫が、ローゼ公女だったとは!」、「バルマード様にローゼ公女と帝国最強が二人も!」、「これは早々に態度を決めなくては!」とざわつき、ミハイルさんはローゼさんの姿を食い入るように見つめて、語りかけた。


「いやはや、その姿も凛としてお美しいです! これほど驚かされたのは初めてかもしれません」

「あらミハイルさんには、あの時ヒントを差し上げたはずですよ。あなたのよく知る人物に、この髪と同じ色をした方はいませんか? と」

「あはは、さすがに身近すぎて。でもこれでいつでもお手合わせ願えますね!」

「ウフッ、そんな純真な瞳で見つめられると、こんな私でも少し身体が熱くなってしまいますよ」

「ええ、先の白姫との戦いでは熱くたぎりましたからね!」


 二人の話してる熱さは、たぶん意味が違う。

 レオさんはローゼさんを穏やかに見つめ、ウィル君は唖然としていた。


「まさか姉さんが、あの白姫だったなんて。弟の僕にも教えてくれないなんて、やっぱり姉さんらしいや」

「ウィルの成長を見るのが楽しかったから、つい言いそびれてしまったわ」


 ローゼさんの純白のローブが、花びらのように舞って消える。

 次の瞬間、私はドレス姿のローゼさんにギュッと抱きしめられた。

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