第10章第065話 打ち上げ?
第10章第065話 打ち上げ?
Side:ツキシマ・レイコ
リシャーフさん達は、先に予約を取っていたファルリード亭の宿の方に入り。
アイリさん一家に、家に居たウマニちゃんとベールちゃんを連れて合流した後。ますば皆でお風呂に入りました。
家の方にもお風呂はありますが。やはり皆勢揃いで入れる大きいお風呂は、また気分が良いのです。
子供達も女の子と小さい子も私たちと入ります。この子たちの世話もなんか楽しそうなリシャーフさんでした。正教国の高位祭司で聖女ですが、妙に庶民的なんですよね。
サウナも堪能して風呂を上がり、銭湯定番の冷たい物をグイって行きたいところですが。ここはまだ我慢です。…子供達には水を飲ませますけどね。
食堂のファミリースペースが予約済み。聖女猊下が飲みに来ているのを知っているのは一部の人だけ。アイリさんとタロウさんも、猊下には多少馴れていますので、過度な配慮はしませんが。それでもやっぱり、席は上座に座っていただきます。
ちなみにフェンちゃんは、フロントの前が定位置です。
牛よりでかい銀狼が、一見寝ているようで店に入ってくる人をチラッと見ますからね。彼女を見て店で悪さをしようとする人はいません。
「今日もこの店は盛況ですね」
「盛況なのは良いことです。さて、今日は何を食べましょうか?」
「お姉様、今日のここの払いは経費ですか?」
護衛のタルーサさんとトゥーラさんは、こういう場所ではリシャーフさんとの姉妹という設定です。
「…私がおごりますよ? お客様ですし」
「「「それはさすがに…」」」
私はファルリード亭の出資者ですが。ただ食いはしませんよ、きちんと費用として計上します。
まぁ皆、ここでの会計を気にしなくてもいいくらいの収入はあるでしょうけど。
ファルリード亭は、日本での居酒屋とか街の洋食屋か程度のお値段です。毎食をここでというのは贅沢な部類ですが、庶民がたまにというのに無理な値段でもありません。
今日も、六六から来たらしい家族連れやカップルが何組か居ますしね。
…それでもいつもより混んでいるのは。私達の入ったスペースを塞ぐ位置のテーブル四人席が3つほど埋まってまして。座っている面子は男女交ざってますが…
「ククゥー?」
そうねレッドさん。知った顔もいくつか…影と護衛騎士の方ですね。
女性の護衛さんは、お風呂の方にも着いていったようですし。
私自身には護衛は必要ないですが。今回は、大陸の重要人物であるリシャーフさんの護衛でしょう。うまいこと動線を遮断して、関係無い人は近寄らないようにしてくれてます。
「私はね。侯爵の真似をしてイカ焼きでお酒から行きたいな。ほら、テオーガルの新酒が入ったってあそこに書いてある」
「私は、このフライのオードブルと言うヤツと。私もその新酒を」
「私はピザとチャーハンで!」
「トゥーラ。いきなりそれだとすぐおなかいっぱいになるわよ?」
「大丈夫ですって。きちんとデザートの隙間は残しておきますから」
すごい組み合わせです、若いって良いですね。トゥーラさんは代わりに、護衛中だからかお酒は飲まないようです。ちょっと真面目なのです。
「じゃあ私がイカ焼きを買ってきますね」
「いえ私が…」とタルーサさんが席を立ちかけますが。リシャーフさんが目で制します。
はい、私が行きたいのです。リシャーフさんも解ってくれています。
イカとか干物の焼き物のような匂いが強い系は、店の外の屋台で焼いています。
六々の子供が屋台の切り盛りを代々引き継いでいて、匂いで飲んべぇなお客を引き寄せてきます。
店内からの注文も出来ますけど、給仕さんたちは忙しそうですからね。ここは私が買いに行きますよ。
「レイコ様! いらっしゃませ」
「屋台ご苦労様。イカ焼きを…と、それはバター焼き?」
「はい!おいしいですよ」
と、焼き場を見ると。漂ってくる匂いは…バターですね?
「それを…そうね、両方をそれぞれ二杯くださいな」
「はい。召し上がるのは女性ですか?」
「そうね」
アイリさん達や子供達も食べるでしょうし。
「では、食べやすいように切っておきますね」
醤油焼きの方は輪切りにして、イカゲソは串で、マヨネーズも添えて。バター焼きは輪切りにしてあるのでそのまま盛り付けてレモンを一振り。
串に刺したイカを豪快に食べる人も結構居るそうですが。女性が噛み千切るにはちょっとお行儀悪いです。こういう心遣いが人気の秘訣ですね。
イカ焼きをテーブルに持って帰ってきて。他に頼んだ物が来るのを待ちますが。厨房からの配膳待ちが渋滞しているようです。
「ちょっと手伝ってきますね」
イカを食べながらリシャーフさんが片手で了承します。
給仕をしている人に挨拶して、お店のエプロン借りて。とりあえず厨房からの配膳待ちの分をお手伝いします。
まずは護衛の方に。「みなさんご苦労様」と声かけしたら、「い、いえ。ありがとうございます」とどきまぎしてました。
家族連れのテーブルでは、子供がまだ食べたいものを決めかねてました。
「このお子様ランチなら、いろいろ食べられますよ。あとはお父さんお母さんで、子供も食べられるものの大皿を…」
とお薦めしてきました。
五分くらいで配膳待ちが無くなったので、席に戻ります。
「…相変わらずレイコちゃんはマメに世話焼きよね」
「手伝えるところは手伝いたくなっちゃうから」
料理も一通り並びましたので。私もいただきますか。
子供達にとっては好物が食べられる機会ではありますが。そこはアイリさんとタロウさんが食育します。うまいこと野菜にも誘導していますね。
リシャーフさんも、肉だけ魚だけと行きたかったかもしれませんが。
「ほら、お姉さん達もおいしそうに食べているでしょ?」
をやられては、食べざるを得ません。
「なるほど、こうやって食べさせるのね。…子供が出来たときの参考にする。ってタルーサ、あなた私に食べさせること考えたでしょ?」
すでにお子さんの居るタルーサさんですが。リシャーフさんはあまり野菜は食べたがらないようですが。
「おねーさん、野菜食べられないの?」
「ぼく食べられるよ!」
「わ…私だって食べられますよ。おねーさんは大人ですからねっ」
皆がつられて笑います。
緩い雰囲気に。お酒もいただいて。暖かい店内を見渡します。
仕事が一段落したのだろうか、乾杯して盛り上がる席。
書類を指摘しながら、酒を飲みながらもなにか議論をしている席。
家族連れで、ニコニコしながら食べる子供達、同じくニコニコしながら見る親たち。
食事に誘ったのだろうか、グラスで乾杯をしているカップル。
…赤井さんに見せられた"京"の人生を思い出しますね。
ちょっと感慨深くなっていると。
「ん~もぅレイコちゃん。視点が高いわよ?」
お酒も入ってちょっと良い雰囲気のリシャーフさん。
「視点?」
「神様の視点ってこと。上から見下ろす…とは違うけど。なんか周囲と壁作ろうとしていない? ここに居る人たち、皆そんな風に見ているでしょ?」
店の客を見て考えにふけていると、リシャーフに見透かされました。はっとしていると。
「あのね。レイコちゃんって、まだ三十年くらいしか生きていないんでしょ?」
前世から延べで考えれば、確かにそれくらいですね。
「意識だけ昇天するにはまだ早いわよ。赤竜神様みたいに一生を終わらせたわけじゃ無いんだから。この大陸も、せっかくもっと楽しくなりそうなんだから。まずは自分の人生をちゃんと楽しみなさい」
イカゲソを串から食べるリシャーフさん…




