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チートゴースト  作者: 未知風
最終章「約束を果たすために」
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3話「魔王は常に私たちのそばにいた」

私たちが転生した場所に着くとそこには大柄の黒マントを羽織って人間の頭蓋骨に髪の毛をイメージするかのように葉などを付けて大きな角を生やしている者がいた。


「よくぞ来たな。お前たちには久しぶりとでも言っておくか?」


その仮面をその男は外してにこやかに笑う。


「お前は……」


後ろから苦しそうな悲鳴が聞こえる。有川さんの羽が赤黒くなっている。


そうか、すべて思い出した。魔王は有川さんを召還して私たちを助けてくれた人物。それだけではなく、初めの町の風呂場にもいたおじさんも思い返せばこいつだ。さらには話によればアポロニアの親としての魔王でもあるそうだ。待てよ、ということはこの黄金の武器も?アポロニアは双剣の武器のことをあるおじさんから教えてもらったと言っていた。そしてこの魔王はこの武器に弱いとも。相手に簡単に弱みを教えるアホなんているわけがない。確かこいつの名前は略して……”オマエハアホカ”だったと思う。つまりどういう意味だ、本当に弱みを教えてしまうアホなのか?もしくはその逆か?


「どうしてだよ、師匠。なぜあなたがこんなことを?」とテンマは言う。


やはりテンマの師匠ならこの魔王からアポロニアはもらったことになるのだろうか。何はともあれ、アポロニアに会いたい。


「パパー、この人たちだーあれ?」


魔王のそばにむっくりと起き上がる者がいた。それはアポロニアだった。


「悪い人たちだよ。だから駆除しないとね?」


有川さんはゆったり歩いていく。


「魔王様、私のこの身もお使いなされ」


彼女は頭を下げてそう言い放った。羽の色が黒くなっている。


「いい娘だ。そうだな、ひとまず裸になれ」

「あぁ、ずるい。私もなるー」

「アポはダメだ。奴らを完全に苦しめたらさせてあげよう?」



これはかなりまずい。魔法が使えるアポロニアは彼のそばにいて私たちに攻撃しようとしている。天使の有川さんも同様に私たちに攻撃しようとする。ちなみに有川さんはなぜか言われた通りに服を脱ぎ始めている。そしてアホな花咲さんとユキさんはここに来る前のあのいざこざ以来、未だに伏せたままだ。残るはテンマか。


「兄貴、すまん。しばらくこのままにさせてくれ。心の準備ができねぇ。あんたも師匠も今は殺したくねえんだ!!」


そうだよな。


「これは兄貴である俺からの命令だ。強いとは何かを考えて、己の決めた道を進め。もしその道が俺を殺す道なら全力で来い」


返答はない。


「絶望してそうなお前にいいこと教えてあげよう。この世界の名前覚えているか?”タレサマダ”だ。逆から読んでみろ」

「だま……された?だまされた!?」と一応驚くふりをする。そんなことは聞いた時から分かっている。いや、この世界の町の名前や今までの経験でそれに確証できたと言った方が正しいか。

「そうだ。さて、この町の名前の通りに”さよならいいまちょう”?」


魔王はこの町の名前をネタにして私を油断させる気なのだろうか。そんなことは今の私は何も気にしてなかった。なぜなら、心の中で次のように考え込んでいたからである。


(俺は弱い。それでも奴の前に現れる。普通の冒険者ならここで諦めて死んでいくだろう。何せ、私たちのパーティーの名はダークホースだからよ。何があってもおかしくねえ)、と。


そして私は仲間の思いを再確認するかのようにこう言い捨てる。


「お前ら、こんな奴に何負けてんだよ?そんなもんか?」

「お前の言葉など届くかよ」

「いや……そうでもないさ」


ユキさんの雲がブラジャーを身に付けている有川さんを凍らせた。彼女がちょうどパンツに手をかけようとしたところで凍らせたのだ。


「最低男さんの前により最低男が現れましたか。有川さんの恥は私たちの恥よ」と呆れたように言うユキさん。

「そなたは大切ななっちゃんやアポロニアさんに何をしたぁ!?」と花咲さんも声を少し荒げて言う。

「あっ、言っておきますけどこの女たち、怒らせると怖いっすよ。あっ、有川さんのおっぱいの先見え……ぶへほっ」


テンマは二人の拳に殴られ、扉に大の字に両手両足をぶつけて吹き飛ばされた。相変わらずご苦労でアホだな、テンマは。


「けっ。それがどうした?アポ、やれ」

「……」

「どうした?私の言うことが聞けないのか?」


彼はアポロニアの頬に手のひらで叩く。


「申し訳ございません、父上。彼らは私の手で殺します」


その場にいた私の仲間たちは思っただろう。彼女は笑ってない。作り笑いをしてたのだ、と。


「ファイアーキャノン」


火の玉が飛んでくる。


「寒い。そしてあまりじろじろ見ないでもらえます?キュン死しちゃうので」


目の前にいたのは下着姿の背中を露わにした有川さんの姿だった。彼女の背中でめくれかけているパンツと背中に生えている赤い羽の根元がものすごく気になってしまい、まじまじと眺めてしまう。私は後ろの二人の熱い視線と彼女たちがいつ襲って来るか分からない拳を思うと目を逸らすしかなかったのだった。

次回より17時から更新予定です。

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