第九十一話、『せめて死に方くらいは』
『鬼王』ゼオン。
ノウム王国でソフィアの護衛をしていた男。
僕との殺し合いをスクルドによって仲裁され、その後は世界連合が身柄を拘束していた。
戦闘狂だが、こいつは何も悪事を働いていない。
毎日が退屈で退屈で、国民が反乱を起こした時も王国が滅びていくのを嬉々として楽しんでいただけだ。
釈放されたのか、はたまた脱走したのか。
どうしてそんな男がこの場に現れるのだろうか。
「久しぶりだなァ。るーのーあーくーん」
「ゼオン……お前、なんでここに」
「どっかの親切な野郎が、今日この塔に登ればお前と殺し合えるって教えてくれたんだよ」
その発言を聞いて、全てを悟った。
事前に塔が出現することを知っていたのは一人だけ。
ゼオンがここに来るように仕向けたのは、ゼクスだ。
「ちょっと待て、殺し合うって……」
「惚けんなよ! 俺らはあの日、脳が沸騰するような殺し合いを、あのクソ女に邪魔されたんだ! あの日の続きをしようぜルノア! もう一度、俺様を楽しませてくれ!」
ゼオンは血走った目で太刀を構えた。
鬼神流の上段の構え。特有の呼吸音。赤く染まる刀身。
あの日の記憶が蘇る。
「――――ッ!?」
床が陥没し、ゼオンが肉薄する。
それを受け流そうとするが、押し潰されそうになり後方へと跳躍する。
おかしい。あの日からずっと強くなってるはずなのに。
「てめぇ! こんなときに一体何なんだよ!」
「あァ? テメェこそ誰だよ。雑魚は引っ込んでろ」
「ウェルフ! そいつはノウム王国にいた『鬼』だ!」
「……こいつが? 世界連合は何してやがんだよ」
ウェルフがゼオンを警戒している。
戦線がめちゃくちゃだ。
ゼクス……お前何してくれてんだよ。
「――――ッ!?」
斬撃が飛んできて、三人が同時に回避行動をとる。
アルファが無言でグラムを振るったのだ。
「……俺を無視すんなってかぁ。随分と構ってちゃんじゃねぇか」
「テメェ! 邪魔してんじゃねェぞ! 雑魚はさっさと失せやがれ!」
雑魚、なんてアルファに言える度胸が羨ましい。
言われた当人は意にも介していないだろうが。
「あァ? 誰が雑魚だって?」
そう思ったが、意外にもアルファは憤慨した様子を見せた。
「ったく。次から次へと蛆虫みたく出てきやがって……ダリィな。【殲滅の義務】が強制する『虐殺』の対象は、目に見える邪魔者すべてなんだよ」
アルファは何度か素振りし、魔剣グラムを担いだ。
裂け目が作られた。仕切り直しということだ。
状況は最悪だ。
だが、ゼクス。もしお前がこの状況を意図的に作り出したのだとしたら、勝算があるってことだよな。
僕はお前を信じるって決めたんだ。だから――
「……ゼオン。あいつは何度手足を切り落とそうと蜥蜴の尻尾みたく再生するホムンクルスだ。元は四聖神の『朱雀』……はっきり言って化け物だ。お前とは後で遊んでやるから、今は僕たちに協力しろ」
「正気か、旦那!?」
「少なくとも、ゼオンと戦いながらなんて無理だ。それに、アルファに勝つためには手数が必要だって言っただろ」
アルファに警戒しつつも、ゼオンの挙動に目を向ける。
戦闘狂でも、ここで僕の提案を無下にするほど馬鹿では無いと見た。
「断るに決まってんだろ、ルノア。まず前提が間違ってんだよ。俺様は誰とも群れねェ。徒党組んで戦う雑魚の真似なんざ反吐が出んだよ」
ゼオンは顎を突き出し、舐めきった態度で拒絶した。
戦闘狂は戦闘狂でも、とんでもない大馬鹿者だったか。
「俺様はやりたいようにやるだけだ。お前ら三人とも、この俺がぶっ潰してやるんだよ! まずはテメェからだ! ホムンクルス!」
ゼオンは狂気的な笑みを浮かべ、アルファに肉薄した。
ゼオンは味方にはならなかったが、だからといってアルファと手を組んで襲ってくるわけじゃない。
別に僕に恨みがあるわけじゃないんだ。
三対一にはできなかったが、二対二にはなっていない。
「どうすんだ、旦那? あいつらで争ってくれんなら嬉しいけどよ」
「……まずはゼオンに、この場でアルファが最強であることを身をもって知ってもらわなきゃな。話はそれからだ」
「なるほどな」
ゼオンはアルファの能力を知らない。
考え無しに突っ込めば裂け目によって切り裂かれる。
「オラァァァァァ!!」
「ったく。煩いだけの馬鹿は嫌いだ」
ゼオンの太刀の刀身は、アルファの魔剣グラムと同等の長さを持つ。
アルファの間合いは、同時にゼオンの間合いでもある。
アルファは静かに悪態を着くと、面倒くさそうに剣を振るいゼオンの太刀を弾いた。――弾こうとした。
次の瞬間、グラムが焼き切れた。
そして裂け目がゼオンの身体を襲う。
「グアアアアア!」
ゼオンが太刀を振るうと、熱風がこちらまで届いた。
鬼が生まれつき持つ『異能』の力。
物体の温度を際限なく上げ続けられるパイロキネシス。
アルファの左腕がすとんと地に落ちた。
その断面は黒く焼け爛れている。
対してゼオンの方の傷は見た目より浅かった。
鬼神流の筋肉硬化が、斬撃を真正面から受け止めたのだろう。
「そういや、『鬼』には異能があるんだったな。……ボスは本当に、最初から全部お見通しだったってのか」
アルファの左腕と折れた刀身が再生する。
再生速度が早い。
勝つためには、連続して斬り続けなければいけないのか。
「……想像以上だ。この俺様が震えるなんてな……最高に、昂ってるぜ! もっと、俺様を楽しませろ!」
血走った目、京楽に満ちた笑み。
その震えは恐怖から来るものか、はたまた武者震いか。
ゼオンが強襲する。
「ダリィ……お前はガンマかよ、鬱陶しい」
依然としてアルファは動かない。
ゼオンが振り下ろした太刀は、アルファに届く前に裂け目によって防がれる。
しかしアルファは、攻撃のためではなく、初めて防御のために裂け目を消費させたのだ。
「いけるぞ……」
「旦那?」
「僕達も加勢……いや、乱入するぞ!」
「待ってたぜ、旦那! 逃げ回るのは似合わねぇ、俺も旦那も!」
そして、第三ラウンドが始まった。
今度は三人。手数も段違いに多い。
加えて逃げ回るのではなく、積極的に間合いに入っていく。
裂け目の位置は、ある程度は記憶している。
そして裂け目が発動した時、僅かだが空気が揺れる。
それに反応出来れば、『虎神流』で受け流せる。
凄いのはウェルフだ。
僕の目からは何度も斬られたように見えた。
剣がすり抜けたと錯覚するほど繊細な重心移動。
ありえない体勢でも軸がぶれない洗練された体幹。
『蛇神流』幻惑の歩法。その極致。――陽炎。
もう一度戦えば、負けるのは僕かもしれない。
そして、そういった技巧も小細工も嘲笑うかのように蹂躙する、純粋で圧倒的なパワーをもつゼオン。
先程は腕だったが、急所に当たれば流石のアルファであっても切り崩せるかもしれない。
――なのに、一撃が遠い。
裂け目があるとは言え、軽くあしらわれている。
純粋な剣技の腕に関しても、アルファは格が違う。
いや、何より問題は――、
「邪魔すんじゃねェ!」
「うわっ――てめぇ危ねぇじゃねぇか!」
「こいつは俺様の敵だ! 雑魚は引っ込んでろ!」
こっちが全く連携が取れていないことか。
ウェルフと二人の時は上手く歯車が噛み合っていたが、そこにゼオンが入り込んでせいですべてが破綻した。
掛け算にはならなくとも足し算くらいには……と思ったが、実際は足し算にすらなっていない。
「三人とも流派が違うんだ! 今は足の引っ張り合いなんてしてる場合じゃないだろ!」
三人とも集中が乱れ、次の瞬間、飛ぶ斬撃によって吹き飛ばされる。
接近戦では斬撃を飛ばす能力は使われないため、警戒が外れた頃合に飛ぶ斬撃が牙を剥く。
僕は間一髪で受け流したが、ウェルフは右肩を負傷し、防御の知らないゼオンはまた一文字に斬られた。
「――分かんねえな。なんでお前らは、そこまでして俺と戦うんだ? 世界のためか?」
アルファは唐突にそんなことを口にした。
とても静かで凪のような表情だ。
しかし、どことなく真剣な面付きでもある。
「決まってるだろ。未来のためだ。僕やルナ、クレイシア、ソフィア、僕の家族、仲間、これまで出会った人達、そしてこれから出会う人達すべての未来のため、僕はお前を倒さなきゃいけないんだ!」
「坊主はそうだろうな。お前は英雄だよ。俺とは違う」
アルファは諦めたように言う。
興味が失せたのか、視線が移動する。
「密輸人……ウェルフだったか。お前はなんで戦う? お前に命張る理由なんてないはずだ。お前みたいな奴はこの場には相応しくないだろ」
「知ってらぁそんなことは。……俺ぁ生まれた時から負け組でよぉ。スラムのゴミ漁って生きてきたドブネズミなんだ。綺麗で華々しい生き方なんざ選べなかった。――だからせめて、死に方くれぇ自分で選びたいだけだ」
ウェルフが立ち上がって、ナイフを握りしめた。
アルファは黙ってその姿を眺めて、さらに視線を横に動かした。
「狂人。お前は――」
「うるせェんだよ! 俺様は俺様でいたいだけだ! つまんねェこと聞いてないで、さっさと殺り合おうぜ」
「清々しいな。俺もそう生きられたらな」
ゼオンは満身創痍でゆっくりと立ち上がった。
流石に出血量が多い。立っていられるのが不思議なくらいだ。
「俺は、お前らが羨ましいよ。『生まれてきた意味』なんて、考えたこともないんだろうな」
「アルファ。お前こそ、なんで世界を滅ぼそうとするんだよ」
「それが『役目』であり『義務』だからだ。俺たち『黒点』は戦うために作られた。命令に背けば内部から破裂する【殲滅の義務】なんていう呪いを課せられて、ずっと縛られて生かされてきた」
アルファは遠い目をして語り出した。
殺し合いの最中であることを忘れたようだ。
「四聖神に潜入させられて、何年も『朱雀』として悪を裁き人を救ってきた。だけど、見つけられなかったんだ。この世界のために死んでもいいと思える理由が、父さんに逆らう理由が、な。所詮俺は戦うために作られた人形で、生まれた意味なんてそれで全てなんだ」
懺悔するように。嘆くように。自嘲するように。
ベータもイプシロンもそうだった。
自分に課せられた役目を愛だと信じていた。
役目を果たすことで、生まれてきた意味を見出そうとしていた。
「そうか……ボスはもしかしたら、俺がスパイだって知ってて懐柔しようとしてたのかもな。まあ、失敗しちまったようだけどな」
何故かその時、アルファはもう完全に向こう側に行ってしまったような気がした。
「……旦那。確か、水晶だけ破壊すりゃ良かったんだよな」
「そうだけど、紅玉はアルファの中にあるんだ。位置は心臓だろうが……無力化せずにそれだけを破壊するのは至難の業だろうな」
「いや、あいつのパワーなら、内部のそれごとぶった斬れんじゃねぇのか?」
「…………それは」
ウェルフはアルファから視線を外さないまま、そんなことを呟いた。
考えなかったわけじゃない。ゼオンならどれだけ紅玉が硬かろうが関係なく破壊するだろう。
でも、ここでアルファを仕留めなければ、アレスとの戦いで大きな弊害となって立ち塞がるかもしれない。
「安心しろ。旦那が逃げる時間くれぇ作ってやる。あんたにゃ、まだやらなきゃいけねぇことが残ってるだろうが」
「そうだけど……」
「どうせこのまま続けてたって、勝ち目なんてねぇんだ。それに……俺はもう長くは戦えねぇ」
「そうだよな、その傷じゃ……」
「そうじゃねぇ。貰っちまったのはかすり傷、それも俺のナイフだ。俺の刃には猛毒が塗ってあるんだ。掠っただけでも、致命傷くれぇの猛毒だ。……情けねぇ話だ。蛇が自分の毒牙にやられちまうなんてよぉ」
「そんな……」
ウェルフの頬には赤い線が入っていて、僅かだが傷口が変色している。
「おい、ゼオンとやら」
「あァ?」
「一回だ。一回だけ、アイツの隙を作ってやる。お前はその隙に、奴の心臓に思っきりデケェのぶち込め」
「あァん!? なんで俺様がテメェなんざに従わ――」
「っるせぇんだよ。てめぇは隙がありゃ突っ込めばいいって言ってんだ。馬鹿でもそれくれぇ分かんだろ?」
「……勝手にしやがれ。俺様はアイツをぶっ潰せれば満足なんだよ」
ゼオンが気圧されたように押し黙った。
ウェルフは満身創痍で叫ぶ気力すらない様子だ。
「まさか、死ぬつもりじゃないだろうな。毒だって魔法が使えれば治してやれる。自暴自棄になるのは早いだろ」
「何度も言わせんなよ、旦那。俺は今、この場に信念と漢の矜恃だけで立ってんだ。自暴自棄なんかじゃねぇ。俺だって英雄になりてぇ。華々しく散って、俺を伝説にしてくれや、旦那」
「……ああ。任せろ、お前の名を後世に語り継いでやる」
ウェルフは屈託もなく笑った。
〜〜〜
アルファの前に、三人が立ち上がった。
ゼオンは未だ不満を全力で表情に出しているが、ウェルフは覚悟を決めた曇りのない双眸でアルファだけを見据えている。
「話し合いは済んだか」
「待ってくれるなんて、随分と余裕だな」
「そうだな。俺も驚いたよ。期待……してんのかもな。――いや、忘れてくれ。さあ、終焉のその刻まで一緒に踊ろうぜ」
その刹那、空気が変わった。
その圧迫感はアレスにも匹敵するほどだ。
僕たちにはアルファが、巨大な龍のように見えた。
始まるんだ。最後の大博打が。
「ガアアアァァァ!!」
ゴングを鳴らすように、裂帛の雄叫びを上げて先陣を切ったのはゼオンだった。
僕とウェルフもそれに続く。
「来いよ、英雄に憧れた坊主ども――」
アルファが間合いの大きく外で剣を振るう。
その瞬間、細かな刃がいくつも飛来した。
致命傷にはならないが、全て弾くのは不可能だ。
斬撃は分裂させて飛ばすことも可能なのか……今まで、アルファが使ってこなかった技だ。
ガラス片や石片の飛び交う竜巻の中のようだ。
でも止まるわけにはいかない。
先程より苛烈を極める猛攻が続く。
当然、アルファはゼオンを警戒している。
ゼオンの高熱刀はすべて華麗に受け流され、ついでとばかりにウェルフのナイフも軽く防がれている。
「どうした? 闇雲に勢いで押そうってか? もしそうなら失望だな」
僕なんかよりずっと練度の高い『虎神流』だ。
それだけじゃなく、アルファは三流派すべてを使いこなしている。
疲れを知らぬホムンクルスの身体に、圧倒的な剣の腕、斬撃を操る異能。
僕一人なら到底一撃を入れるなんて叶わなかっただろう。
「――ッ!」
「終わりにしよう、ルノア・アルカス」
一瞬たりとも集中を乱すことは無かった。
しかし、僅かに体勢を崩される。
そして無防備になった首に、容赦なく刃が落とされた。
「――ウェルフ!!」
その名を叫ぶと、割って入ったウェルフが斬撃を逸らした。
「終わんのはてめぇだ! ホムンクルス!」
そして凄まじい破裂音がして、眩い光に包まれた。
閃光弾。逃亡のための最後の切り札。
もはやウェルフに逃げる気などない。
これはあいつにとっての背水の陣だった。
「……小賢しい。これがお前らの最後の策だっていうのなら、叩き潰して終わりにしてやる」
アルファは目を瞑って深呼吸をした。
ホムンクルスと言えど、構造は人間と同じ。
眼球を斬れば再生するが、目眩しは有効のはずだ。
そして鼓膜を破壊すれば、数秒は音も聞こえない。
アルファは視覚と聴覚を奪われようとも、第六感で僕たちを補足してくるだろう。
だが閃光弾が炸裂する直前、僕とウェルフはアルファから見て同じ位置に重なっていた。
体格が似ている僕とウェルフを、仕分ける術はないだろう。
僕たち三人はアルファを中心として動き回った。
「(シャッフルのつもりか? 意味ねぇよ。所詮、お前らの切り札はあのイカれ野郎だろ。ほか二人には、紅玉を破壊するほどの力はないからな)」
アルファだって分かっている。
決定打を与えることが出来るのはゼオンだけ。
だからこそ意識はゼオンに集中する。
あの存在感と気配は隠すことはできない。
そして、その時は唐突にやってくる。
ウェルフが真正面から襲いかかった。
「(裂け目のないところを的確に……だが、ただの特攻じゃねぇか。それとも何かあんのか? 閃光弾みてぇな隠し球が)」
考えろ。警戒しろ。視覚と聴覚の排された世界で、ウェルフの挙動に全神経を注げ。
その瞬間、ゼオンへの警戒が僅かに逸れる。
裂け目のない背後からの奇襲。
同時に二人が間合いに入れば、対処はできない。
「やっぱ、ただの騙し討ちじゃねぇか」
次の瞬間、ウェルフの首が飛び、ゼオンの刀が砕け散った。
世界が静止したように見えた。
鮮血が舞う、噎せ返るほどの絶望の匂い。
こうなることは最初から分かっていた。
作戦の成否に関わらず、ウェルフは死ぬ。
間合いに入ったときには、ウェルフは丸腰だったからだ。
「――――何ッ!?」
アルファの頭を二本のナイフが貫いた。
既にナイフは投擲されていた。
殺意のない刃物を、ウェルフの気迫が消し去った。
だが、アルファの身体は崩れない。
自らで頭に刺さったナイフを抜いたのだ。
そして同時に視力が回復する。
その一瞬の隙を、僕は逃さない。
ウェルフの命に報いるためにも逃す訳にはいかない。
「今度こそ終わりだ! アルファ!」
「――ッ!」
紫電一閃。
アルファの右腕が切断され、グラムが空を舞う。
再生は一瞬では行えない。
「まだ終わってねぇよ!」
だが、アルファは右腕でグラムの刃を掴んだ。
剣を振るうのではなく、突き刺すために振り下ろす。
「いや、終わってるよ……僕の負けだ」
ウェルフが必ず死んでしまう作戦を実行した時点でな。
アルファは僕の武器を見て驚いた。
聖剣アイシヤ。
先程まで使っていた赤い刀身は見る影もない。
決定打を与えることが出来るのはゼオンだ。
そしてゼオンの刀が破壊されるのは目に見えていた。
だから託したのだ――焔龍剣フレイヤ、を。
炎龍の鱗から生み出された赤い刀身は、熱に強い。
たとえゼオンのパイロキネシスでも溶けはしない。
「万物を薙げ――奥義『喰鏖』」
ゼオンのタフさはアルファの想像を上回っていた。
身体中に斬撃を喰らい満身創痍だと言うのに、ゼオンは立ち上がって疲労を感じさせない最大の力で剣を振るった。
アルファの胴体が空を舞った。
それでも――紅玉は破壊されてはいなかった。




