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■44 VS雪豹?

 私達は〈ツンドューラ〉の探索を続けた。

 程よく積もって積雪。

 そのせいもあってかなり進み難かったのは言うまでもないけど、とにかく寒さと斜面の急勾配とにかく寒さと斜面の急勾配の最悪の相性に阻まれて思うようにいかなかった。


「さ、寒い……」

「スノー、これ以上進むのは止めた方がよさそうだ。ほら、マナを見てみ」


 滑らかかつ流暢に喋るちなっち。

 私は息を荒げている。寒い。寒さが痛さに変わるみたいだ。


「ね」

「確かにこれ以上は危険だな。凍傷の危険性もある」


 現実ではないのでホントに凍傷になるわけじゃないけどそうなったら多分何かしらの影響が出るようになる。例えば強制的に街まで戻されたり、道中での獲得アイテムの消失(ロスト)だったり、それこそデスペナルティが発生する。この間の大型アップデートをきっかけにそんな設定が施されたみたいだ。


「ごめんね、二人共」

「いいよ、私も寒いし」

「寒いのはともかくとして、この雪山はモンスターのレベルが一概に低いとは言えない。単純なレベルだけなら、私でも勝てないかもしれない」


 スノーもそんなことを言った。

 私は〈両面の外套〉の効果で暖かかったけど、張り付くように皮膚に付着する雪だ。雪が氷みたいになって体を蝕んでいた。


(寒いのは苦手じゃないけど……これはマズイよ)


 そもそも二人は何で平気そうなんだろ。


「ねえちなっちとスノーは何で寒くないの?」

「「えっ!?」」


 二人は立ち止まった。

 するとちなっちは拳を突き出し、スノーはポーチから小瓶を取り出した。


「私はほら、暑さとか寒さとかでスポーツやってないから」

「根性ってこと?」

「まあそんな感じかな」

「じゃあスノーは?って何それ?」

「これか?これは〈ポカポカドリンク〉と言って体温を一時的とは言え温かくなる飲料品だ」

「そんなのあるなら渡してよ!」

「てっきり飲んでいると思っていた。悪い」


 スノーは軽く流すように謝った。

 まあ確かに、何にも言わなかった私が悪いんだけどね。スノーはそんな私にドリンクを渡してくれた。

 私はドリンク蓋のコルクを抜くと、中身の仄かなオレンジ色の液体を飲み干した。ちょーっと、辛いし変な色合いだけどね。意外と飲んでみると美味しかったので、味は抜群だった。


「ゴクゴク……あー、美味しい!」

「そうかそれは良かったな」

「うん。これならもう少しいけそうだよ!」

「そうか。じゃあ帰るぞ」

「あれ?脈絡なくない?」


 私はスノーのそんな対応に違和感を覚えた。

 しかしスノーは私を見て言った。


「下手に探索してもキリがない。それにこの場所はわからないことだらけだ」

「わかんないこと?」

「あー、確かにこの辺のモンスター強いもんね」


 ちなっちが頷きながら同意する。

 確かにさっきのトナカイもかなり強かった。

 何とか地形を利用した戦法と息の合ったチームワークで乗り切ったけど、それを無視すると相当辛い相手だ。そもそも動きが俊敏で、【加速】や〈雷光の長靴〉がなかったら追いつけないかも。


「じゃあもう帰るってことだよね?あれ、じゃあ今私が飲んだのって意味……」

「ないな」

「はっきり言わないでよ!」


 せっかく寒さを耐え抜いてきたのにここに来て意味ないんだ。なんか損した気分。

 そもそもの話、確かにこのコート自体はちゃんと機能してる。けど、この場所が明らかに寒いのだ。そう言う仕様なのかな?


「ねえスノー、この雪山寒すぎるよね?」

「雪山だからな。寒いだろ」

「そう言うことじゃなくて!」

「ああ、この場所は低レベルのプレイヤーには厳しいからな。そのせいだろ」

「そのせいって凄く簡単そうに……あれ?じゃあここのモンスターが強いのも納得できるような……そっか、だから私達以外人気ないんだ!」


 ポンと手を叩いた。

 確かにこの雪山、一昨日の砂漠エリアと同じで人気がない。“旨み問題”ではなく、そもそも強いモンスターが多いので寄り付かない。そう言うことになるのだが、あれ?じゃあちょっと待ってよ。つまり今私達ってーー


「じゃあ私達より強いモンスターがウヨウヨいるってことだよね?」

「そうだな。だから早く退散するぞ。流石にレベル差を経験などから覆せるからと言っても、最低限装備でまともにやりあえるほど、このエリアは甘くないからな」


 スノーは真っ当なことを言った。

 そっかそう言うことだったんだ。全然ちんぷんかんぷんで意味わかんなかったよ。

 じゃあさっさと帰ろーって寒さと混乱で情緒不安定な私を瞬時に切り替え、意識を元に戻したのも束の間。何か嫌な気配を感じた。


「ねえ、なんだか変な気配しない?」

「ん?……確かにな」

「何か近づいてきてる?」


 私達は一応マストスキル【気配察知】を持っている。

 このスキルは低レアスキルなのになかなか習得が難しい。だけど運良く全員が持っていたので、何かしらの気配には気づけた。

 このスキルは人によって個人差があるように設定されていて、それもそのはず習得スピードもその効果範囲も元々の潜在的な一面が絡んでくるらしい。

 ちなみに私達三人はスノーとちなっちは文字通り高いのだが、私もかなり高いことがわかった。それは今の一瞬の間の出来事で垣間見えたらしいとスノーが喋った。


「すっごく嫌な気配。なんだろ?」

「逃げた方がよさそうじゃない?」

「そうだな」


 ちなっちは瞬時に提案。今彼女の武器はまともに使えないからだ。

 それを飲み込むのはスノー。的確な思考でこの場を離脱することにする。

 私はそんな二人について行くのだが、そう判断し決行するまでの間の僅かなタイムラグが身の毛もよだつような冷たい刃を震わせた。


「きゃっ!?」


 私は不意に背後に気配を感じたので振り返った。

 そこにいたのは巨大な猫。白い体に黒の斑点。琥珀色の目をぎらつかせる獣だ。

 私が視界に捉えた瞬間、圧倒的な威圧感に気圧された。

 見れば名前はノーザンレオパルド。レベルは43だった。


(43ってスノーより高いよ!)


 私はそう内心呟くと同時に何かが顔面に向かって飛んできたのを確認した。

 それは巨大な爪だ。

 私の姿を捉えたノーザンレオパルドの爪は鋭く強靭で、目にも留まらぬ速さだった。最後に私が捉えたのはそれだけで、そこからはつんざくような痛みが貫くのを感じるだけだったーー

 



今回は負けパートでした。

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