表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/92

88 宮殿へ

 パーティーから数日後、公爵家でディナーを楽しんでいると、バルマード様がどこか言葉に詰まるような、微妙な表情を浮かべたのが気になった。


「どうかしたんですか、バルマード様?」

「あ、いやね。あれから陛下が武闘大会のことを大層喜んでね」


 ミハイルさんが嬉しそうにコーヒーカップを置く。


「おお、皇帝陛下がそれほど。これは参加した甲斐がありましたね」


 高ぶるミハイルさんとは反対に、レオさんの表情が少し曇る。


「バルマード様、私から話しましょうか?」

「いやいや、気を使わせてしまったねレオ君。今回は君たちが主役だから、もっと気楽に構えていて欲しいんだ」


 ウィル君も知っているみたいだけど、陛下が関わることって何だろう。

 すると、バルマード様がゆっくりと立ち上がって、穏やかに語り始めた。


「エストちゃんとミハイル君には、もっと早く話すべきだったね。今度、宮殿で君たちの勲章授与式が決まったんだ。陛下が君たちの見せた素晴らしい戦いを、直に讃えたいと言うのでね。それも全員がアカデミー出身者でありながら、Sランク冒険者という快挙まで成し遂げたんだ。同時にその表彰式があると思って欲しい。って堅苦しくごめんね」

「私たちがあの、アルテ・ノウエル宮殿に招かれたってことですか?」


 これってレオさんやノアさんのためになるんだよね。

 だったら行かなきゃ。だって二人の役に立ちたいもの。

 あっ、でも宮殿に着て行くドレスなんて持ってない!


 その不安が顔に出たのか、レイラさんが「アカデミーの制服で大丈夫よ」と教えてくれた。


 バルマード様は「私も参加するから、そう難しく考えないで欲しい」と、優しい目をした。

 そんなバルマード様には、いつも安心させられてしまう。

 ローゼさんがバルマード様を好きすぎるのもわかる。

 包容力が凄すぎて誰だって好きになると思うし、私も大好きだ。


 ローゼさんがそんな私を見て、にこりと微笑んだ。

 彼女と一緒にいると、安心感があって心地良く感じる。

 そう思うと、ローゼさんの頬が淡く桜色に染まった。


「エストさんは私の大切な親友ですもの」

「もちろん私もそう思ってます」


 二人でクスクス笑い出すと、バルマード様やみんなまで笑顔になる。


「私の考えすぎのようだったね! 少し過保護になりかけていたけど、みんな着実に大人になっているんだ。これからはもっと素直に伝えるようにするよ」


 そんなバルマード様にレイラさんがピトッと寄り添うと、慣れないのかバルマード様の目が急に泳ぎ出した。

 なんだか先生と生徒が付き合ってるみたいで、そんな姿が見ていて楽しい。


「レ、レイラ。何もしないでおくれよ」

「もう、バルマードったらすっかり警戒しちゃって。人前では何もしませんよ。二人っきりの時に、思いっきり楽しみましょうね」


 レイラさんは言うこととやることが、まるで噛み合っていない。

 バルマード様に手を回したりして、しっかりちょっかいを出すけど、バルマード様は困った顔でレイラさんをやんわり押しのけている。


 公爵家の夜はいつもの温もりに包まれながら、時間が過ぎるのを早く感じた。

 この輪の中にノアさんがいたら言うことないって、そんな日が来るのを願ってしまう。




 私は陛下に謁見することを、真っ先に男爵家の両親に伝えた。

 最初に頭を撫でてくれたのは、お義父さまだ。


「ワシも大会で戦うエストを見て、誇らしく思ったぞ。あれだけ見事な姿を見せれば、陛下に気に入られるのも当然だ。大事な娘だから、よこせと言われてもくれてやる気はないがな。ハハハッ!」


 そのご機嫌な顔を見ていると、お義母さまが私の手を優しく撫でてくれる。


「私は危なっかしくて見ていられなかったけど、エストの選んだことですもの。だから身体には気を付けて、いつまでも元気でいてね」


 二人の愛情を嬉しく思っていると、マリーやヒルダも祝福してくれた。


「お嬢様、本当にすごかったです! それとこの前みたいなパーティが、またあるといいですね」

「男爵家も使用人が増え、とても賑やかになりました。新しく入ってきた子たちも、お嬢様がデザインした服に喜んでいますし、みんな真面目に働いてます。もちろん私も日々を楽しませてもらってますよ」


 素敵な両親に恵まれ、今ではマリーやヒルダとも家族のように親しく過ごしている。

 こんなにも気安い関係になれるなんて。

 これもみんなが私を支えてくれたおかげだ。


 ーーこの屋敷で目覚めて、いろいろあったことがもう遠い昔みたいだ。

 心からくつろげる我が家のことを、これからも当たり前に思わないよう、この日々に感謝しなければとあらためて思った。




 数日後、公爵家の馬車に揺られ、ついに宮殿へとやって来た。


 実はマクスミルザー公爵家は宮殿の隣にあるから、お屋敷からはこの宮殿がよく見える。

 でも、実際に入り口の前に立つと、その壮麗な雰囲気に圧倒されてしまう。

 私はレイラさんの後ろについて中に入るけど、一人じゃ絶対無理って感じ。


 使用人のほとんどは貴族だそうで、ピシッと整列してお辞儀してくる姿に気圧されそう。

 でも、そこでレイラさんがお手本になってくれるから、真似るだけで助かった。


 そして、たどりついた謁見の間は豪華絢爛の一言。

 壇上の玉座には、皇帝陛下が和かな笑みを浮かべ、隣に座るリンシア皇妃は少し不機嫌そうな顔をしていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ