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第5話 見えない友達が一番怖い

【速報】超能力少女、ついに先生の家を占拠しました。


―― 共同生活一日目。

 すでにツッコミが追いつきません。――


ようやく始まった共同生活。


……のはずが。


ソファに大興奮。


名前という概念を知らない少女。


褒められるだけで笑顔満開。


そして――


「親友が見つけてくれた!」


少女が指差した先には、


誰もいなかった。


平和なはずの日常。


でも。


この家には、


どうやら"もう一人"いるようです。

 

 


中瀬の家。


 


想像通りだった。


 


家具。


 


最低限。


 


部屋。


 


綺麗。


 


無駄な物。


 


ほとんどない。


 


生活感。


 


少し。


 


教科書に載りそうだった。


 


「一人暮らしの部屋」


 


そんな感じ。


 


ものすごく。


 


茜。


 


女の子の手を引いて。


 


部屋へ入る。


 


そして。


 


止まる。


 


一秒。


 


鼻が動いた。


 


「……」


 


匂い。


 


あの匂いだった。


 


電車で。


 


少しだけ。


 


気付いた。


 


あの匂い。


 


この部屋。


 


全部。


 


その匂いだった。


 


自然に。


 


ものすごく自然に。


 


茜。


 


少し赤くなる。


 


『あ』


 


『この匂い』


 


『やっぱり好きかも』


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


『違う違う違う違う!!』


 


『何考えてるの私ぃぃぃっ!!』


 


頭。


 


ぶんぶん振る。


 


全力で。


 


女の子。


 


不思議そう。


 


じーっ。


 


茜を見る。


 


「?」


 


首。


 


ころん。


 


傾いた。


 


かわいかった。


 


とても。


 


茜。


 


咳払い。


 


一回。


 


何事もなかった顔。


 


「……あれ?」


 


女の子を見る。


 


「髪」


 


「もう桃色じゃない」


 


女の子。


 


自分の髪を触る。


 


ちょんちょん。


 


確認。


 


本人も。


 


よく分かっていなかった。


 


「まあ」


 


茜。


 


笑う。


 


「なかせくん」


 


「もうすぐご飯買って来てくれるからね」


 


「うん!」


 


元気いっぱい。


 


いい返事だった。


 


女の子。


 


家の中を見る。


 


ゆっくり。


 


本当にゆっくり。


 


壁。


 


見る。


 


天井。


 


見る。


 


床。


 


見る。


 


全部見る。


 


まるで。


 


初めて世界を見る子供だった。


 


実際。


 


初めてだった。


 


たぶん。


 


ソファ。


 


見付ける。


 


止まる。


 


見上げる。


 


座面を見る。


 


床を見る。


 


もう一回。


 


ソファを見る。


 


そして。


 


よいしょ。


 


登る。


 


成功。


 


立つ。


 


ふらっ。


 


ゆらっ。


 


でも。


 


倒れない。


 


「たかーい!」


 


にこにこ。


 


嬉しそう。


 


茜。


 


その様子を見る。


 


『すごい……』


 


『かわいい……』


 


『なんか感動する……』


 


全部本音だった。

 


「お水いる?」


 


茜。


 


聞く。


 


ついでに。


 


自分のお腹も鳴った。


 


喉も渇いていた。


 


かなり。


 


「いる!」


 


女の子。


 


元気よく返事。


 


そして。


 


少し考える。


 


「この子」


 


「お水ほしい!」


 


三人称だった。


 


茜。


 


固まる。


 


『かわいい』


 


一秒。


 


『いや』


 


二秒。


 


『待って』


 


三秒。


 


「その子」


 


「名前じゃないからね?」


 


女の子。


 


きょとん。


 


「なまえ?」


 


知らなかった。


 


茜。


 


少し驚く。


 


「そうそう」


 


「みんな名前があるの」


 


自分を指差す。


 


「私は」


 


「茜」


 


「望月茜!」


 


女の子。


 


じーっ。


 


真剣だった。


 


ものすごく。


 


全部覚えようとしていた。


 


茜。


 


嬉しくなる。


 


「書いた方が早いか」


 


テーブルを見る。


 


紙。


 


発見。


 


一枚取る。


 


本当は。


 


中瀬の書類だった。


 


たぶん。


 


きっと。


 


重要だった。


 


でも。


 


茜は知らない。


 


だから。


 


気にしない。


 


さらさら。


 


大きく書く。


 


『茜』


 


「ほら」


 


「これ」


 


「茜!」


 


女の子。


 


目。


 


きらきら。


 


紙を見る。


 


文字を見る。


 


茜を見る。


 


また文字を見る。


 


すごく楽しそうだった。


 


茜。


 


続けて書く。


 


『望月』


 


「これが名字!」


 


「望月茜!」


 


女の子。


 


何度も見る。


 


一生懸命。


 


本当に一生懸命。


 


茜。


 


期待する。


 


少しだけ。


 


「読める?」


 


「読めない」


 


即答。


 


茜。


 


沈黙。


 


『私』


 


『何やってたの』


 


一人反省会。


 


開催。


 


三秒。


 


「……まあ!」


 


立ち直る。


 


早かった。


 


「歩けて!」


 


「喋れて!」


 


「人の心まで読めるんだから!」


 


「十分すごいよね!」


 


全部本音だった。


 


女の子。


 


意味は分からない。


 


でも。


 


褒められた。


 


それだけは分かった。


 


にこっ。


 


笑った。


 


嬉しそうに。


 


ものすごく。


 


その笑顔だけで。


 


茜も笑った。


 


自然に。


 


つられて。


 


ものすごく。





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