8話「最後の決断《クエスト》は扉とともに」
私たちはついに始まりの町『おいちょっとお町』に帰ってきたのだ。
この町で色んなものに出会えた。
花咲さんがあまりにも変な店を教えるので罰として懲らしめようとしたあの教会で魔王に召喚された天使の有川さんに出会った。彼女はまだあの時は灰色の翼だった。それが今では輝かしいなんも曇りもない虹色の翼だ。
次に私がぶつかって前を見たら怖そうな顔を見てきたテンマだ。あの時、武器屋で見た使えない武器をまさか買ってる奴がいるとか思っていたが、まさかここまで姫や仲間、色んな人に頼りのある騎士団の団長だったとはな。まぁ、アホなところは相変わらずだが。
そして約束の町の約束の場所であるあの宿屋に一緒に旅をすることになったユキさん。幽霊好きでダメイドのくせに何かと助けてもらったことはあるな。
人だけではない、この世界の武器や服、金など色んなことを教わったのはこの町が多かった。だからこそ帰らなければならない町なのだ。
「……何、しんみりしてるんですか?そんなに自分の像がよかったのですか?まぁ、私も嬉しいですけど」
いつの間にか広場まで歩いて来ていた。ユキさんが言う通りに広場に大きな私たちの像がある。しかも黄金。等身大よりもでかい。というかなぜ自分のだけ他の人たちよりでかくて寝顔なんだ。
「気持ちよく寝てますなぁ、兄貴」
「テンマ、お前、こっちにまで写真送ったな」
「あっ、バレました?」
「バレるわ!!」
私はテンマにそう突っ込む。
宴の準備が始まる。
「ちっ、お前がここに俺を運ぶからめんどくさくなったじゃねぇか。黒煙はどうした?」
「アルファか。魔王を倒すために他の武器たちとともに犠牲になった」
「そうか。なら、いいや。まっ、ここなら俺の実力を褒めてくれる奴らがいる。トップは共に歩んだ仲間とともに進んでやるよ。お前みたいにな。そしていつかお前の像に向かって飛び蹴りを……」
「はいはい、お話はそこまでですよ。ユキ、また後でね」
私に向かって話しているアルファをユリさんが強引に回収した。その後にピンク色の翼の天使が小走りでついて行く。どうやら、あの三人もここに飛ばされるなり、催眠などに頼らずに仲良くやってるようだ。心からその光景に安堵した。
「ホントに帰ってくるとはねぇ。英雄さん、いや、吉田さんですね。あなたに行って欲しいところがあるの。あそこにある教会をこの鍵を開けて中にある椅子をとってきてもらいたいの。三個くらい足りないので……」
女将にそう頼まれる。断る必要もない。
「最後かもしれないクエストですね」と花咲さん。
「みんな……どうする?なんて言うなって顔だな。最後となるクエストを終わらせるぞ」と私は叫ぶ。
「炊飯ジャー!!」とダークホースの五人の仲間は声を揃えて言う。
私たちは例の魔王の教会の扉にその鍵を差し込み、回して開けた。中は真っ暗だった。
「灯りはどこだ?」と私は歩きながら言う。
その時だった。後ろの扉が閉まった。そして灯りが一気に付く。カーテンで窓は閉められていた。
「ふっほっほっ。久しぶりの方もはじめましての方もよろしくなぁ」
「お前、何者だ!?」と後ろからテンマは言う。
「神様」と私と花咲さんは声を合わせて言う。
「ちょっとー、これ、開かないんですけどー」とユキさん。
「落ち着きのない小娘め。ほれ、そんなにドアノブ触ると自分の胸を触る感覚与えちゃうぞ?」と人差し指を頭にこつんと触れながら言う。
「ひゃんっ……誰よ、今触ったの?つままないでー、いやー!!」
彼女はドアノブを触れてそう言う。
(神様、もう少しタイミングを考えような。なんで行為中にやるんだ)
そう思ってると神様は険しい顔で話し始める。
「では、本題に入る。君たちはこの後、どうする?君たちが叶えたいことを願え。そしてその願いの先は私の後ろの扉にある。どんな願いでもよい。ただし、私が認めない限りではあるがな。認めなかったらここに戻らせる」
「なるほど、これがクエストの報酬か。おい、お前ら、よく聞け。ダークホースは何があっても走り抜ける。だから常に会えると思え。だからこそ願いは何でもいい。俺に会いたくないという願いだとしても風が俺かもしれないということだ」
みんな、涙を流して縦に頷く。しばらくの沈黙が起こる。神様の許可ありの願いは考えづらいからだろう。だが、私はもう願いは決まっている。しかし神様を除いて最後の一人になるまで残るつもりだ。それがこのパーティーのリーダーとしての役目だと思ったからだ。
「誰も動かないのであれば私から動きます。私は吉田さんが好きです。でもそれと同時にみんなも好きです。だからいつかこの扉の先で会いましょう」
そう言ってアポロニアは扉に入っていく。戻ることはなかった。
「みんなありがとう。兄貴もありがとう。こんな俺でも楽しかった。またいつか」
テンマも扉に入っていく。彼もまた戻ってこない。
「最低男ばかり言いましたが、あなたは良き最低男です。なので何か下手をしたら私があなたを殴りに行きます。それは有川さんも幽霊ちゃんも同じです。そんじゃ、またいつか」
ユキさんも入っていく。戻ってこない。
「吉田さんも花咲さんも大好き。だから天使を見かけたら私を思い出してください」
有川さんも入ってしまった。戻ってこない。
私と花咲さんだけが残ってしまった。
「こんなにすんなりに消えてしまうと悲しいですね」と花咲さん。
「いや、何が起きるか分からないから楽しいんだよ」と私は言う。
彼女を促すためだ。
「私、そろそろ行きますね。もし私があなたに会えるならその時はどんな顔をしてるのでしょう。幽霊なのでしょう?それでも私とあなたがここにいたことはこの世界で消えることはありません。だから……」
「それ以上言うな。クソブス女」
私は彼女にそう言った。彼女の性格的にはまた戻る願いをするからだ。だから敢えて嫌われるようなことを言う。
「えぇ、さよなら」
彼女は扉の中に吸い込まれてしまった。戻ってこない。
「ふぉっふぉっふぉっ。お前たちの願い似てるな。君はどうかね?」
その言葉を聞きながら私は扉のドアノブに触る。生暖かい感触が手に伝わる。
「俺は……こうだ」
扉の中に私は足を歩めていく。急に眠くなり、そのまま倒れ伏せて寝てしまった。




