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チートゴースト  作者: 未知風
5章「花よ咲け」
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1話「頭が痛いのはなぜだろう」

花咲さんの案内で宿屋"すべ屋亭やてい"に着く。


「いらっしゃいませ」


こちらの宿屋はスーツをきっちりと着こなしている。


「あの泊まる場所開いてます?」とユキさんは言う。

「ちっ、空いてんじゃないですかね?それぐらいあなたなら分かるのでは?あっ、下級の宿屋には分からないかしら。ぷぷ」


口に手のひらを当てている。しかし私たちの目は見逃さなかった。彼女の目に一筋の小さな涙が流れ落ちるのを。


「私の口からもう一度言わせてください。空いてますか?」


そう言った時だった。

ここから十軒ぐらいの入り口に向けて先の建物が大きな音と共に崩壊するのが見えてしまった。


「またか……」と男。

「誰か自分の似た職の下級相手に対応でもしたんだろ。何せここは足を踏み入れれば地獄の町、"マチツヅケラレタ町"なんだから」とその隣にいる女。


通行人の男女が言うことを見ると、どうやらこういうことはこの町によくあるらしい。


「見楽しい物をご覧頂きありがとうございます」


目の前にいる彼女は私たちに向かってそう言う。彼女の顔は作り笑いで精一杯だった。


「いえいえ」


私は相打ちを交わす。賛同にも否定にも思えるこの返答は便利であると今、まさに実感してしまった。


「あっ、そうですね。お客様の客室なら空いてます」


彼女はそう言って私を中へ連れていく。後ろの三人ももちろん付いて行く。彼女は完全に扉を閉めてロビーで言う。


「お客様、どうぞいらっしゃいましていただきありがとうございます」


ユキさんは黙って彼女に黄色いハンカチを差し出す。


「ユキ様、先ほどの御無礼お許しください。そしてこの建物の中にいる間だけは私たちに話して平気です。ただ外に音が聞こえる場所だけは先ほどのような態度を取らせてもらいます。気に食わないと思いますのでどうぞ私の頬をはたくなりして下さい」


彼女の体は産まれたばかりの子鹿のように震わせていた。そんな彼女をユキさんは自分の胸を使用して抱きつかせる。彼女のすすり泣く声が聞こえた。


「私、この町の噂だけだけど知ってるわ」とユキさんは言う。

「えぇ、気分が悪くなるほど私も噂だけは知らされてもらったわ」と有川さん。

「もちろん、ナビである私は前々から知ってますからね?ふん」とぷいっと私の顔を合わせずにそっぽを向く花咲さん。

「おやまぁ、あなた方は英雄さんたちじゃないですか?こら、ユメ。彼女から離れなさい」


ロビーカウンターにいる背の高い女性が言終えた瞬間にユキさんは彼女の頭を両手で話さないように掴む。


「あら、お客様。ごめんなさい、うちのユメが。私は女将のメイデンと申します。お客様のことは昨日の報国紙ほうこくしで知っております。あの失礼かも知れませんが、そろそろ彼女を離してやってください」


ユキさんはユメさんの頭を抑えていた両手を解いて離す。彼女は四つん這いになっては息を荒々しく吸っては吐いてを繰り返している。


「ごめんなさい。やりすぎましたね」

「ぜはぁ……すはぁ……いえいえ」


ユメさんを見てから女将は言う。


「お客様、どうぞ部屋をお選びください。最上階はおススメです。あっ、こちらはクエストの報酬です。各自確認しておいてください。英雄であるあなたたちにしか頼めないクエストを与えてもよろしいですか?」

「うちらでよければ」と私は答える。

「この国を救って下さい」

「大胆ね。どうする?リーダー」


ユキさんは私を見て聞いてくる。答えはもちろん……。


「炊飯ジャーですよ」

「ふふ。その代わりここの宿代を含めこの宿でかかるお金はあなた方に関してだけタダになります」


私たちはそれが嬉しくもあり、悲しくもあった。なぜなら悲鳴を聞くことがあるからだ。

それにしても先ほどから頭が痛い。そして花咲さんが何も言っていないのに私の名前を連呼しているように聞こえた。


「あのどうかなされました?」

「いえ、大丈夫です」


私はユメさんの言葉で我に返った。ちょうど最上階に向けてのエレベーターに乗るところだった。彼女は『九』という数字のプラスティックのボタンを押して私たちが全員乗り込む待て開くボタンを押して待っていた。そして入り終えたら閉じるボタンを押された。

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