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72 特訓開始

 バルマード様の執務室を後にした私たちは、ローゼさんの軽い誘いに乗ってしまう。


「少し腕試しをやってみませんか?」


 ローゼさんがにこやかに微笑むと、やる気に満ちたレオさんやウィル君、ミハイルさんにつられて、私も「おーっ!」って声を上げた。


 その意気込みを見たローゼさんは、ドレスの袖から取り出した鍵を何もない通路で回すと、ガチャっと鍵の開く音が響いた。


 すると突然、目の前に見たこともないような禍々しい門が現れる。

 ウィル君はそれを前に見たことがあるようで。


「これって、前に姉さんが通っていたあの門ですよね」

「そうですよ、ウィル。この先には異界と呼ばれる世界が広がり、レベル上げには最適の場所になっています。私が前に使っていた場所ですので、効果は保証しますよ」


 ガァーッと重厚な音を立て、門が開くとそこには草原が広がっていて、まるで日中のように明るく照らされている。

 お屋敷の外は夜なのに、と思ったところでローゼさんが続けた。


「まずは私とヒルダとお母様で先に行きますので、離れないくらいについてきてくださいね」


 ローゼさんの言葉にヒルダはうなずいたけど、レイラさんがちょっと戸惑っている。


「ローゼ、この先って一体どこなんです?」

「私は異界と呼んでいますが、異世界の一つですね。ヒルダとの訓練によく使っていますが、お母様が気が引けるようでしたら、私とヒルダで先に行きますよ」

「私だって行きますよ!」


 レイラさんがムキになって、ローゼさんに続いて入っていくと、入るなり三人の姿がパッと消えた。


「ちょ、ローゼさん!」


 思わず声が出たけど、すぐに返事が返ってくる。


「エストさんたちもあまり遅れずに入ってきてくださいね。見失うと困っちゃいますので」


 ウィル君とレオさんが顔を見合わせて、「行きましょう」とミハイルさんが武器を構える。

 ミハイルさんが青白く輝く盾を持ち先頭に立つと、剣を構えたレオさんとウィル君が続く。


 私が一番最後に入ると、一瞬転移したようになって、さっき見えていた草原とは違う、断崖絶壁に囲まれた、暗雲立ち込める場所に出た。


 しかも入ってきた門が消えている。


 私たちは近くにいるけど、ローゼさんたちの姿が見えない。


 と、その時、激しい金属音が響いて、何かの巨体が空を舞った。

 その巨体を追うようにヒルダが崖の向こうから飛んでくる。


「みなさん、お嬢様。戦う準備はできていますか?」


 ドスン、と土煙を巻き上げた巨体が立ち上がり、ヒルダや私たちを見るなり、こっちに巨大な斧を振り下ろしてくる!


 ヒルダが素早くその一撃を弾くと、「これがみなさんに最初に戦ってもらう、下級魔神です」と発して、崖の方に離れるように飛んだ。

 ヒルダが降りた場所にはローゼさんとレイラさんがいて、ローゼさんが「頑張ってくださいね」っと手を振っている。


 ゴーレムよりも巨大な、鋼鉄の魔神の斧をミハイルさんが盾で受け止める。


「こいつの強さは、この前のドラゴンの比じゃないぞ!」


 レオさんが剣で突撃し、ウィル君が剣に稲妻をまとわせて向かっていく。

 私も最初から全力で防御魔法の『セイグリッド・シールド』を全員に放ち、戦闘が始まった。

 



「はぁはぁ⋯⋯」


 二時間くらい戦って、ようやく鋼鉄の魔神を倒すと、みなぎるように身体に力が溢れてきて、レベルアップしたのがわかった。


 前にローゼさんにアホ姫の力をレベルに変えてもらった時は、けたたましくレベルアップのメッセージが現れたけど、ダンジョンでレベルアップをするようになってからは、この力がみなぎる感じの方に慣れてしまった。


 ウィル君たちもみんなレベルアップしたみたいで、笑顔を見せていると、そこにローゼさんが戻ってきて、私たちに言った。


「まだ近くにたくさんいますので、もう一体連れてきましょうか?」


 レオさんが晴れやかにローゼさん返す。


「では、もう一戦お願いします。時間はかかりましたが、動きを覚えているうちに戦いたいですので」


 その言葉に、ウィル君とミハイルさんが頷くと、第二ラウンドが幕を開けて。


 そこから結局、五戦くらい連続で戦ったところで、今日の特訓は終わる。


 ダンジョンでは頭打ちになっていたレベル上げが、面白いように上がり、レオさんやウィル君に、ミハイルさんも充実した笑顔だった。


 そんな雰囲気の中、私もやり遂げた感に満たされて、疲れ以上に充実感を感じていた。


 公爵家に戻って驚いたのは、廊下の掛け時計がまだ一時間も過ぎていないことだった。

 それに気付いた私に、ローゼさんが声をかける。


「さあ、これからエストさんのやることはリラックスすることですよ。良かったら、これからお母様やヒルダと一緒に、お風呂にしませんか?」


 気持ちいいお風呂と、湯上がりの後の一杯を思うとたまらなくなって、私はうんと元気よくうなずいた。

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