第1章第034話 教会へ
第1章第034話 教会へ
・Side:ツキシマ・レイコ
「さて次は、教会へ寄りたいんだけど」
六六での用が終わったアイリさん、次の目的地です。
長屋の通りって感じの場所で。そこそこに朝食目当ての人向けでしょうか、屋台なんかも出ていますね。朝食の時間は過ぎたので、人はまばらですが。
「教会って、行って大丈夫なんですか?」
「大丈夫々々。あそこは善い教会だから」
「善い教会?」
「一応この国の教会も、正教国の影響下にはあるんだけど。正教国が直接話ができるのは王都の教会くらいで。各街にある教会は王都の教会の下に付いているわけだけど。いくら正教国でも、別の国にある各地の教会に直接何かしたら、国との問題になるし。王都の教会は比較的まともなので、この街の教会も大丈夫ってわけ」
「正教国とこの国の教会は対立しているってこと?」
「うーん。教会本来の活動についてはともかくとして。ネイルコード王国が発展してくると、お金の方の問題でね。ジャック会頭が言っていたでしょ、がめついって」
なるほど。上納金寄越せーとかそんな話か。
「王国教会は、王国にというか国王陛下に協力的だったので、この国の発展の恩恵はいろいろ得られているんだけど。それを横から分け前寄越せーと言われてもいい顔しないわよね。教会の階位では正教国の方が上だそうだけど、素直に言うこと聞いていないってのが現状かな」
歩いていると、わたしでも教会と分る建物が見えてきた。といっても、二階建てくらいの建物に塔があって。天辺のシンボルは…Yと◇を重ねた感じ?
「この教会の周囲の六六のいくつかが孤児院になってるの。私もここの出身ね」
アイリさんは、簡単に身の上話をしてくれた。
アイリさんがまだ小さい子供のころ、バッセンベル領で災害が起きて食べていけなくなり、そこから両親と逃げてきたんだそうな。ただその時の無理が祟って、この街に来る前に父親が、着いた後で母親も亡くなったそうです。
他にも難民のごとくやって来た人たちと共に、エイゼル領で面倒を見て貰えることになり。孤児は孤児院へということだそうな。
「農地がほぼ全滅しているのに、税は払え、妻と子供を売っても払えって言われたんだって」
それで逃げ出したというわけですね。ちなみにとなりのダーコラ国では、借金、犯罪、捕虜を理由とした奴隷制があるそうです。
「この街見ていると、それがどれだけ馬鹿馬鹿しいか分るわ。土地と人を育てない領地に未来は無いのに」
アイリさん出身の村は、現在はもう廃村になってしまったそうな。領主も結局は没落し、今度は家族諸共自分たちが売られることになったとか。
ちょっと悲しそうな顔をするアイリさん。なんかいやな話させてしまって申し訳ない気分になります。
そんな私に気がついたのか、アイリさんが私とレッドさんのあたまをぐしゃぐしゃ撫でる。
「まぁいろいろあったけど。この街で暮らせるようになって、今は幸せよ」
教会に入ると、すぐ礼拝堂に通じています。
正面に祭壇、その前に説教台。そして参列席。この辺の構造は地球の教会と似ていますね。
豪華絢爛というわけではないけど、神殿の類いだと分る程度の装飾が施されていて、掃除も行き届いている。神聖な雰囲気が漂っています。今日は特に礼拝の日ではないとのことで、人もいないですね。
礼拝堂の横に続く扉を、アイリさんがノックしました。
「ザフロ先生、アイリです。昨晩戻りました」
「おお、アイリさん。ご無事で何よりです。子供達がいろいろ大変な噂を拾ってきていて、心配してましたよ」
すぐに中から、シンプルな黒い神官職っぽい装いの男性が出てきた。歳は六十歳くらい? 髭はきちんと当たっていて、さっぱりしている容貌だの細めのシルエットの人だ。
「皆、大げさです。私が崖崩れに遭ったわけじゃないのに。っと紹介しますね。こちらはツキシマ・レイコちゃん。でもって背中にいるのがレッドさん」
「エイゼル市南教会のザフロ・リュバンと申します。ここで祭司をしております。黒い髪の子は珍しいですね、どこかで保護されたんで…ってその背中のは」




