10話「魔物がいなくなった国」
私たちの宴を終えて三日後。
「おい、いつまで寝てやがる?今日こそ俺と戦え」
「いつもいつもうるさいわね。アルファ、他に何かやることないの?」
眠そうな顔をしながら有川さんは言う。寝て起き上がったその服の隙間から下着の端が覗けられる。寝たフリしていれれば気付かれないはずだ。それに彼女は寝ぼけてる。
「いいごみぶんで……あっ、ごみはカタカナのゴミですよ」
私の耳元で花咲さんが私に静かに怒ってるかのように言う。そして私の耳に彼女の舌が撫でられてきた。
「うおっー!!」
私はそのまま寝っ転がる。そして何かにぶつかり体がちょっと浮いたかと思うと右手に何か柔らかいものを握る。
「あぅ……そんなに強く……」
「ごっ、ごめんなさい!!」
その手の先にあるものは有川さんの胸だった。そしてシャッターを切る音がする。
「よし、最低男さんの確信犯の瞬間撮れました」
「よし……じゃねーよ!!」
「あん……らめぇ……」
「もう触れてねぇよ、有川さん!!」
「俺と戦えよ。あっ、もしかして戦えねぇんだ。だせぇ」
「うっせーよ、アルファ」
「もういい加減にしてください!!魔物がいなくなったからって何なんですか?引きこもりニートを身に付けたリアル引きこもりニートですか?私はもう我慢の限界です。さよなら、探さないでくださいね。ふん!!」
そう言って花咲さんは扉を力強く閉めて出て行ってしまった。
「ありゃりゃ、俺、なんかまずいことしたかな?」
「アルファは関係ない。これは俺たちの問題だ……そうだな、いつまでもだらけてる場合ではないな。アルファ、戦ってやる。行くぞ」
「おう」
「うーん、花咲さん……宴終わってから何だか私たちが寝てる間、苦しそうにしていたけど私たちが何もしてないからなのかなぁ?」と有川さん。
「そうね。よく寝てる最低男さんの体を毎日のように力強く握り締めて『助けて』って連呼してたからねぇ。『どうしたの?』って聞いたこともあるけど何も答えてくれなかったわ」とユキさん。
ユキさんの言葉を聞いた途端、一瞬だけ脳裏に元の世界の一般的な墓の形が見えた。名前は分からなかったが。
「どうした?」とアルファに声をかけられて我に戻る。
「いや、別に」
私はアルファにそう言って彼と共に部屋を出た。扉の外に両手を頭に伏せて体育座りで泣込む知ってる女の姿があった。
私はアルファに耳元で『先に玄関口で待っててくれ』と言った。アルファは察したかのようにそこに向かって歩き去った。
私は彼女の横に静かに座る。彼女は気づいてないようだ。
「バカだわ、私。あんなこと言ったらもう戻れないじゃない。さよならなんて言わなきゃいいのに。みんなに少しでも強くなって貰いたいから……なのに……えぐっ……」
私は彼女の頭にそっと手を置く。そして「そばにいてくれてありがとう。これからもよろしくな」とどこかで言ったような言葉を彼女に伝える。
「慰めのつもり?べっ、別にそんなのいらないんだから。……でもありがとう」
彼女の言葉を耳にして私は立ち上がり、彼女に向けて手を差し伸べる。その手に彼女の手が交える。そして彼女と共に部屋に戻り、中にいる二人に事情を話し彼女を預けた。そして奴の待っている玄関口に向かうのだった。
次回の更新は27日の火曜日17時になります。




