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内通者

 ガルフ達の襲撃から明けた翌日、基地内にあるバーでセシルとアデルが酒を酌み交わしていた。


「今回は大変だったな」


「大変? 私は全然大変でもなかったわよ。初陣だって思って気合い入れて行ったら敵はとっとと逃げ出して空振りだったんだから」


 酒をあおりながらアデルがセシルに語りかけていたが、セシルがぼんやりとグラスを見つめながら言葉を返していた。


「まぁそれもそうか。それで? 美人さんから酒の誘いを受けたのは幸栄なんだが、何かあるのか?」


 空になったグラスを高々と掲げ、店員におかわりを催促しながらアデルがにこやかに問いかける。


「はは、中々わかってるじゃない……敵は派手に暴れていたにも関わらず私達が到着する数分前に突然撤退したのよ。そしてジョシュアがやり合った人狼達も『面倒な奴らが帰ってくる前に』とか言って私達が帰還する前に去って行ったらしいし……アデルはどう思う?」


「なるほどな。確かにタイミングが絶妙すぎるな。こちらの動きが全てわかっているかのような動きだ」


 笑顔を見せた後、覗き込むように見つめてくるセシルの視線を切るように、アデルがあさっての方向を見つめながら答えていた。


「そう思うと、ジュランテルで暴れていた連中はあくまで陽動で、こっちで政治家達のパーティーを襲撃した奴らが本命って事よね? なんか奴らの思い描いたように動かされたみたいで腹立つのよねぇ」


「まぁ今回は敵さんに上手く立ち回られたな……だがそうなってくるとどうしても考えてしまうよな、内通者の存在」


 そう自分で言ってアデルは頷いていた。


「やっぱりそうなるよねぇ。襲撃されたパーティーの事もそうだけど誰が裏で手引きしてるんだか……」


「そういえばジョシュアは? あいつはどうした?」


「ジョシュアは愛しの彼女の元よ。今頃楽しんでるんじゃない?」


「え? あいつ彼女出来たのか!? いつの間に……」


「知らなかったの? この前保護したオールドパーソンズの子よ。あぁもう、なんで私はこんなむさ苦しいアデルとお酒飲んでるのよ!?」


 セシルがやや大袈裟に頭を抱えて天を仰いでみせる。


「悪かったな!……なんだ妬いてんのか?」


「ふっ、冗談でしょ? 私はジョシュアみたいなゴツゴツした人はタイプじゃないわよ。そろそろ私も次の恋がしたいなぁってね」


「セシルの場合は、選り好みしなけりゃ幾らでも出来るだろ?」


「もう、そういうんじゃないのよ。誰でもいい訳じゃないし、適当な彼氏が欲しい訳でもないのよ。もっとこう、夢中になれるようなさぁ……まぁアデルにはわかんないか。あんた難しい数式解いたりしてる方が好きなんでしょ?」


「なんでだよ!!」


 そんな事を笑いながら言って二人で酒を進める。


 一方シエラのいるゲストハウスで、ジョシュアはベッドに座りながら考え込んでいた。


「どうしたの? 怖い顔して」


 傍らにいたシエラが優しく微笑んで語りかけてくる。


「あ、いや、どうもしてないよ」


 ジョシュアは慌ててかぶりを振って笑顔で取り繕う。


「……嘘つき」


 そう言ってシエラがジョシュアの頬を両手でつねる。


「痛たたた」


「ふふふ、嘘つくからだよ。ちゃんと言葉にしてくれないとまだ私、ジョシュアの事ちゃんとわからないんだから。だからちゃんと話して」


 そう言ってシエラは微笑みながらも力強い視線をジョシュアに向けてくる。


「そうだな……ここ暫く、ずっと一緒に訓練していたシャーン少尉が今回の襲撃で亡くなった。俺はまた仲間を失い、そして仇もまだ討てていない」


「そっか……大変だったんだね。ジョシュア……仇とかも討ちたいかもしれないけど、無理はしないでね」


 そう言って俯くジョシュアをシエラが優しく抱き締めていた。


 本当はジョシュアは別の事で考え込んでいた。

 セシルが言った『内通者がいる可能性高いんじゃない?』という言葉を。


 もし内通者がいるならそれは軍関係者のはず。

 そうでなければセシル達魔法兵団の行動をあそこまで正確には掴めないはずだからだ。


 それでも内通者がいるとなれば出身地や経歴がしっかりしていないシエラが疑われても不思議ではなかった。


 ジョシュアは恋人としてシエラを信じていたが、軍人の立場としてシエラを疑わなければならないのか、苦悩していた。

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