第3章第012話 行軍です
第3章第012話 行軍です
・Side:ツキシマ・レイコ
というわけで。この世界に来て半年も経たずに戦争ですって。
現在は西へ移動する馬車の中。カステラード殿下と、さらに護衛というか私の付き人扱いというかエカテリンさんも馬車に同乗です。いつぞやの、私が女だからという配慮ですかね。
行軍というと、指揮官が先頭で馬に乗って…というイメージがありますが。敵地に入ったのならともかく、戦線への移動だけのためにこれだけの兵員をまとめて移動させることは無いそうで。駐屯地設営のための工作隊が先発し。兵士達も分けて出発して、渋滞が起きないようにしているんだそうです。だからこそ、カステラード殿下も馬車での移動となります。
カステラード殿下は、ネイルコード国中の女性に人気なそうで、エカテリンさんもファンのようですね。馬車の中でえらく緊張しています。…ただし、残念ながらカステラード殿下は既婚だそうです。
イケメンで鍛えられた体の二十八歳、良い感じですよね。私も以前の月島玲子なら惚れていたかもしれません。
エカテリンさんも、実は結構美人です。
騎士だからでしょうか、髪の毛は肩までのホブにしていますが。キャラメル色の綺麗な髪の毛ですし。普段の言動は女性っぽくは無いですが、顔立ちもなかなかのものです。黙っていれば相当な美人さん。
プロポーションは、アイリさんは別格にしても、きちんと出るところは出ていますし。鍛えてある分、シルエットも綺麗です。
「エカテリンさん、同僚の騎士の方とかには、モテないんですか?」
「え?え? なんだよいきなり!」
エカテリンさんが慌てます。かわいいですね。
「女の子が恋バナが好きなのは、いつの世も変わらないのです」
「女二人揃えば花が咲くって、地球とやらでもそうだったのかよ…。うーん、まぁ声かけてくるのがいない分けじゃ無いけどな。ほら、騎士ともなると貴族の次男三男とか、そういうのが多いんだよ。六六出身のオレなんかに声かけてくる奴は、大抵下心だけありそうだしな」
女二人揃えば花が咲く。こちらの諺だそうです。
騎士爵は、平兵士からすればそれでも貴族の範疇だそうで。付き合うとか結婚とかなると、お家のことを考えてしまうそうで。まず狙うのなら上…というパターンが多いそうですが。
「女性に声かけるのに下心がないってのも、むしろあり得ないのでは?」
「まぁ私は普段から伯爵夫人のマーディア様付き護衛だから、私に下手なちょっかいかけてくる馬鹿はそういないけどな。余所は知らないけど、うちのやつらはけっこう紳士的だぜ。声をかけてくるのは、大抵余所の騎士だな」
うーん。美人だけど気さく。粗雑に見えて頭は悪くないし、気は優しい。多分、密かに思いを寄せている人は多そうだけど。
というところで次は、エカテリンさんが気しているカステラード殿下を攻めてみましょうか。
「カステラード殿下の奥様って、どんな方なんですか?」
「ん?うちか。まぁ妻は伯爵家出身だな。義父は軍で要職に就いている」
「父親が軍人。では奥様もエカテリンさんみたいに逞しく?」
「いやいや。それが父親に全然似ていなくてな。母親に似て良かったと普段から言われているよ。ただまぁ、性格はしっかりした奴でな、いろいろ支えられている」
「…この国って、第二夫人とか妾とかは取らないんですか?」
まぁ。世継ぎが確実に欲しい。他の家と縁戚を結ぶ駒は多い方が良い。単なる女好き。理由はいろいろあるんだろうけど。
「無いことはないがな。しかし、正妻に不備がないのに第二夫人とか娶ったら、正妻の実家の方を侮辱したことになるだろ。実際に、そういう妻の実家間のトラブルってのは珍しくなかったそうだからな。余所の国は知らんが、うちではもうその辺はあまりしないな」
ほう。なかなか清廉な王家ですね。
そう言えば、現国王の兄姉がそのへんで自滅したとか聞いてます。
「…エカテリン殿は、魅力的な女性だと思うが。出会いなんてのは時の運だ。無理強いしてもいいことないぞ」
ありゃ。バレましたか。まぁ奥さん複数いてどうなるかは、その人の人格次第ですよね。
「いえいえそんなわたしなんかが殿下とだなんて畏れ多いやめてよねレイコちゃんそりゃ殿下は素敵だと思うけど」
エカテリンさん、壊れかけてます。今回はエカテリンさんの乙女っぽいところが見られたということで、この辺にしておいてあげましょうか。
レッドさんはエカテリンさんの膝の上。…レッドさんの毛を毟しらないでくださいね。
こちらでは、女性は大体二十歳前後で結婚するそうです。エカテリンさんは丁度二十歳。ちなみにアイリさんは十八歳。
すでに伯爵家の護衛騎士として身を立てているので、慌てて結婚ということでもないのでしょうが。
「エカテリンさんには、理想の男性像とかあるんですか?」
「ん~。理想か…。まぁダンテ隊長ってところだけど。男性ってよりは父親かな?あの人は」
おお、思ったより身近な人が。でもたしか既婚者だったはず。
「私が六六出身って話はしただろ? 子供の頃にダンテ隊長が剣術の講習に来ていてな。こまめにそれに出ていたら、お前見所があるなって護衛見習いに誘われたんだよ。騎士ではなく一兵卒見習いだったし、女の護衛は需要あるからって理由だったんだけど。でも女だからって理由で雇用されたのがどうにも気に入らなくてな。鍛えまくって護衛騎士の試験受けて今に至るって感じかな」
おお、そういうキャリアの持ち主でしたか。
「ダンテ隊長には鍛えられたからなぁ。そういった面でもやはり父親かな?あの人は」
「護衛騎士の試験はけっこう厳しいぞ。普通の騎士と違って逃げるわけには行かないからな。護衛対象を護るために相手の攻撃を避けられないなんて事もあるし、求められる覚悟も技術も高水準だ。女性の身でその試験に受かったとなると、エカテリン殿の修練の厳しさ、想像するに余りある。良く研鑽されたな、エカテリン殿」
さすがこの国の軍事のトップのカステラード殿下。兵の人事制度にも通じていますね。
「いえいえ。ダンテ隊長のご指導の賜です。はい」
はい、レッドさんの背中の毛がピンチです。




