73 目覚める力
アカデミーでは、セシリアさんとソフィアさんが、ギルドで仲良くなったジャンさんと一緒に頑張ってるようで、冒険者ランクも抜かれてしまった。
そんなセシリアさんは私に笑顔で近づいて来た。
「私たちCランクに昇格したんですよ。これも、エストさんやローゼさんのおかげと思っています」
ソフィアさんも続ける。
「それでは私たち、ギルドに行ってきますね。いつかお二人ともご一緒できるように、頑張ってきます」
二人はそう残して生徒会室を後にした。
堅実なジャンさんの影響で二人ともキラキラしてるみたいで、なんだか青春だなって感じた。
部屋にはレオさんとウィル君とミハイルさんがいて、私たちもあの激しい修行の話で盛り上がっている。
と、そこにドアがノックされて、レオさんが「どうぞ」と返事をすると、「ただいま戻りました」と、ガルト公爵家のオーランド公子が一礼して入って来た。
肩まで届く金髪で、端正な顔立ち。
今でこそイケメン耐性が上がってるから、なんとか平気だけど、やっぱり人気攻略対象なだけあって華がある。
するとオーランド公子は私の方に最初によって来る。
「もしや、あなたがスレク男爵令嬢ですか?」
その柔らかな物腰に、つい緊張して声が上ずる。
「あ、はい! エストです。あまり男爵令嬢と呼ばれ慣れていないので、エストとお呼びください」
このやり取り、ミハイルさんの時を思い出すなと、ちょっと懐かしくなる。
「はい、では私のこともオーランドとお呼びください。話したいことは色々とあるのですが、先にレオクス会長に挨拶させていただきますね」
オーランドさんは私に会釈して、ウィル君やミハイルさんと軽い挨拶を交わし、レオさんの元へと向かった。
「留学、大変だったね、オーランド君。無事に帰って来てくれて、何よりだよ」
そのレオさんの言葉に少しだけ沈黙したオーランドさんは、急にレオさんの前で膝をついた。
「レオクス会長、いえ、殿下。貴族派が御身を傷付けた大罪、このオーランド、いかなる処分もお受けいたします」
レオさんは彼の肩に手をかけ、立たせると首を横に振ってこう答えた。
「オーランド君がそう言ってくれるだけで十分だよ。何より、君が皇都にいない間に起こったことじゃないか」
「⋯⋯以後、貴族派が愚行を繰り返さぬよう、気を付けたいと思います」
突然の事でびっくりした。
ウィル君もミハイルさんも、オーランドさんが気にすることじゃないと声をかけている。
私は前世でレオさんのルートはクリアできてないけど、レオさんを攻略するには、皇太子争いが大変だって掲示板に書いてあったのを思い出す。
ってあれ、オーランドさんって、レオさんが皇太子になるのを邪魔する側の攻略対象だったはず。
そう思うと、ゲームと全然違うことも結構、思い当たる。
ローゼさんに至っては、全くの別人だし。
そもそもレイラさんは乙女ゲーム『レトレアの乙女』には登場しないし。
私だって、もう「アホ姫」じゃなくなってるんだからっ!
すると突然、目の前にメッセージが現れた。
[ あなたの中に眠る【時の権能】がわずかに目覚めます。 ]
えっ、何!? って思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
◇◇◇
ハッと目を覚ますと、私は白いベッドの上にいた。
そばの椅子でリンゴをむいてるローゼさんが、微笑みながら話しかけてきた。
「エストさん、どうやらヒミツの力に目覚められたようですね」
「あはは、ローゼさんはいろいろお見通しですね」
ローゼさんの話によると、気を失った私はすぐに医務室に運ばれて、生徒会のみんながしばらく付き添ってくれてたみたい。
「はい、うさぎさんにむいたリンゴです」
ローゼさんがくれたリンゴを一口食べたら、これが信じられないくらい美味しくて、ついお皿のリンゴを全部、食べてしまった。
「どこか変わったところはありませんか?」
ローゼさんがそう言った瞬間、目の前にメッセージが浮かぶ。
[ 【時の権能】の効果により、神聖魔法の威力が向上します。今はその能力をほとんど引き出せていません。 ]
私は勢いよく身体を起こして、ローゼさんに話した。
「リンゴを食べたら、【時の権能】ってメッセージが出ました。なんだか、ぜんぜん使いこなせてないみたいです」
そんな私を見て、ローゼさんが答える。
「エストさん、そのことは他の誰にも絶対に言わないでくださいね。その力はエストさんと一緒に強くなっていくと思いますので、気長に育てていきましょう」
私はローゼさんの忠告通りに、誰にも話さないとうなずく。
どんなことができるようになるか興味はあるけど、昨日の修行を思い出すと、「気長に」って言葉がしっくりきた。
そんな私の反応を見て、ローゼさんがクスッと笑った。
「レオさんの傷を癒した時のように、私がエストさんに魔力を渡せば、すぐにでもかなりのことができるようになると思いますよ」
つまり、その時から私の中の力を、ローゼさんは知ってたのね。
っていうか、ローゼさんは『全知の書』っていう、なんか反則級の本を持ってるし。
「あら、私の全知の書もそこまで万能ではありませんよ」
私がベッドから起き上がると、ローゼさんも席を立つ。
「みなさんに心配をおかけしたので、ちょっとお礼を言ってきます」
「そうですね、ご一緒しますね」




