(4) ゲレンデに咲いた恋 プルークボーゲンってなに?
久美子のスキー技術はまだ未熟だったが、スキー操作に関しては、変な癖がなかった。信行は、久美子の滑りを見て、癖がないので、基本を覚えれば上達すると思った。久美子の為にいろいろ練習方法を考えた。
そして、練習課題をプルークボーゲンにした。その理由は、左右均等な孤を安定した速度で滑ることで。スキー操作が格段に上がるからだ。
その基本練習をすると上達が早くなると信行は説明したが、久美子は、きょとんとした表情で・・
「プルークボーゲンって?」
その返事に信行は戸惑った。だがすぐに、その理由がおぼろげに分かった。雪国の人は、都会から滑りに来るスキーヤーと違い、誰にも習わず、子供の頃から自由に滑り、そして、自然にスキーを憶え、自己流で滑れる様になるからだ。と思った。
プルークボーゲンを知らない久美子に、言葉で説明しても理解出来ないと思ったので、実際にプルークボーゲンで滑り、見本を見せた。
信行は滑りながら、あることに気がづいた。それは、プルークボーゲンを教えようとした信行本人が右ターン左谷足の局面で、外スキーに上手く乗れなかったのだ。久美子に教えるつもりで滑ったが、自分の方が変な癖がついていたのだ。
「ロングターン種目で点数が出ない原因はここだったのか・・・」
信行は愕然とした。でもSAJのバッジテストのロングターンで、毎回点数が出なかった原因が判明した。
信行は、久美子に
「僕の後を着いて滑ってください・・・」
と言ったあと、さっさと滑り出した。もちろん、普通に滑ると久美子は着いてこれないので、低速のプルークボーゲンで滑った。
久美子にスキーを教えると言うより、信行自身の練習になってしまった。午後は一度も休憩しないでリフトが終わるまで滑った。丸山食堂に戻り、ストーブの前で久美子が着替えるのを待っていた。
着替えた久美子は、信行の隣に座り
「今日は楽しかったわ」
「ごめんね、結局自分の練習ばかりして・・・」
反省した表情で言うと。
「そんなことないです。良い練習になったわ・・・プルーク、え~っと!プルークなんでしたっけ?」
「ボーゲンだよ・・・」
「そうそう、そのボーゲンは凄くよい練習になりました・・・」
冗談で言っているのか、本気で言っているのか分からなかったが、明るく笑う表情がまぶしく見えた。
つづく・・




