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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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116限目「試練⑥」

 追跡に集中し、ハヤトと盗賊との距離がどんどん狭まっていく。そしていよいよ手が届こうかというところで、盗賊が逃げるのをやめ振り返る。


「ヒッヒッヒ、そうかそうか。家族を見捨てて追いかけてきたか!その判断の速さ、尊敬するぜ!これでお前も俺もさして変わらねぇ人でなしってわけだ!」盗賊は勝ち誇ったように高笑いをする。

 それに対しハヤトは激高するわけではなくゆっくりと目を閉じ、静かに言葉を紡ぐ。


「あぁ、そうかもしれないな。ばあちゃんを見捨てたのは事実だ。だがあそこで迷ったら、ばあちゃんとクシナ様両方を失うことになる。

 俺はクシナ様の護衛隊士だ。私情で動くことは絶対にしない。

 ばあちゃんを見捨てた罪は俺が一生背負う!だからこそおまえを倒し、クシナ様を絶対に取り戻す!俺のこの刀にかけて!」ハヤトは抜刀し、クシナ奪還の決意を刀身へと込める。


「そうかいそうかい。大した忠義だな。ならこうしてみようか」盗賊は担いだクシナに刃を向ける。

「家族を見殺しにしてまで守ろうっていう大事なお姫様がヤバいって時に、おまえはどうするのかねぇ。ほら忠義を示してみろ。刀を捨てろや!」


「ハヤト、このような者の言葉に耳を貸してはいけません!私のことは考えずこの者を」

「姫、そのようなことを口にしてはいけません。今やクシナ様はオルヴァートにとって❝命❞そのもの。クシナ様がいなくなっては意味そのものがないのです。そのことを決してお忘れなきよう」そう姫に直言をすると、ハヤトは盗賊に対し尋常ならぬ怒気を放つ。


「おい盗賊、お前の言う通りだ。俺は忠義を示す。だが、お前はそれでよいのか?」

「なに?」ハヤトの発する気に気圧されるように、盗賊は一歩後ずさりする。


「勿論、姫の命は何としても救いたい。が、お前こそもしその命奪おうものなら、その瞬間お前のその首、俺が全霊をもって確実に刎ねてくれよう。それが分かってその刃を向けているのか!」

「ひっ……」ハヤトの放った言葉に宿る冷酷な気配に、盗賊もさすがに恐怖を覚えたその瞬間だった。


「ん?」盗賊の身体が急に軽くなる。今抱えていたはずの姫がいない。

「クシナ様、ご無事ですか」盗賊が振り返ると、ハヤトが姫を担ぎ降ろしていたのだ。

瞬転身しゅんてんしん》。一瞬の内に空間を移動する、神速の移動術である。アスラの厳しい指導の下、ハヤトもまた《侍大将サムライロード》のジョブアップを果たしていたのだ。


「き、貴様!」怒り心頭の盗賊だったが、もはやハヤトの敵ではなくあっけなく倒され身動き一つできぬように縄で雁字搦めにされた。


「よくやりました」その声にハッとするハヤト。後ろを振り返ると、そこには炎に包まれたはずの祖母が立っていた。

「ばあちゃん、なんで」


「あなたも薄々感じているでしょう?これは幻。私は偽物であると。

 しかし、あなたは最後まで己の進む道を違えず、私のことも心配してくれました。それで十分。

 今のあなたの在り方、それが全てです。これからもあなたの信じる道をお行きなさい。本物の私もきっと見守っていることでしょう」ハヤトと祖母(偽)は静かにしかし力強く抱きしめ合った。


「あなたの剣士としての覚悟、確かに見届けた。ではさらばです」

「ばあちゃん、ありがとう」次の瞬間ハヤトは元の世界に戻っていた。


***********

「父上!母上!」あまりの懐かしさで二人の胸へ飛び込んでいくクシナ。

「ずっと……ずっと会いとうございました」


「済まなかったな、寂しい思いをさせて。だがもう心配はいらん。これからは3人で暮らしていこう」ザナンがクシナを抱き寄せ、長い間クシナが求めて止まなかった言葉を口にする。


「そうですよ。もう二度と離れることはありません。共に行きましょう」当時かなりやつれていた母も今は血色良く、元気な様子だ。

 しかし、二人の言葉を聞き一抹の不安がよぎる。


「どこへ……行くのですか?」

「国を離れ、どこか静かな場所で暮らそうじゃないか」

「そんな!国は、民はどうするのですか?見捨てるのですか?」


「オルヴァートはすでにアルバレイの天下だ。我々が何をしようと覆るものではない。だが、王家の血筋を絶やすわけにはいかんのだ。

 忸怩じくじたる思いではあるが、我らはここを離れる他に道はない」ザナンはクシナを真っ直ぐに見つめ、そう言い放つ。


 しかしクシナは敬愛する父の言葉とは言え、納得することができないでいた。

 まだ一か月にも満たないが、グレンを始めとする仲間達に支えられ、道中の町や村、加えて四聖獣の解放も順調に進んでいる。オルヴァートの国土半分以上を正常化した形だ。この調子なら、きっとこの国は以前の笑顔が溢れる活気ある姿を取り戻すことができる。そう心から思えるようになったところだった。


「父上。お言葉ですが、私はこの国とそこに住まう無辜むこの民を仲間達と共に救うとそう決めたのです。如何な父上の頼みと言えど、クシナは応じることができませぬ!」


「困った子だ。ならば無理にでも連れていく!」ザナンはクシナから離れると、印を結ぶ。すると幾本もの禍々しい紫色の鎖がクシナに絡みつき、クシナの自由を奪うのであった。

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