3話「クエストってこんなだっけ?」
※今回の話数は向こうの作品(原作の『チートゴースト』)にはない話数です。
急にチャラメラのような音楽が流れたかと思ったら目の前にメールマークが映し出された。
「あっ、クエストですね。どうやらあなたにしかその情報が届いて内容ですので開けてみましょう?といっても私とあなたは情報共有者なのであなたの見た内容は見えちゃうんですけどね?それにあなたが開けたものしか私は見えないという条件もあります」
花咲さんは私の顔を見ながら言う。どうやら、子どもが明日に遠足に行くのが楽しみで眠れないかのようなわくわくとした興奮した顔だ。こうなっては開けるしかなさそうだ。それに今の私たちにはこれで報酬が貰えるなら金銭的には助かる。ただこれを開けてしまったら強制的に受諾をするのかという恐れは私の心の中である。
私はそのメールのマークを右手の人差し指で押す。開かない。
「あっ、そのまま汚れた指を右に回してください」
「汚れてねぇよ!!」
そう言いながら花咲さんの指示通り指を回す。カチッという音を鳴らしてメールのふた部分が取れたかと思うとそれは消えていつも通りのシステムメッセージが黒字で書かれる。
『カス(吉田健三)様率いる方々へ』
どうやらクエストの名義にまで私の呼び名は通用しているようだ。様が付くなら最低男の方が語感的には馴染みそうな気がするがそんなことは今に始まったことではないからどうでもよい。大事なのは内容と報酬と報酬と報酬だ。
続きを口に出しながら読んでいく。
『あなたたちの旅はもちろん、大変で恐縮なのですが、クエストの依頼を提案させて頂くためにこの度このような形を取りましたクエ』
名義よりは丁寧になったな。最後の一部を除いては。私はさらに読んでいく。
『内容は”ナルネコ”というモンスターから赤いハンカチを取り返して下さいクエ。報酬はそれなりにご用意しますクエ。受諾してもらえるかお選びくださいクエ』
下に『はい』『いいえ』がある。
私は他の四人の反応を伺う。
「やりましょ、兄貴」とテンマ。
「私は受けたくありません」とユキさん。
「えー、受けようよー。ユキちゃん」と花咲さんはにこやかに言う。
「私は天使ですので奪いたくないんですけどね?そんなばっちぃそうなのは」と有川さん。
お前の場合は奪うとかではなく、触るだろ。この薄汚れた天使が。そう思いながら私は『はい』を静かに押す。
「押しましたね?最低です」とユキさんはふくれっ面で私に言う。
「ユキさん、もしあなたがこのまま受諾しないで花咲さんに嫌われたらどうします?これが妥当な判断なのではと思いまして」
「あら、やだ。そうね」
彼女はどうやら承諾してくれたようだ。それにしてもなぜ彼女は拒んだのだろう。私たちの会話の横で花咲さんは首をかしげているのだった。
そんな時、急にピピッという元いた世界で使用してた体温計が計測し終えた時に鳴らすあの音が聞こえた。
「どうやらクエストの奴がお出ましです」
花咲さんの声と同時にシステムメッセージが『クエストのナルネコが出現』と表示していた。
「あの子、持ってないように見えるんだけど」と有川さん。
「いや、食って腹の中にあるのかもしれないぜ?」とテンマ。
いや、そんなところにあっても誰が使うんだよ。
「どうします?兄貴」
「ひとまず様子を伺いながら奴の後ろをついていこう」
私がそう言うとみんな従ってモンスターの後ろに行く。どうやらおっとりしていて白猫そのものだった。おそらく何かが鳴るからその名が付いたのだろう。こんな可愛げのあるモンスターをわざわざ苦しめる気なんて私にも仲間にもない。
そのまま付いていくと、小さなナルネコたちが木の下で赤いハンカチをかぶさせられて健やかに寝ていた。どうやら目の前にいるナルネコはこの子の親なのだろう。
「おっ、赤いハンカチじゃん!!」
「このバカテンマ!!」
私が彼に言うのが遅かった。目の前にいるナルネコは私を見るなり、毛を逆立てて威嚇しているようだ。そんななかでも後ろの子たちは寝ている。
「この鳴き声って……」
「えぇ、ねんねんころりよ……でおなじみの子守唄よ。だからナルネコなの。どこかのバカのせいでかなり怯えてるわ」
花咲さんは私に説明するかのように言う。
「これじゃあ、あのハンカチを返してもらうことも出来ないわ。まっ、私はこんなことになることは想像していて断っていたのだけどね」
得意気な顔をするユキさんに何も言い返すことが出来ない。ただこのままじゃ、どうしようもない。
「……なーんてね。こういうのは私の仕事よ」
ユキさんは静かにナルネコに近付いていく。近寄る度に音が大きくなる。しかし次第にナルネコは音を消した。
そして彼女の背中で見えなった。しばらくすると彼女はナルネコを見つめながら後すざりして戻ってきた。
手には赤いハンカチがあった。そしてナルネコたちにはそれよりも分厚い小さな毛布がかぶされていた。先ほどまで鳴いていたナルネコは彼女にお辞儀でもしてるかのように両手を前に出してそこに頭を乗っけていた。
「どんな魔法を使ったんだよ」
「バカテンマには分からないわよ。だって魔法じゃなくて母性なのだから」
「母性ならしょうがないかぁ。ふはははは」
そう言いながら私たちはその場を去った。どうやら彼女はあの宿にいた迷い猫の家族連れが同じように震えながらいたのを思い出してその時取った行動をしただけだったらしい。
あっ、ちなみに報酬は……というとこの赤いハンカチだった。システムメッセージにより、それが説明された。
私たちは気を取り直して次の町に向けて再び歩き始めるのだった。




