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■42 眠たいです。

回想回です。

「ああっーーー駄目、動けないよーーー」


 私はベッドの上で横になっていた。

 理由はよくわからない。ただ体がぐったりして気持ち悪いのだ。

 〈WORLD OF LIFE〉はかなりリアリティを追求したゲームだ。普通そんなことはありえないけれど、何億分の一の確率とかで体に不調をきたすケースがあるとかないとか。


「千夏ちゃんもダウン?Katanaはわかんないけど、ノースも駄目かー。うわぁー、頭は動くのになんでー!」


 如何やら私達がそんな偶然に重なり合ってしまったらしい。

 何だか不思議な感じだ。こう根本的な疲労感とは何か違う気がする。だって頭は全然はっきりしている。その上体も痛いとか苦しいとかじゃない。力が入らないのとも違う。はっきり言ってよくわかんない。軽く動きを取ることはできるけど、こうグニャグニャってなってるって言うかムニャムニャって言うかそんな感じだ。

 まあ分かんないことは放っておくとして、とりあえず暇なので昨日のことでも述べておこうかな。

 私ははっきりしている頭の中から記憶を引っ張り出していた。


 ◇◇◇

 

 ゴーレムを倒した私達は愉悦ゆえつに浸っていた。って愉悦ってどんな意味だっけ?よく解んないけど細かいことは気にしない。

 さてさてそんな私達の高揚感漂うムードの中、私は反省会がてらちょっと疑問に思ったことをスノーに尋ねてみた。


「ねえスノー、どうしてオアシスに落としたの?」

「あのオアシス跡は流砂が発生していた。おそらくは、ゴーレムの封印が解かれ地上に姿を現した際は水が抜け、抜けたエリアに流砂が発生するよう設定されていたんだろうな」

「流砂だって根拠は?」

「根拠?また難しいことを言うなマナ。まあいい。簡単だ。さっきマナがオアシス跡に足を踏み入れかけただろ」

「うん」

「それを見て気がついた。若干だが砂が確かに動いた。足が触れて動いたのとはまた別で、砂が沈み込もうとする性質を持っていた。そこに着眼点を向ければすぐにでも気がつく。むしろ遅すぎた方だ」

「ちょっと待って!」


 私は話を止めさせた。

 それって流石におかしいよ。


「それおかしいよ。だってゴーレムが現れてから私が砂に触れるまで一分も経ってないんだよ!」

「一分も経っていたのが逆に不思議だ。もう少し早く推測できたと思っていたんだがな」


 何故か不満そうだ。

 一分だよ。一分。その間に瞬時に察して状況を整理して理解する。そんな回転の速さ普通には出来ないよ。いや、もしかしたらそれがスノーの強みなのかも。何をやってもすんなり出来てしまうスノーだからこそこんな並外れたことが出来るに違いなかった。

 何だろ。一回落とし込んでしまうと随分あっさりしてしまう。そっか、私の身近にも凄い子がいたよ。


「どしたの、マナ?」

「ううん。なんでもないよ」


 私はチラッとちなっちに視線を動かしていた。

 ちなっちも大概だ。私には到底出来ないようなことを簡単にしてしまう。そんな二人の異常性に圧巻されつつも、別に嫌な気分じゃなかった。ただ単純に凄いと思う。妬んだり不満に思うんじゃなくて、そんな二人の才能が単純明快だけど凄いなーとしか思わなかった。だから私は憧れもしないし、羨んだりも思わないのだ。


「それよりもだ」


 スノーな深々と呟く。

 そしてその視線は少し離れたところで刀の手入れをするKatanaに向けられていた。


「Katana、今の動きはなんだ。何かの技か?あんな動き、エフェクトもないところから魔法やスキルの類じゃないな」

「おっしゃる通りです。アレは私の技です。いえ少し訂正させて下さい、アレは我が一族の技です」

「技?」


 私の間の抜けた声が砂漠に広がる。


「はい、技です」

「凄ーい!他にもあるの?」

「はい。今のは我が一族に伝わる独自の流派の有する型の一つ、陸ノ型(ろくのかた)ですね」

「最初に陸ノ型なんだ!」


 私の変な言葉に場が変に静まる。

 しかしそれを優しく受け止めたKatanaはにっこり微笑むと「はい、陸ノ型からです」と返してくれたので安堵した。てか安堵って何だろ。何で私が気にしなきゃいけないんだろ。


「他の型はどんなのだ」

「どんなのと言われましても」

「そうだな。あれだけ技術があるんだ。他の型も相当なものだろう」

「ねぇねぇ、私型とかよくわかんないけどそれって面白いの?」

「多分面白いとかじゃないんじゃない?」

「でもでも、型を覚えてるってことはそれだけ練習したってことだよね。凄いよね」

「凄いですか?」

「うん!よくわかんない私でも凄いって思うもん。だって代々繋いできた技を覚えるのって普通に考えても難しいのに、それを瞬時に取り込んじゃうなんてさ」

「いや、それはスキルがあるからだが……」

「そう言うことじゃないの!」


 私はスノーの口を封じた。


「とにかくKatana考えといてよ。もしギルドの仲間になってくれるんだったら心強いしきっと楽しいし、そうでなくてもまたいつか共闘して型見せてよ!ねっ」


 私のそんな早口を聞き一瞬硬直するKatanaだったがすぐに切り替えコクリと首を縦に振ってみせた。


「ええ、機会があればですが」

「楽しみにしてるね!」


 こうして私達は砂漠探索を終えてそれぞれ街に戻った。

 それがつい昨日の出来事で、今日はそのくたびれが出たのだろうかと改めて思うのだった。


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